交通事故(人身事故)による肩の腱板損傷における後遺障害(局部の神経系統の障害(以下,「神経症状」と言います。)) -相談解決事例-
交通事故(人身事故)による肩の腱板損傷における後遺障害(局部の神経系統の障害(以下,「神経症状」と言います。))
当方:バイク
相手:自転車
態様:依頼者はバイクを運転していたところ,一時停止を無視した自動車に左からぶつけられ,右側に倒れてしまったという事故でした。
- 14級9号
相談内容
今回は交通事故(人身事故)による肩の腱板損傷における後遺障害(局部の神経系統の障害(以下,「神経症状」と言います。))の解決事例をご紹介します。
2 解決事例について
⑴ 事故態様
依頼者はバイクを運転していたところ,一時停止を無視した自動車に左からぶつけられ,右側に倒れてしまったという事故でした。
⑵ 受傷状況
自動車に左側からぶつけられたため,左側全体が打撲等となっており,また右側に倒れたため右側全体も打撲等となっていました。
⑶ 相談に至る経緯
事故によるケガのために通院しており,治療が終わりかけたころ,医者から後遺障害の申請の話をされ,依頼者自身が加入していた弁護士費用特約がついていたため,後遺障害の点も含めていったん相談してみようと思い,問い合わせをしたとのことでした。
⑷ 後遺障害申請
ア 依頼者の方は,事故当初は自動車と直接接触した左側の痛みが強かったとのことですが,左側の痛みは徐々に治まってきて,右側の痛み,特に肩の痛みが強いとのことだったため,後遺障害の申請をしました。
なお,後遺障害の申請をするルートは2つあります。1つ目は,被害者側で資料を用意して申請する被害者請求というルートで,もう1つは保険会社側で資料を用意して代わりに申請してもらう事前認定というルートです。今回の依頼者は被害者請求というルートで後遺障害の申請をしました。
イ 結果として後遺障害に認定されましたが,12級13号という等級ではなく,14級9号でした。
12級13号,14級9号ともに神経症状に関する後遺障害ですが,12級13号の
方が重い等級となります。等級が重い方が,賠償額が高くなることが多いです。神経症状については後ほど3にて説明します。
⑸ 異議申立て
ア 後遺障害申請をした結果,14級9号に認定されたこと,結果について納得できない場合は再度の審査を求めること(異議申立て)が可能であると依頼者に伝えたところ,後遺障害に認定されたことはよかったが,右肩の痛みがまだあるため,異議申し立てをしてほしいとのことでした。
異議申し立てをすることは依頼者の希望であることに加えて,私が依頼者と後遺障害の申請について相談をした際に,MRI上に異常があると医師から言われたと聞いていたため,さらに重い等級である12級13号が狙えるかもしれないと考え,異議申し立てをすることとしました。
イ 異議申し立ての準備として,カルテを精査しました。精査したところ,確かにMRI上の所見があることが記録されています。
後遺障害の認定結果を確認したところ,MRI上に所見はあるものの,MRIが撮影されたのは事故から3か月経過してからのものであり,当該画像所見は事故によるものと断定できないというものでした。すなわち,MRI上の所見と交通事故との因果関係が認められないというものでした。
ウ 依頼者に事情を聞いたところ,先ほど少し触れましたように事故直後は自動車と接触した身体の左側の痛みが強く,右側の痛みもあったが左側に比べると弱かった,身体の右側に痛みがあることは事故直後から医者に伝えてあったが,自動車と接触したのが左側だったのか,左側の点をメインに診察していたとのことでした。
確かにカルテを確認すると身体の左側の症状をメインに記載しており,身体の右側についてはMRIを撮影した事故から3か月を経過したあたりからより多く記載されていました。
エ MRI上の所見と事故との因果関係があると言えるための裏付け資料を探すために,さらにカルテを精査したところ,事故当時救急搬送された病院のカルテにおいて,事故直後に右肩の痛みを訴えている記載がわずかにありました。
また,MRIを撮影した担当医に質問したところ,MRI上の画像所見は事故によるものである可能性が高いという回答を得ました。
当該医師による回答書と私がカルテなどをまとめた報告書を添付して,異議申し立てをしました。
結果は,異議申し立ては認められず,14級9号が妥当というものでした。
依頼者に異議申立ての結果を報告しました。やれるところまでやったため,仕方ないとのことで,相手方と示談し,解決となりました。
オ 本件では,事故直後にMRIを撮影していれば必ず12級13号に認定された断言できるわけではありませんが,認定可能性は高まったと考えられます。
3 後遺障害について
⑴ 後遺障害における神経症状は前述のとおり12級13号と14級9号があります。両者の違いは基準が公表されているわけではありませんが,自覚症状のみにとどまる場合は14級9号,他覚所見がある場合は12級13号と言われています。他覚所見がある場合とはレントゲンやMRIで異常があり,それが原因で痛みなどの症状が出ていることがわかる場合です。
⑵ 今回の依頼者の件は,画像所見はあるものの当該画像所見と事故との因果関係が争点となっている事例でした。本件では残念ながら認められず,14級9号にとどまってしまいました。
4 まとめ
今回の依頼者の件は,事故直後にきちんと右肩の痛みについて医者に伝えること,事故直後にMRIを撮影することを医師に提案することで結論が変わっていたかもしれません。
事故直後に痛みがある状態で弁護士に相談することは困難かもしれませんが,結論が大きく変わる可能性がありますので,事故に遭われた場合には早めに弁護士に相談していただければと思います。
監修:弁護士法人キャストグローバル
大津オフィス 人身傷害交通事故担当