改正相続法の施行日(2019年7月1日)です。

本日(2019年7月1日)は、改正された相続法の施行日です。

基本的には、本日以降に相続が開始された場合に、改正法の適用がなされることになります(一部経過措置の例外あり)。

1、婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置(施行日後に行われた贈与に適用)
⇒婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産の贈与があった場合、贈与をした夫婦の一方の相続が発生した際に、贈与を受けた居住用不動産については、これまでは『遺産の先渡し』として扱われてきましたが、今回の改正によって『遺産の先渡し』として扱う必要がなくなりました。
今後は、贈与を受けた居住用財産は遺産に含まれず、それ以外の残った遺産を法定相続分に応じて取得することが出来るようになります。

2、預貯金の払い戻し制度(相続開始日が施行日前でも、本日以降の払い戻しに適用)
⇒相続財産となる預貯金の払い戻しについては、平成28年12月19日の最高裁判決によって、遺産分割の対象財産として、共同相続人による単独での払い戻しが出来ませんでした。したがって、葬儀費用の支払や亡くなる前の入院費用等の相続債務の支払が必要になっても、遺産分割が終了するまで被相続人の預金の払い戻しが出来ないという不都合がありました。
今後は、一定の額(預貯金額×1/3×法定相続分)については、単独での払い戻しを受けることが出来るようになります(ただし、1つの金融機関から払い戻しが受けられるのは150万円まで)。
また、家庭裁判所の仮分割の仮処分の要件を緩和することにより、仮払いの必要があって他の共同相続人の利益を害さない場合には、家庭裁判所の判断で仮払いが認めらるようになります。

3、特別の寄与の制度
⇒相続人以外の被相続人の親族が無償で被相続人の療養監護等を行った場合には、相続人に対して金銭の請求をすることが出来るようになります。

4、遺留分制度の見直し
⇒遺留分減殺請求権の金銭債権化、すぐに支払えない場合の裁判所による支払期限の猶予

5、相続の効力等に関する見直し
⇒相続させる旨の遺言等により承継された財産について、法定相続分を超える部分については登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することが出来なくなります。
これによって、たとえば、長男が事故の法定相続分を超えて自宅不動産を相続した場合、登記をしていない限り、相続債務についての債権者が法定相続分を超える部分について差押が出来るようになります。

以上の外にも、施行日の異なる改正としては、配偶者居住権の新設や、自筆証書遺言の方式緩和・補完制度の新設などがあります。

特に、相続発生によって突然住むところが不安定になってしまうご不安というのは大きいもので、今回配偶者については保護が充実する形になった点は良かったと思います。
また、預貯金等の払い戻しについては、金融機関の対応がどうなっていくのかも注意しておきたいところです。

 

弁護士 奥井 久美子