【最高裁判決】不貞行為による「離婚」の慰謝料は認められず。

離婚による精神的苦痛の慰謝料を、過去の不貞行為が原因だとして過去の不貞相手に請求できるかどうかが争われた裁判で、最高裁が1審2審の判断を覆し、「特段の事情がない限り」過去の不貞相手に対する離婚による精神的苦痛の慰謝料請求を認めない判断を示しました。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190219-00000071-jij-soci&fbclid=IwAR0a-y8ABfqgXkstWva4Kinsh-3ziNt40OWf6fsmTYXReCzrOyuIdWyAsYI

この最高裁の判決は、不貞行為に対する慰謝料請求権まで否定したものではありません。

分かりにくいかもしれませんが、不貞行為自体から発生する精神的苦痛の慰謝料請求は、離婚するかどうかにかかわらず請求することが可能です。ただし、この場合、不貞行為及び相手方を知った時から3年という時効があり、3年を経過した後は慰謝料請求権を行使しても、相手方から時効消滅の主張がされれば、請求権が時効消滅することになります。

しかし、仮に「離婚をしたこと」の原因が昔の不貞行為によるものといえれば、「離婚をしたこと」自体に対する精神的苦痛の慰謝料についても過去の不貞相手に請求出来ることになりそうです。

この点について、今回の最高裁の判決は、離婚するかどうか自体は本来は夫婦間で決めることであるという理由で、特段の事情がない限り過去の不貞相手に離婚慰謝料を請求することはできないと判断したものです。

確かに、不貞行為から何年も経過し、不貞慰謝料の時効が成立した後、紆余曲折があって夫婦間で離婚を決めたからといって、過去の不貞行為が原因だとして不貞相手に離婚慰謝料を請求できるとするのは不合理(慰謝料請求権の時効が無意味になる、離婚自体は夫婦間で決めた結果)とも思えます。

とはいえ、今回の最高裁の判決から、直ちに、不貞慰謝料の算定の際に、離婚という結果が発生しているか否かということが慰謝料額算定の事情に一切考慮されなくていいということにはならないのではないかと思いますが、今後の裁判例の集積に注目していきたいところです。

 

弁護士 奥井 久美子