交通事故(物損事故)の相手方と連絡が取れなくなった解決事例

当方:トラック
相手:トラック
態様:赤信号を完全停車していたときに後ろから追突された物損事故

  • パワーゲート修理費など120万円以上

運送会社経営者

事例に近いお悩みをお持ちの方、
まずご相談ください

相談までの経緯

⑴相談者の方からは電話で問い合わせをいただきました。
電話で問い合わせをいただいた後、対面で法律相談を実施しました。
相談者は運送会社の経営者です。
従業員が会社のトラックを使用している際、赤信号を完全停車していたときに後ろから追突されたという一般的な交通事故です。
相手方も、相談者と同様、運送会社であり、相手方車両もトラックでした。
幸い、運転手にケガはなく、双方の車が破損したという事故です。
なお、本件はいわゆる「物損事故」というものです。人のケガを伴う交通事故のことを「人身事故」と言います。
物損事故と人身事故の大きな違いは実況見分が行われるか否かです。前者は実況見分が行われませんが、後者では行われます。
実況見分が行われた結果、実況見分調書が作成され、当該調書には事故態様が記載されます。
他方、物損事故の場合は、物件事故報告書が作成されますが、事故態様の記載はありません。

⑵事故後、相手方運転手は逃げることはなく、警察を呼び、物損事故として届け出をしました。
相手方運転手は、相手方会社の役員等ではなく、従業員でした。相手方運転手の携帯電話を聴取し、会社の名刺も受領しました。
相談者は被害車両の修理費の見積もりを取得しました。運転手のケガがないような軽微な追突事故の場合、修理費は30万円以内、場合によっては10万円以内に収まることがあるのですが、被害車両がトラックであったため、車両の部品自体が自家用車より高額であること、トラックの後部にパワーゲートがついているタイプの車両であり、追突であることからパワーゲートが破損してしまい、当該パワーゲートの修理が必要であったことから、本件における修理費は120万円以上でした。
なお、パワーゲートとは、トラックの荷台へ荷物の積み下ろしを行う機械です。

⑶相談者は見積もりを取得した後、相手方より受領した名刺に記載された住所へ書面を送付するも、当該住所は宛先尋ねあたらずを理由として、戻ってきてしまいました。
相手方会社の商業登記簿謄本を取得して、住所を確認すると、名刺に記載された住所とは別の住所が登録されていました。名刺に記載された住所は支店としても登録されておりませんでした。名刺に記載された住所と相手方会社の関係性は不明です。
商業登記簿謄本に記載された住所へ内容証明を送付したところ、配達がなされたものの、何らの返信はない状態でした。
また、名刺に記載された電話番号に電話をするも、当該電話番号は現在使われていないとのアナウンスであり、つながらないものでした。
さらに、ホームページに記載された電話番号に架電するも、当該電話も現在使われていないとのアナウンスであり、つながらないものでした。
次に、相手方運転手の携帯電話へ連絡したところ、当該電話は、開通はされていると思われるものの、相手方が電話に出ることはなく、事故について話し合いをすることはできませんでした。
相談者自身ではこれ以上、対応することが困難であるとして、問い合わせをいただきました。
相手方会社は運送会社であり、運送会社であれば、事業を行う上で車両の運転は不可欠であり、業務の根幹をなすものですので、任意保険に加入している会社がほとんどだと思われるため、加入しているのであれば保険会社に対応を依頼すればよいことから不思議に感じていました。保険に加入していないのか、あるいは保険を使用することで保険料が上がるのを避けたいのか不明でした。保険に加入していない可能性があること、連絡を避けていることから財産がない可能性があることから賠償を受けられない可能性はあるものの、当該可能性は高くないと判断し、依頼を受けることとしました。回収できない可能性があることは相談者に事前に説明をしました。

依頼をいただいた後の対応

⑴誰を相手方とすべきか
本件において、誰に対して損害賠償請求をするかという点についてご説明します。
交通事故を起こした相手方運転手は、被害者車両に対して後方から追突しているため、過失があるといえ、不法行為(民法709条)に基づき損害賠償義務が発生します。
次に、業務中の事故である場合、相手方運転手が所属していた会社にも使用者責任(民法715条)に基づき損害賠償義務が発生します。
このため、本件では、相手方運転手及び相手方の会社に対して損害賠償請求をすべきです。

⑵私から相手方会社へ内容証明を送るも何の反応もありませんでしたし、電話番号はやはりつながりませんでした。
相手方運転手の携帯電話番号に連絡するもやはりつながりませんでした。
相手方運転手の携帯電話番号について弁護士会照会をかけて、住所を得て、当該住所に対して内容証明を送付するも何の反応もありませんでした。

⑶相手方会社及び相手方運転手と連絡が取れないものの、それぞれの住所は判明しているため、両者を被告として訴訟提起することを検討しました。
相手方会社及び相手方運転手が財産を保有している方が、回収可能性が高まるため、まずは財産調査を行いました。
相手方会社は運送会社であり、複数台の車両を保有していると思われ、少なくとも本件事故の車両は保有していると考えられることから、当該車両の所有権を確認したところ、事故後に所有名義を変更されていました。名義が変更されているため、基本的に当該車両を差し押さえることは困難です。
次に相手方会社のホームページを確認したところ、取引先の会社が記載されていたことから、相手方会社は取引先の会社に対して売掛金債権を持っている可能性があることがわかりました。前述のように、相手方会社及び相手方運転手とは連絡が取れないこと、おそらく意図的に連絡を取れないようにしていると考えられること、事故後に相手方車両の所有名義を変更していることから、責任を免れようとしていることが明らかであったため、相手方会社の取引先会社に対する売掛金債権を仮差押えすることとしました。売掛金が存在するか不明でしたが、もし存在するのであればそこから回収ができること、また、仮に売掛金債権が少額だったとしても、仮差押えされたことが取引先に知られてしまい、相手方会社から何かしらのアクションがなされる可能性があることを狙いました。

⑷仮差押えをしたところ、すぐに保険会社より連絡がありました。相手方会社が加入している保険会社とのことでした。保険会社は相手方会社より連絡がなかったため、事故の存在自体知らなかったとのことです。
仮差押えという法的手続きが継続しているため、相手方は弁護士を入れるとのことでした。
その後、相手方弁護士とやり取りをして、最終的に相手方会社加入の保険会社より賠償を受けることができました。

まとめ

交通事故に遭い、相手方と連絡が取れないという状況はあまりないかもしれませんが、交通事故に限らず、債権が回収できないという場面はよくある相談です。
その場合、弁護士は法的に可能な範囲で回収を試みます。弁護士にしかできない方法もありますので、そのような場合には一度ご相談いただければと思います。

監修:弁護士法人キャストグローバル
   大津オフィス 人身傷害交通事故担当