「損傷が軽微であるという理由で自賠責保険が支払いを否定したケースで訴訟提起により後遺障害14級前提の和解金を獲得した事例」

当方:普通自動車
相手:普通自動車
態様:赤信号を完全停車していたときに後ろから追突された事故

  • 取得金額 0(訴訟提起前) → 70万円(訴訟内和解により受け取った金額)

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まずご相談ください

<相談内容>

本件は、赤信号を完全停車していたときに後方から追突された事案で、依頼者は本件事故の衝撃により首と腰のむち打ち症を受傷されました。
事故が発生した際、依頼者は加害者から「勤務先に事故が発覚しないように処理してほしい」と強く希望され、当初は事故を起こした加害者の指示どおり対応していました。
しかし、症状が重かったため間もなくして依頼者が人身事故届を行ったところ、加害者が「今回の事故につき保険対応はしない」と態度を変え困っているとご相談いただきました。

<解決までの流れ>

1 人身傷害保険の利用

まずは、加害者である相手方が自身の加入する任意保険を使わない、という態度を示していることが依頼者の通院を開始させる点から何より問題でした。任意保険は、自賠責保険(傷害部分の賠償につき120万円の枠が設けられています)で賄うことのできない費用を負担するための保険となりますが、本件のように当事者どうしでトラブルとなっている事案、過失割合が50:50等どちらが被害者か判断し難い事案、そもそも任意保険に加入していない事案等では、相手方保険会社の対応が見込めない場合があります。
そこで、本件では依頼者が加入されていた人身傷害保険を利用していただくことにしました。一般的に事故の被害者がご自身の保険を利用することにつき心理的抵抗があるかと思いますが、安心して治療を行うことが最優先だと考えました。

2 後遺障害申請

通院は人身傷害保険が全額負担していたため約1年にわたり続けることができましたが、主婦である依頼者の首には酷い痛みが残り、家事に支障をきたしている状態でした。そこで、後遺障害獲得を目指して自賠責に対し申請を行いました。ところが、後遺障害が認められないどころか、そもそも「事故後の治療に相当因果関係は認められない」という驚きの結果が返ってきました。要するに、事故態様が軽微であるので、通院治療を要するとは言い難いという判断です。
このような結果になったのは、事故直後、加害者の要望に応じて保険会社を通すことなく車両の修理を行ったため車両損害を示す資料が残っていないこと、修理費用を格安で依頼したこと等が原因ではないかと考えられました。

3 訴訟提起

神経症状が残存するという判断以前に、受傷そのものを否定されてしまった本件では、後遺障害部分の賠償につき相手方に請求できる可能性は極めて低い状況でした。むしろ、仮に相手方保険会社が治療費等を負担していたら、このようなケースでは返金を求められてもおかしくはありません(幸い、約1年の通院にかかった費用は依頼者側の保険会社が負担していたため、返金を求められるといった事態はありませんでした)。
ただ、依頼者としては日常生活への支障が大きく、今も残る身体の痛みに対して適切な賠償を受けたいとの意向でしたので、訴訟提起に踏み切ることとしました。

4 訴訟と和解

訴訟内ではカルテを取り寄せ、通院の頻度・治療内容・治療期間等から見て、自賠責が言うような軽微事故には当たらず、「局部の神経症状」が残るとして後遺障害14級9号に該当する根拠を示しました。また、事故当時の車両損害を示す資料が残されていない点につき、依頼者から聞き取った詳細な経緯・現場における言葉のやり取り・修理工場名及び担当者・修理箇所・修理額が低額であった理由・修理工場が閉鎖した事実等を説明しました。
双方の主張が出揃った時点で裁判所から和解案が出されました。裁判所和解案では、「車両の損傷状況を明らかにする客観的証拠がないものの、衝突により(依頼者の)車両に加わった力は軽微とはいえず、治療経過と事故状況が矛盾するものとまではいえない」、後遺障害について「症状自体は後遺障害14級9号の後遺障害に相当するといえる」との判断がなされることになりました。
最終的に、相手方保険会社から控訴を提起され事件が長引くリスクを依頼者と相談し、ある程度の減額を認めて和解金70万円を受け取る形で終結しました。

5 最後に

一見、単純な追突事故であっても事故状況や相手方の対応次第では予想だにしない事態に陥ってしまうことがあります。一度は治療に因果関係がないとして、受傷の存在すら否定されてしまい窮地に立たされた本件ですが、少しでも依頼者に賠償が認められることとなり肩の荷が下りました。依頼者も上記経緯からダメもとで提起した訴訟でしたので、和解金を受け取れたこと、何よりもご自身の辛い痛みを裁判官が認定したという事実について喜んでおられました。
不利な状況に置かれた場合であっても、事案に応じた対応によって状況を打開できる可能性がありますので、お困りの際はぜひご気軽に弁護士へご相談ください。

監修:弁護士法人キャストグローバル
   高槻オフィス 人身傷害交通事故担当