レンタカー費用と買換諸費用

滋賀県在住

自車:普通自動四輪
相手:普通自動四輪
態様:自車が止まっているところを後ろから追突

  • 9万6,316円(買替諸費用分)

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相談内容

依頼者は事故から二日後に相談に来られました。自車が止まっているところを後ろから追突されたという事故でした。
事故により自車の後部がへこむ形で損傷していました。依頼者は仕事で自動車を使用しているため、一刻でも早く、新車を購入したいとのご意向でした。依頼者は既に知り合いの中古車販売店にレンタカーを手配しており、加害者側の保険会社も加害者が契約しているレンタカー特約によりそのレンタカー費用を支払うとのことでした。
この時点では特に問題はありませんでした。

解決までの流れ

1 レンタカー費用の支払拒否

依頼者は、事故後すぐに、知り合いの中古車販売店に、自己の希望する車の条件を伝えていました。しかし、その中古車販売店には、依頼者の希望に沿うような中古車が現在ないとのことでしたので、その中古車販売店の方で、依頼者の希望に叶う車を調達するということになりました。
その折、加害者側の保険会社から、加害者が契約しているレンタカー特約は14日間までしか適用せず、それ以降のレンタカー費用は支払わないとの連絡がありました。
この保険会社の対応は正当なものなのでしょうか。交通事故の裁判基準等を掲載している『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 上巻(基準編)2019』には、レンタカー費用について、「代車費用(筆者注:レンタカー費用のこと)については、相当な修理期間または買替期間中、レンタカー使用等により代車を利用した場合に認められる。」(p242)と記載されています。そして、買い替えの場合の相当な期間は、一般的には、事故から1ヶ月程度とされています。
本件は買い替えの事案ですから、上記の基準に照らせば、事故から1か月程度のレンタカー費用が支払われるべき事案です。そこで、保険会社に一般的に買替期間は事故から1か月程度であるのだから、本件でも事故から1か月分のレンタカー費用が支払われるべきと主張しました。
その結果、保険会社から、1か月は難しいが、レンタカー特約の適用終了後6日間だけに限りレンタカー費用を支払うとの回答を得ることができました。しかし、保険会社は、その6日間については、保険会社基準の一定額しか支払わないとの条件を付けてきました。一定額の支払しかないということは、レンタカー費用がそれを上回る場合には、その差額は依頼者が負担しなければなりません。この条件について撤回を求めましたが、保険会社がこれに応じることはありませんでした。
やむを得ず、依頼者に、レンタカー代の差額は依頼者が負担する旨を伝えました。当然、依頼者は納得していませんでした。特に、事故からすぐに車の買い替え手続きを採ったのに、なぜ自分が差額のレンタカー代を負担しなければならないのかという点に不満を抱いておりました。もっともなご意見で、私が依頼者の立場でも同じように考えると思います。

2 買替諸費用の請求

差額分を何とか填補できないかと思案していたところ。本件は買い替えの事案であるので、保険会社に買替諸費用を請求して、依頼者の差額負担分を填補できないかと考えました。
買替諸費用とは、車を実際に買い替える際に発生する諸費用のことです。具体的には、登録・車庫証明等の代行手数料がこれにあたります。上記の『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』にも、「買替のために必要になった登録、車庫証明、廃車の法定の手数料相当分及びディーラー報酬部分(登録手数料、車庫証明手数料、納車手数料、廃車手数料)のうち相当額並びに自動車取得税については損害と認められる」(p237)と記載されています。
このように、買替諸費用は、車を実際に買い替える際には、相当な範囲で当然請求できるものですが、保険会社は買替諸費用の支払を自分から主張することは基本的にはありません。特に被害者本人で対応している場合、保険会社は、被害者本人に対し、車を買い替える場合の賠償額は事故車の時価額の範囲に限られますと言うことが多いと思われます。このような保険会社の対応により、本来請求できるはずの買替諸費用を請求できずに示談してしまう被害者の方が多いです。保険会社は自社からの支出を少しでも減らすためにこのような対応を採ってきます。

3 示談交渉

さて、保険会社に買替諸費用を請求したところ、保険会社から、自社では買替諸費用の支払はしていないとの回答がありました。当然このような主張は認められません。そこで、保険会社に対し、保険会社の主張は全く不合理なものであり、本件でも相当額の買替諸費用の請求が認められる旨を主張しました。
数日後、保険会社から、買替諸費用の支払に応じる旨の連絡がありました。しかし、こちらが請求している買替諸費用の一部の支払しか認めないという回答であったため、保険会社が支払を否定する項目について、当該項目が認められた裁判例を添付した上で再度保険会社に対して買替諸費用を請求しました。
すると、当職の粘り腰が功を奏したのか、保険会社から、こちらが請求している買替諸費用のうちの大部分を認める旨の回答を得ることができました。買替諸費用の相場はだいたい3万円から5万円程度であるところ、本件では相場の倍近い買替諸費用を得ることができました。
依頼者に上記の経過及び結果を伝えたところ、大変満足してくださいました。上記買替諸費用で依頼者負担分のレンタカー費用を填補することができ、さらに依頼者の手取りの額が増やすことができました。

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事例のまとめ

本件のポイントは2つあります。
まず、レンタカー費用については、期間及びその額に制限があるということです。新車を購入するまで自己負担なしでレンタカーを利用できるというわけではないのです。事故の被害者の方にしてみれば、加害者のせいで新車を購入することになったのに、なぜ新車が納入されるまでレンタカーを利用させてくれないのかとご不満を抱かれると思います。しかし、本件のように、保険会社は、修理の場合はもちろん、買い替えの場合でも2週間しかレンタカー費用を支払わないという対応をしてくることが通常です。交通事故に遭われた場合、レンタカーを借りる際にはこの点に注意する必要があります。
次に、保険会社は、本来請求できる費用があったとしても、それを被害者本人に
積極的に告知しないということです。保険会社はいかに事故の賠償額を減らすかということに心血を注いでいるので、自社にとって不利になる事実については、たとえそれが裁判例で認められているものであっても、被害者本人に告知しないという対応を採るのです。交通事故に遭われた場合、加害者に請求できる費用をもれなく請求していく必要があります。
このように、交通事故には、様々な落とし穴があります。保険会社が対応してくれているから安心ということでは決してないのです。なぜなら、その保険会社が加害者の保険会社である場合、その保険会社は保険料を支払ってもらっている加害者の味方であって、決して被害者の味方ではないからです。
交通事故にあった場合、日常生活に支障が出るだけでなく、通院もしなければなりません。それに加えて、様々な落とし穴が潜んでいる交通事故について、百戦錬磨の保険会社とやり取りをしなければならないというのは非常にストレスがかかることです。
上記の点から、交通事故を専門とする弁護士に依頼されることをお勧めします。

監修:弁護士法人キャストグローバル
   大津オフィス 人身傷害交通事故担当