モラハラ被害者が不貞をしてしまったら
不貞行為を行なってしまったら
モラハラ被害者の方は、日々の生活に救いがないため、精神的な苦痛やモラハラ配偶者からの圧力に耐えかねて、不貞をしてしまうといったケースがあります。
しかし、不貞を行なってしまった場合、離婚をするにあたり、様々な試練が訪れます。踏みとどまる事ができたなら、まずは先に離婚の手続きを進めましょう。もし不貞をしてしまったのであれば、早急に専門家にご相談下さい。
生活費が請求できない
まず、不貞を行なった有責配偶者は、モラハラ配偶者に、別居中の生活費を求めることができません。有責配偶者からの生活費の請求は、信義則違反と捉えられます。月数万円の生活費であっても、数年単位になると、かなり額が大きくなります。モラハラ被害者の方は、経済的DVを受け、離婚後の生活資金を満足に有していない方も少なくありません。そのため、今後の生活費の支払いの有無は死活問題になりかねません。
ただ、生活費を求めることができないのは、不貞を行なったご自身の分だけです。お子様がいらっしゃる場合、お子様生活費分は、別居前であっても、別居後であっても、請求できます。お子様には何も責任はありません。不貞行為を行なったのだから、1円も払わない!というモラハラ配偶者をお持ちの方は、すぐに弁護士にご相談下さい。弁護士を通じて、生活費を請求しましょう。
なお、夫側がモラハラ被害者で、妻に生活費を払わなければならない立場である場合、不貞を行うか否かによって、生活費の支払いの有無に変化はありません。生活費をもらう立場の場合は、大きな不利益を被りますので、ご注意下さい。
長期間離婚できない
モラハラ被害者が不貞を行った後、モラハラ配偶者が離婚を拒否した場合、別居後、7〜10年程度経過しないと、モラハラ配偶者とは離婚ができないケースがあります。
なぜなら、不貞を行うと、「有責配偶者」とみなされるからです。不貞を行なった有責配偶者から、離婚を求めるなどという行為は、「信義誠実の原則」に反し許されないと考えられるのです。不貞された側は、婚姻関係の破綻について責任がないのに、離婚させられ、不利益を被るというのは社会正義に反すると考えられているのです。
モラハラ被害者の方は、モラハラをされ続けてきたのだから、配偶者にも責任があると考えるでしょう。しかし、モラハラの事実について、証拠を集めるのは至難の業です。また、仮に証拠が集まったとしても、不貞と同等の有責性があると判断されることは稀です。
つまり、不貞行為が発覚した場合、モラハラ配偶者とは長期間離婚できないということをご覚悟頂かなければなりません。
なお、別居期間は、年齢、お子様の有無、経済状況など、ご夫婦ごとに異なります。詳細についてはぜひ弁護士にご相談下さい。
慰謝料請求される。
モラハラ配偶者から、不貞慰謝料を請求される可能性もあります。
一方、モラハラ被害者の方は、自身もモラハラによる慰謝料を請求したいと考えるかもしれません。
しかし、モラハラによる慰謝料請求には、証拠収集が困難であるという難しさがあります。証拠が十分でない場合、慰謝料請求は認められません。
仮にモラハラ被害が認められたとしても、その慰謝料の額は少額だと判断されることの方が多いというのが実情です。モラハラ被害について、不貞行為と同程度に悪質であると判断されればともかく、通常は、不貞行為による慰謝料請求が認められ、慰謝料を支払う義務を負います。
モラハラを受けていたとしても、不貞行為による慰謝料請求を否定するのは、大変困難だと言えるのです。
モラハラ被害者の不貞については
弁護士にご相談を
モラハラ配偶者は、自身のモラハラはなかったかのように振る舞い、不貞を行なったモラハラ被害者だけが悪者であるかのように責め立てます。
モラハラは、立証が非常に困難ですから、モラハラ配偶者が激しい暴力行為を行なっていた場合を除き、不貞行為を行なった有責配偶者であることを払拭するほどの証拠を手に入れられることはほぼありません。
不貞については、モラハラよりは、容易に証拠を手に入れられますから、モラハラ被害者は、証拠という点で、弱い立場に立たされます。
例えこれまでの結婚生活で、モラハラを受けてきたことによって、さまざまな苦痛を被ってきたとしても、不貞行為を1回でも行えば、離婚においては、圧倒的に不利な立場に立たされるのです。これまでのモラハラ被害をいくら訴えても、裁判所が、モラハラ被害者の方に有利な判断をしてくださることはほとんどありません。
もう一度、離婚前に不貞行為を行うことの意味というのをよく考えてください。そして、不貞行為を行なってしまった場合は、今後の対策のため、早急に弁護士にご相談下さい。