相手方保険会社が幼児の整骨院治療を否定していたケースで被害者請求により治療費の回収が可能となった事案

当方:普通自動車
相手方:普通自動車
事故態様:赤信号で停車中に後方から追突された
症状:頸椎捻挫、腰椎捻挫

  • 取得額:約5万円 → 約55万円

事例に近いお悩みをお持ちの方、
まずご相談ください

[概要]

1 事故態様

依頼者家族が乗車していた自動車は、赤信号で停車中に後方から追突を受けました。前列には依頼者夫婦が乗車し、後方にはチャイルドシートに乗った4歳の子が乗っていました。依頼者家族は全員、後方からの不意な衝撃により、頸椎捻挫・腰椎捻挫等の傷害を負いました。

2 相談内容

依頼者家族は治療のため整形外科の通院と整骨院の施術を受けることを希望していました。ところが、相手方の任意保険会社は、大人である依頼者夫婦については希望通りの治療を認めましたが、4歳のお子様について「大人同様の整骨院の施術が必要であるとは考えられない」と主張し、費用の支払いを認めませんでした。
依頼者によればお子様は、事故後たびたび首を押さえて泣いたり痛がったりしており、整骨院でのマッサージを受けると痛みが和らぐ様子が見られるとのことでした。依頼者には、少しでも効果があるのであれば、お子様にもご自身と同じ治療を受けさせてあげたいという意向があり、どうにかできませんかとご相談をいただきました。

[解決までの流れ]

1 治療期間中の対応

本件では、大人2名については相手保険会社の一括対応(加害者側の任意保険会社が治療費・施術費を負担すること)が入っていました。一方、上記のとおりお子様については整骨院の施術は一切認めず、また病院の治療も一括対応を入れるのは数回であると言われていました。
では、本件のように相手方保険会社が十分な一括対応を行わない場合や加害者が任意保険に加入しておらず治療費を支払えないような場合、被害者の治療費はどうなるでしょうか。こうしたケースでは、被害者はまず自費で治療を受け、治療費を加害者の自賠責保険に対し直接請求することで治療費の回収を行う方法(このような手続を「被害者請求」と言います)が考えられます。
ただし、被害者請求を行うにあたり注意点もあります。被害者請求により治療費の支払いを受けるには、事故の規模・態様・受傷部位等様々な事情から見て当該治療が必要かつ相当であると認定できなければなりません。任意保険会社が一括対応を認めないと主張するからにはそれなりの理由が存在する場合も多く、今回で言えば大人と同じマッサージ等の施術が幼児にも有用であると自賠責保険が認めるかという点が問題でした。依頼者にはこうしたリスクを予めご説明した上で、お子様の治療費について被害者請求を行う方針を立てました。もっとも、今回は幸いにも依頼者が通われていた整骨院が事情をよく理解されていたため、被害者請求を行うまでの費用を請求せず待ってくださり、負担なく施術を継続することができました。

2 自賠責調査への対応

さて、治療が終了し、いざ被害者請求を行った段階で、懸念していたとおりお子様の施術の必要性について調査が行われることとなりました。調査対象は4歳の幼児であるため、大人に比べ事故時の状況や感じる痛みについて正確に表現できません。そこで、母である依頼者から、チャイルドシートの設置場所や角度・衝突時の体勢・痛みを訴える部位・事故直後の様子(夜泣きが酷かった事実や発熱があった事実)・事故後保育園での様子等、可能な限り詳細な情報を聴取し、施術を受けるに至った経緯とその有用性について説明を尽くしました。
結果として、依頼者のお子様が実際に受けた3か月分の全ての治療につき費用の支払いが認められました。

3 示談

治療費を無事回収できたことに加え、自賠責保険が3か月の治療期間を認定したことで、慰謝料の増額が実現しました。仮に、事故発生当初に保険会社が主張するまま数回の治療で終了させてしまっていた場合、受け取れる賠償金は数万円程度であったと考えられます。これに対し、結果として依頼者のお子様は、慰謝料や通院付添費を含め約55万円の賠償金を受け取る内容で示談が成立しました。

4 まとめ

事故発生当初、依頼者は泣いて痛みを訴える幼いお子様に十分な治療を受けさせたい一心でご相談に来られました。そして、一時は、たとえ自己負担になったとしても治療を中止するわけにもいかないので致し方ないともおっしゃっていました。
最終的には、ご希望どおりに治療が受けられた上、通院期間に見合った賠償金もお受け取りいただくことができとても安心いたしました。
交通事故に遭われて怪我をされた被害者の中には、思うような治療が受けられずお困りの方が少なくありません。保険会社との交渉や医療機関との連携、調査に対する説明方法を工夫することで事態が改善する可能性があります。個々の事案に適した打開策をご提案できることと思いますので、ぜひお気軽にご相談ください。
以上

監修:弁護士法人キャストグローバル
   大津オフィス 人身傷害交通事故担当