新手の架空請求詐欺

こんな記事が。

「知らない人が騙される。放置するとヤバい、新たな架空請求の手口」

(https://www.mag2.com/p/news/432528)

数年くらい前から、いかにも裁判所からの呼び出し状を装って、「早く連絡しないとあなたに不利な判決が出てしまいます」などと、まったく身の覚えのない借金を請求する詐欺が流行っています。僕の身近な人などからも「急にこんなハガキが来たんだけど大丈夫だろうか?」と相談があったりすることが何度かありました。

正直、弁護士から見るとその体裁が裁判所からのものかそうでないかは一瞬でわかります(そもそも裁判所は葉書で呼び出し状なんか送ってきません)ので、電話で送られてきた書面の体裁を聞いただけで「あーそれ詐欺です。電話したらダメです。詐欺師の番号につながります。無視してください。」と答えるのが通例でした。

最近は詐欺師も勉強して、封書にしたり、いかにも裁判所風の体裁を整えだしたりと次第に巧緻になってきているようですが、それでも内容を少し読めば詐欺であることは一目瞭然でした。なので、「こういうのはとにかく無視ですよ」とアドバイスしておけば済みました。最近はそういう相談も減ってきて、みんなもう慣れてきて「あー、また詐欺でしょ」という感じになっているのではないかと思います。

ところが、冒頭紹介した記事を読んで驚きました。

最近は、さらに詐欺の手法が進化して、みんなが詐欺になれたことを逆手にとって詐欺集団が「本物の」裁判所の手続きを申立てて、裁判所から呼び出し状が届く、という詐欺があるんだとか。

記事で紹介されているのは、簡易裁判所の「支払督促」とか「少額訴訟」の手続きですが、架空の借金について、これらの裁判手続きを「本当に」申立てて、裁判所から「本物の」呼び出し状を送付させ、「あー、どうせまた詐欺でしょ。無視すればいいんだよね。」と無視していたら裁判が確定してしまって本当にお金を支払わないといけなくなってしまう、ということを狙っているようなんです。

 

これは、確かに無視するとマズいです。

このような手続きを申立てられた場合は、裁判所に異議を出す(自分は身に覚えがないから事実関係を争うという意思表示をする)と、借金が嘘か本当か立証が必要になりますので、詐欺師はそこで諦めます(嘘なので立証しようもないし、そもそも裁判する気もない)。

ですが、偽物と思い込んで無視しているうちに裁判が確定してしまえば、たとえ架空の借金であっても差し押さえ等をされるリスクが出てきます。もちろん、仮に裁判が確定してしまったとしても、詐欺集団が差し押さえまでしてくるリスクが実際どれほど高いかは疑問ではありますが、やはり無用なリスクは負わないに限ります。

裁判所を名乗る見覚えのない書面が届いても安易に詐欺だと思いこんで無視せず、弁護士や最寄りの消費生活センターなどに一応は対応方法を相談しておいたほうがいいでしょう。

 

弁護士 松田 健人