性格・価値観が合わない
性格・価値観が合わないことで離婚できるのか
当事務所に寄せられる離婚相談、離婚理由を聞いて最も多いのは、性格・価値観が合わないです。
一口に性格・価値観が合わないといっても、「物事の重要度が合わない」「金銭感覚が合わない」「会話がない」「趣味が合わない」「一緒にいるのが苦痛」など、中身は人それぞれです。このような場合に裁判離婚できるのかということですが、裁判離婚が認められる理由(民法770条1項各号)の中に、性格・価値観が合わないが直接当たるものはありません。しかし、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」というものがあります。「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」とは、婚姻関係が完全に破綻してしまっていて婚姻関係が回復する見込みがないことをいいます。つまり、性格・価値観が合わないことで、様々事象が起きた結果として、婚姻関係が完全に破綻してしまっていて婚姻関係が回復する見込みがないということがあります。そうなると、離婚が認められるということになります。
多くの夫婦が、性格の不一致等性格・価値観が合わないことを理由に離婚しているそうです。ただし、一般論として、裁判離婚する要件を満たすことは難しいのが現実です。なぜなら、性格・価値観が一致するということは、異なる人格を持っていれば基本的に難しく、一卵性双生児でも難しいというのが現実です。では、離婚できないのかというとそうではありません。あくまでも、裁判において離婚が認められる要件を満たすのは難しいということに過ぎません。
「性格・価値観が合わない」とは、どういうことか、今までいただいた相談から分析したことをお伝えするとともに、離婚の進め方などを考えたいと思います。
性格・価値観の不一致で裁判離婚できる場合
再度になりますが、裁判における離婚の要件を満たすのは厳しいです。というのも、文末にも記載しますが、それそのものは、夫婦のどちらかが、一方的に悪いということはありませんし、夫婦=性格・価値観が一致しているというものではありません。そうすると、裁判官という他人が見て、夫婦が決定的に破綻しており、今後やり直せる可能性が全くなく、第三者が離婚せよと命じる状態か否かを判断することはできませんから、離婚判決をもらうことは難しいのが現実です。
もっとも、様々な離婚理由が積み重なって、婚姻を継続しがたいと認められる場合も、例外的にあるかと思います。婚姻を継続しがたい重大な事由があるとは、二人の夫婦生活を具体的にみて、婚姻関係が破綻しおり、どう考えても今後やり直せるとは思えないなという状態です。
例えば、全く会話がない、話しかけても答えが返ってこない、夫は生活費をもってかえるだけ、妻は家政婦みたいな状況である。相手を信頼せず、浮気をしないかと疑い続け、強い監視がありプライバシーがない等々です。いわゆる家庭内別居が長期間継続し、積み重なると認められる場合もあります。
しかし多くの方が性格・価値観が合わないことで離婚しています
多くの離婚が裁判ではなく協議離婚です。つまり、話し合って離婚することを互いに合意しているということです。ですから、裁判離婚の要件を満たすかというよりも、いかに協議離婚をするかということを考える方が前向きです。そこで検討して頂きたいことが次のことです。
- 別居する
- 弁護士を入れる
いずれも明確に相手に離婚する意思を伝えるだけでなく、もう我慢も出来ないし、一緒の空気を吸いたくないくらいの思いが伝わります。ただし、これらの行動を起こす前に十分に準備をしてください。しっかりと弁護士に相談をして、自分側での準備を進めてから、行動を起こしてほしいと思います。そうでないと、離婚はできたとしても、その条件が不利になりかねません。
弁護士を入れることの重要性を検討してもらいたいです。確かに、費用が掛かります。しかし、離婚したい相手との交渉を続けることの精神的ストレス、その時間を考えると相当の負担です。また、弁護士を入れることで早期解決が見込まれます。総合的に考えると、弁護士を入れてよかったと思ってもらえるのではないでしょうか。
性格の不一致とは?なぜ多くの離婚原因となるのか?
まず、根本的な話で、それを言ったら身もふたもないといわれそうですが、性格が一致する二人は、世界に一人もいないと思います。ですから、出会った時から、性格は一致していなかったはずです。そして、付き合いが始まり、相手の性格を知れば知るほど性格が一致していないことがわかるというのはごくごく自然なことではないでしょうか。
付き合った当初から結婚してこれまで、相手の性格の違いを認識し、二人で生活するために、どうしていくのか、我慢するのか、話し合うのか等々いろいろ二人で工夫をしてきたのでしょう。ところが、ふとしたことをキッカケにして、心の距離が少しずつ離れていき、相手の性格の不一致を理解して合わせてあげるということをしなくなるのでしょう。
愛情が溢れているときは、相手の欠点や癖などもかわいいなんて思っていませんでしたか。今になって性格の不一致で離婚したいと思ったけど、その性格の不一致は付き合った当初から、一致していないことを分かっていたのかもしれません。
問題は、その情が無くなったことかなとも思います。では、なぜ無くなったのかと考えると、真の原因が出てくるかもしれません。
具体的な理由がない原因
暴力、特異的な性癖など、具体的なこれといった理由がない場合は、性格・価値観が合わないが理由ということになるのでしょう。
脱いだ服が置いたまま、トイレットペーパーを替えない、部屋が汚い、洗濯しない等々、相手と合わないことなどごまんとあり、合わないのであれば合わせるか気にしないしかありません。何かがきっかけとなり、ほんの些細な事なんでしょうが、夫婦の溝が生まれる。その溝を埋める努力を、両方が一緒になってしなければ、溝は埋まるどころが深まるばかり、ある程度の深さになると、もう埋まることはありません。
気分が悪くなった方がおられたら申し訳ありません
性格・価値観が合わないから離婚したいと思っているのに、特に後半の項目は、どちらの味方をしているんだとご気分を害したら申し訳ございません。ご相談を頂く中には、産前産後、更年期または病気などで、離婚と思い込んでしまったのではないか、もう少し検討した方がお互い幸せになれたのではないかと思うこともあります。男女問わずホルモンバランス等が崩れてしまっていることもありますので。我々は、カウンセラーではありませんし、余計なお世話かなと思いますが、、、。
離婚と相手に伝える前にすべきこと
性格の不一致で離婚が頭をよぎるということは、結婚期間が長い夫婦のほとんどが経験していることではないでしょうか。したがって、状況によっては、まだやり直せる可能性が残っています。離婚と決める前に、やってみてほしいことがあります。
一度冷静に考えてみる
今、あなたが苛立っていることは、相手も苛立っていること、お互い様ではないか。自分の常識は他人の非常識です。一度は愛し合い生涯を共にすることを誓った二人、もう二度とあの頃に戻れないのか、戻りたくないのか、考えてみるべきです。
相手に変わって欲しいと思っていませんか
自分以外は、すべてが制御できないという当たり前のことを再確認してください。相手に変わってほしいと思っても無駄です、夫婦であろうと相手は他人、他人を操作できません。変われるのは自分のみです。
話し合う
離婚するしかないという伝え方をしては、深まった溝は、決定的埋まらない溝になります。こんな状況では良くないということを相手も分かっているかもしれません。
全く分かってなければ、なお話し合いが必要です。しっかり二人で話し合いましょう。第三者にかかわってもらうのも良いかもしれません。夫婦コンサルタントみたいな方々です。どちらかに利害関係がある人はだめです。赤の他人にしてください。
別居を検討
どうも難しそうなら、しばらく距離を置いてみましょう。はじめのうちは、晴れやかで楽しい気分になりますが、しばらくして寂しさや物足りなさを感じるかもしれません。離れてみると、今更、相手の良いところを見つけたりすることも。
子どもがいる場合
気になるのが子どもさん。子どもにとって幸せかどうかは、親にとって最も重要なことでしょう。といっても、仮面夫婦をしていれば、子どもはすぐにわかります。親が楽しそうにしている母子家庭(父子家庭)と仮面夫婦の家庭、どちらが子どもにとっても幸せかというと、前者ではないかと思います。