相手方が素因減額を主張し支払拒否→紛争処理センターで此方の主張が認められた事例 -相談解決事例-
相手方が素因減額を主張し支払拒否→紛争処理センターで此方の主張が認められた事例
当方:普通自動車
相手:普通自動車
態様:停車中、背後から追突された
- 取得金額:0円(初回提示額)→約65万円
- 症状:腰椎捻挫等
相談内容
〇概要
・事故態様
依頼者が乗車していた自動車が赤信号で停車中、後方を走行していた相手自動車が、前方不注意により、停車が遅れ、背後から通突されました。依頼者は助手席に座っており、突然の強い衝撃により、腰椎捻挫等の傷害を負いました。
・相談内容
依頼者は、本件事故により、休業を余儀なくされ、長期の治療を要しました。依頼者は、相手保険会社から、症状固定の話があったタイミングで、今後、どのように対応すればいいか相談するため、弊所にご相談に来ました。依頼者は弁護士費用特約に入っていませんでしたが、後遺障害等についても、きちんと請求したいというお話だったので、着手金無料にて、受任しました。
解決までの流れ
・解決までの流れ
1 後遺障害について
依頼者は、症状固定については、医師とも相談し、了解することとし、後遺障害については、患部に痛みやしびれが残っていたため、後遺障害診断書を作成し、被害者請求をすることとしました。被害者請求の結果、残念ながら、後遺障害等級は、非該当と認定されました。
しかしながら、依頼者としては、実際に痛みやしびれが残っていることから、この結果に納得がいかないとのことでしたので、弊所としては、依頼者と協議の上、異議申し立てを行いました。異議申し立ての結果は、再度、非該当と認定されました。
2 交渉から紛争処理センターへの申立て
(1)交渉
異議申し立ての結果を受けて、弊所は、後遺障害非該当を前提として、相手保険会社と示談額の交渉を開始しました。これに対して、相手保険会社は、これまで主張していなかった、素因減額の主張を行いました。
具体的には、相談者に事故前から有していた加齢性変化による症状があったとして、怪我が悪化した、治療が長期化したとしてし、素因減額による減額が認められるというものです。そして、本件事故の損害への相談者の素因の寄与率は、40%であると主張し、その結果、賠償金額は、0円と主張しました。
(2)素因減額とは
素因減額について、判例は、「被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしても、それが疾患に当たらない場合には、特段の事情の存しない限り、被害者の右身体的特徴を損害賠償の額を定めるに当たり斟酌することは出来ないと解すべきである。」
「けだし、人の体格ないし体質は、すべての人が均質同一なものということはできないものであり、極端な肥満など通常人の平均値から著しくかけ離れた身体的特徴を有する者が、店頭などにより重大的な傷害を被りかねないことから日常生活において通常人に比べてより慎重な行動をとることが求められるような場合は格別、その程度に至らない身体的特徴は、個々人の個体差の範囲として当然にその存在が予定されているものというべきだからである。」としています。
(3)紛争処理センターへの申立て
このように、仮に、依頼者に、加齢性変化による既往症があったとしても、それが「その程度に至らない身体的特徴」に過ぎないのであれば、素因減額の主張は認められません。弊所は、この点について、相手保険会社に問いただしましたが、明確な回答はなく、交渉による解決は困難でしたので、紛争処理センターに和解あっせんの申立てを行いました。
紛争処理センターは、裁判手続きとは異なる、第三者機関による紛争処理機関で、裁判手続きよりも迅速に解決を図ることが出来る点で、メリットがあります。また、あっせん案を作成するのは、交通事故に精通した弁護士が行うことから、少なくとも、一般的に認められるような内容については、和解あっせん案の中に盛り込まれることが通常です。
本件では、上述したように、相手保険会社は、十分な立証なく、素因減額を主張しており、このような主張は不合理であることから、紛争処理センターにおいて、きちんと判断してもらうために、和解あっせんの申立てを行いました。
紛争処理センターの審理においては、相手保険会社は、専門機関の意見書を根拠資料として、提出し、素因減額の主張を行いましたが、その意見書の中ですら、本件において、素因減額が認められるべきとする立証には至っておりませんでした。その結果、相手保険会社は、素因減額の主張から、治療期間及び休業損害の期間が長すぎるという主張へと変更しました。
(4)結果
最終的に、治療期間については、ほぼ弊所の主張が認められ、休業損害の期間については、相手保険会社の主張が一部認められる形で和解あっせん案が出され、依頼者も納得した内容であったことから、和解が成立しました。
事例のまとめ
3 まとめ
本件では、まず、後遺障害の等級認定から、ご依頼を受けましたが、残念ながら、非該当という結果となりました。しかしながら、後遺障害については、なかなかご本人として納得できないことも多く、そのような場合であっても、弊所では、出来る限り、説明を行い、依頼者と相談の上で、方針を決めております。結果としては、異議申し立てによっても、非該当の結果は覆りませんでしたが、出来ることはすべてやったということで、依頼者としても納得された面はあったかと思います。
また、保険会社との交渉においては、本件のように、保険会社から不合理な主張をされるケースもあります。このような場合、弁護士に依頼していないと、そうゆうものかと納得して、示談に応じてしまうこともあり、本来であれば、認められない主張が通ってしまい、被害者の利益が害されることもあります。本件では、弊所が正当な主張をしても、当初、相手保険会社の主張は変わりませんでしたが、紛争処理センターに申立てをすることにより、裁判手続きに比べれば短期間で、相手保険会社の不合理な主張を覆すことが出来ました。
以上のようなことからも、交渉段階で、弁護士を入れることには意味があるものと思います。本件では、着手金無料、成功報酬制でご依頼を受けましたので、結果的に、依頼者は自分の持ち出しはなく、一定の成果を得ることが出来ました。もし、弁護士費用特約に入っていなかったとしても、弁護士に相談することをお勧めします。
以上
監修:弁護士法人キャストグローバル
大津オフィス 人身傷害交通事故担当