モラハラによるカサンドラ症候群
カサンドラ症候群とは
皆さんは「カサンドラ症候群」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。配偶者や家族など身近な人がアスペルガー症候群(自閉スペクトラム障害、ASD)をもっていることで、通常よりも心理的負担やストレスを抱えてしまう場合があります。配偶者・家族の持つ特性からコミュニケーションがうまく図れず、追い詰められ、自信喪失や不安状態、抑うつ症状といった心身の不調を来す状態のことを心理学用語で通称「カサンドラ症候群」と言います。
カサンドラ症候群の由来
カサンドラは、ギリシャ神話に登場するトロイの王女の名前です。太陽神アポロンに愛されたカサンドラは、アポロンから未来を予知する能力を授けられました。しかし、カサンドラはアポロンの愛を拒絶したため、アポロンから怒りを買い、「カサンドラの予知を誰も信じることはない」という呪いをかけられました。結果、カサンドラは真実を告げても、誰からも信じてもらうことはなく、孤立した立場に置かれてしまいました。
このようなギリシャ神話を由来に、カサンドラ症候群とは一般的に、家庭内において配偶者との意思疎通に苦悩を抱えていても周囲の誰からも理解されず、心身に不調を来す状態を意味しています。
配偶者によるモラハラ行為と
カサンドラ症候群
さて、配偶者がアスペルガー症候群のためにそれを支える者が不安・抑うつ状態になる場合が典型的なカサンドラ症候群の事例です。しかし、配偶者がアスペルガー症候群であると明確に診断を受けていない場合(いわゆる「グレーゾーン」に当たる場合)も多いと考えられ、外見からは判別し難いことから周囲からはよりいっそう苦悩を理解されないケースが存在します。近年の調査によれば、こうしたグレーゾーンに該当する方が10人に1人とも7人に1人とも言われています。
さらには、夫や妻とのコミュニケーションを図ることが極めて難しく、日々の生活のあらゆる場面で感じる違和感や度重なるモラハラ行動に追い詰められている場合も含めると相当数に及ぶと考えられます。夫や妻から繰り返されるモラハラ行動により、「なぜ自分は配偶者と上手く会話できないのだろう」、「なぜ夫(妻)は注意しても聞いてくれないのだろう」、「周囲に悩みを相談しても誰からも信じてもらえない」等と追い詰められている方は、もしかするとカサンドラ症候群に陥っている可能性があるのです。
カサンドラ症候群の症状と弊害
カサンドラ症候群を発症させる方は女性が多いと言われています。また、陥りやすい性格的として、真面目・責任感が強い・面倒見がいいといったものが挙げられます。発達障害やグレーゾーンの配偶者に真摯に向き合い、最後まで諦めずに意思疎通を図ろうと試み、上手く対応できない自分を責めてしまうためです。
カサンドラ症候群の代表的な症状として、片頭痛、めまい、パニック発作、抑うつ傾向や無気力感、体重の大きな増減、自己肯定感の低下、疲労感や倦怠感の継続等が挙げられます。
一度、カサンドラ症候群に陥ってしまうと、より夫婦仲が険悪になることが予想されます。場合によっては、感情と感情がぶつかり合い、配偶者とは話合いにならないか、もしくは恐怖心や自己喪失を起こし全て言いなりになってしまうことも考えられます。こうした状態では、関係性改善に向けた話し合いも関係性解消のための冷静な協議も望めないことは容易に想像できます。
カサンドラ症候群に陥る前にご相談を
カサンドラ症候群の対策は、孤立状態にならないこととされています。配偶者の言動に悩みを抱え離婚も視野に入れておられるようでしたら、一人で悩まれるのではなくぜひ弁護士にご相談ください。コミュニケーションを図ることのできない配偶者と直接交渉する必要がなくなることは何より心の負担の軽減に繋がります。ご依頼者様に寄り添いつつも、事案に適した最適な対応をご提案できることと思います。