弁護士による示談交渉で提示額から1000万円以上アップ! -相談解決事例-
弁護士による示談交渉で提示額から1000万円以上アップ!
当方:バイク
相手:普通自動車
態様:バイク後部座席に乗車中、対向車線から右折してきた自動車に衝突された
- 13,636,052円(受取金額)
- 右後十字靭帯損傷
- 12級7号
概要
今回のご相談は、治療を終えてすでに後遺障害等級を取得し、相手保険会社からの示談額の提示を受けた段階になってからでした。
相談者は大学生で、「法律のことに詳しくなくて、果たして自分の受けている保険会社からの提示内容が適正なのかがわからないので、一度専門家に内容をみてほしい」と思っていたところ、知り合いから弊所を勧められて、連絡されたとのことでした。
解決までの流れ
1 相談
まずは、現時点での提示額やその内容を記載した相手方保険会社の計算書を送ってもらい、そのうえで電話相談を行いました。
そうしたところ、事前認定で、右膝に後遺障害12級7号「下肢の三大関節中の一関節に機能の傷害を残すもの」と認定を受けていることがわかりましたが、これに対する相手方保険会社からの示談額の提示は約270万円弱しかなく、裁判所などで行われる適正な損害賠償額の算定基準を大幅に下回っていることが明らかでした。
そこで、弁護士介入による示談交渉をすべきケースであると判断し、受任することとなりました。
2 12級7号「一下肢の三大関節の一関節に機能の傷害を残すもの」とは
最初に、治療に関する資料(診断書・診療報酬明細書など)や後遺障害認定に関する資料(後遺障害診断書や自賠責の認定書)など、今回の事故による治療に関する資料一切を取り寄せて、チェックすることから開始します。既に自賠責から後遺傷害の認定が出ているとはいえ、必ずしも一度で適正な後遺障害等級の認定がされているとは限りません。そこで、まずはこのまま示談に進んでよいのか、適正な認定がなされているのか、一通り書類の内容を確認しておく必要があります。
今回のご依頼者の12級7号という等級は、下肢(足のこと)の三大関節(上から股関節、膝関節、足首の関節)に可動域制限(動かせる角度が健康な場合と比べて狭くなること)が残る場合に認定される等級です。
認定を受けるときのポイントは二つあり、①関節に健側(怪我を負っていない側)と比べて4分の3以下の可動域制限が出ていること、②可動域制限の原因が他覚的に(画像上などで)証明できること、の二つです。
ご依頼者の場合は、②の可動域制限の原因は、事故に起因する後十字靭帯の損傷のせいであることが画像上明らかで、かつ、①の可動域制限の3/4以下という基準を満たしていたことから12級7号が認められましたが、①については、より上位の等級である10級11号(下肢の三大関節中の一関節に著しい障害を残すもの)といえるためには健側の2分の1以下の可動域制限が必要であるところ、記録を見る限りこのような高度な可動域制限が残っていることを示す検査結果は見られませんでした。
したがって、異議申し立てをしたとしてもより上位等級を獲得できる見込みはないことから、適正な認定が既になされており、このまま示談に進んでも差し支えない、と判断しました。
3 示談交渉
そこで、取り付けた資料を基に、適正な損害賠償額を算定し、示談交渉に移りました。
示談交渉にあたって、もっとも双方の隔たりが大きかった点は、後遺障害による逸失利益の評価でした。
逸失利益とは、後遺症が残ることによって、将来にわたって仕事の能力が下がってしまうことにより生ずる、本来ならば得られたであろう収入との差額をいいます。例えば、将来にわたって1億円稼げたであろう人が、事故のせいで7000万円しか稼げなくなってしまった場合、差額3000万円が「逸失利益」ということになります。
逸失利益の計算方法は、①基礎収入(その人の事故時の年収)×②労働能力喪失率(どの程度、能力が下がってしまうかの割合)×③喪失期間(この先、何年間にわたって能力を喪失するかの期間)のライプニッツ係数、という3つの要素の掛け算で算定します。
まず、①年収については、実際働いているサラリーマンの人であれば、原則として事故前年の年収で計算します。もっとも、今回のご依頼者の場合は、まだ学生の身分で実際に仕事をしているわけではありませんので、実際の年収はゼロです。でも、学生の方も大学を卒業すれば仕事に就き収入を得ていくことになりますので、男子学生の場合、原則として、厚労省が毎年出している「賃金センサス」という統計の全男性の平均年収をその人の年収と仮定して、計算します(ちなみに、女子学生の場合は、賃金センサスの男女平均で計算します。全女性の平均年収ではないことに注意が必要です)。
②労働能力喪失率については、実務上、等級の重さごとに基本となる喪失率が設定されています。一番上の等級である1級は100%、一番下の等級である14級であれば5%とされており、12級の場合、労働能力喪失率14%とされています。もちろん、後遺障害の残った部位や障害の程度、その人の仕事の内容などで実際にはこれと異なる喪失率を認定すべきケースもありますが、こうした点を争うとなると裁判に持ち込まざるを得ないケースも多いです。
③逸失利益の喪失期間は、通常、症状固定(後遺障害が残存したまま治療を終えた日)から67歳までの期間で計算します。例えば、症状固定が50歳であれば、17年間となります。
もっとも、単純に年数を掛け算できるわけではなく、「ライプニッツ係数」という係数を掛け算します。ライプニッツ係数がどのような理屈かは説明が長くなりますので割愛しますが、ライプニッツ係数表という早見表をみると、年数ごとのライプニッツ係数がすぐにわかります。令和2年4月1日から、民法上の法定利息の改正があったことに伴いライプニッツ係数が変わっており(被害者にとって有利な内容となっています)、事故日が令和2年4月1日以降に事故に遭った方は、新しいライプニッツ係数表を使うよう注意が必要です。
ちなみに、まだ仕事についていない学生さんの場合には、67歳までの年数のライプニッツ係数から、大学卒業をして就職するまでの年数のライプニッツ係数を引き算する必要があります(通称、「逆ライプニッツ」などと言われます)。
例えば、20歳で後遺症が残り、23歳から仕事を開始する、という学生さんの場合であれば、67歳-20歳=47年のライプニッツ係数「25 025」から、23歳-20歳=3年のライプニッツ係数「2 829」を引いた「22 196」を使うことになります(※令和2年4月1日以降のライプニッツ係数表の場合)。
今回のご依頼者の場合は、上記の①②③を掛け算したところ、逸失利益だけでも1000万円を超える額となりましたが、相手方保険会社の提示は131万円しかありませんでした。そこで、示談交渉では、主に本件のご依頼者の障害内容からすると、後々まで後遺障害の影響が残ることは確実であるケースであることを相手方保険会社にアピールしていき、約3カ月弱ほどの交渉期間を経て、当方の考えるほぼ満額を支払うという回答を得ることができ、無事、早期解決することができました。
結果として、当初の示談額の5倍以上、1千万を超える示談額を得ることができ、ご依頼者様も大変満足していただけました。
監修:弁護士法人キャストグローバル
大津オフィス 人身傷害交通事故担当