駐車場における物損事故

スーパーマーケットの駐車場で物損事故を起こしてしまい、相手方と主張が食い違い示談が成立せず訴訟となったが、裁判で主張通り認定された事例

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はじめに

今回は駐車場における交通事故(物損事故)の解決事例をご紹介します。
まず,駐車場における交通事故の特徴についてご説明します。

ア 駐車場には店舗の駐車場,集合住宅の駐車場が含まれますが,交通事故が起こる可能性が高いのは店舗の駐車場です。

イ 駐車場における交通事故の特徴の1つは,道路における交通事故と比較すると,人身事故(人のケガを伴う事故)ではなく,物損事故(人のケガはなく,車両の破損のみが発生する事故)にとどまることが多い点です。これは,駐車場を走行する自動車は,道路における速度と比較すると低速であり,衝撃が弱いため,運転者や同乗者への衝撃が弱いことが理由だと考えられます。
当然ですが,車両が直接人に接触した場合は人が負傷することがありますし,車両同士が接触する事故でも速度によっては人が負傷することがあります。

ウ イに関連しますが,物損事故の場合,実況見分調書の作成がなされません。実況見分調書は事故態様を証明する資料の1つであり,実況見分調書が作成されないと,ドライブレコーダー等で事故態様を証明することになります。ドライブレコーダーを搭載していない車両同士の事故の場合,事故態様について双方の言い分に食い違いが生じ,事故態様が明らかにならないことがあります。

エ 駐車場と道路を比較すると,駐車場の方が人と自動車がいろいろな方向に移動していることが想定されているため,運転者には道路における事故と比較すると被害者側に過失がつくことが多い傾向にあります。

解決事例について

経緯

相談者の方からは電話で問い合わせをいただきました。
相談内容は,相手方は任意保険に加入しているものの,事故態様について双方の言い分が完全に食い違っており,相手方は相手方自身が被害者であると主張しているため,賠償の話が全く進んでいない,相手方は事故直後,自分が悪いと言っていたにも関わらず保険会社を通しての言い分は自身が被害者とするもので言っていることがおかしいとのことでした。
事故態様等をお聞きしたところ,相談者の方のおっしゃっていることは合理性があり,相手方保険会社の対応が不当であることから,弁護士が介入する必要があると判断しました。また,相談者は弁護士費用特約に加入しており,損害額が高額ではないことから依頼を受けても相談者の持ち出しは発生しない可能性が非常に高かったため,相談者にデメリットはないと説明し,依頼となりました。
なお,弁護士費用特約が付いていたとしても,弁護士費用の上限が300万円に設定されていることが多いため,弁護士費用特約が付いている場合でも持ち出しが発生する場合もあります。ただ,弁護士費用が300万円を超える交通事故案件というのは相手方より賠償される金額が大きいため,当該賠償金から300万円を超えた部分の弁護士費用に充てればいいため実質的には持ち出しがないことが多いです。

相談者の主張

相談者がスーパーマーケットの駐車場において,相談者が駐車スペースを見つけたため,車両の頭を左に振り,後方を確認し,車両や人がいないことを確認の上,バックで駐車しようとしたところ,相手方が相談者の車の後方に追突したという主張でした。

相手方の主張

相手方は,相談者の後方に停車していたところ,相談者がバックしてきたため,ぶつかると思い,クラクションを鳴らしたが相談者が停止せずにそのままバックしてきたため,ぶつかったという主張でした。

相談者への説明

事情を伺った限りだと相談者の延べていることに合理性があると考えられるが,相手方が争っているため,協議段階では解決せずに,裁判での解決になる可能性が高いこと,確約はできないが,こちらの主張が認められる可能性が高いと考えられると説明しました。
本件では,相談者の認識では,双方にドライブレコーダーはなく,防犯カメラの映像はないあるいは取得できないとのことでしたが,相談者の述べている事故状況は具体的で不合理な点がなかったため上記のように説明しました。

事案の進め方

ア 協議段階

ひとまず相手方保険会社に連絡し,考えを聞いたところ,相手方は完全に被害者であり,相手方:相談者=0:100でないと示談できないとのことでした。相手方が考える事故態様について不合理な点を述べましたが,聞き入れてもらえず,妥協点を見つけることができず協議段階での示談は成立しませんでした。

イ 訴訟段階

相手方保険会社とのやり取りの中で訴訟での解決になりますというやり取りをしていたところ,相手方は自身の過失割合を0として,自身が被った物損の賠償請求の訴訟を提起してきました。それに対して,こちらは依頼者の物損の賠償請求の裁判(反訴)を提起しました。
訴訟では,双方の主張が出尽くしたあたりで,尋問前に,裁判官は双方に和解が可能かを聞きますが,本件では事故態様の点について真っ向から対立していたため,その時点で和解は成立せず,尋問を行いました。依頼者本人と相手方本人に対して尋問を行った結果,事故態様について当方の主張通りに認定されました。

まとめ

駐車場における事故は物損事故にとどまることが多く,その場合,事故態様を証明するため資料が少ないため,ドライブレコーダーの取り付けをおすすめします。本件において,事故当時の状況をドライブレコーダーで撮影されていれば訴訟までせずに協議段階で示談が成立した可能性があります。
また,仮にドライブレコーダーが取り付けられていたとしても,重要な部分が映っていない場合,事故状況が映っていても争ってくる相手だった場合などは協議段階での解決ができないこともあり,その場合裁判での解決になります。裁判を一般の方が行うのは難しいため,弁護士に依頼すべきですが,物損事故の場合,弁護士費用を考慮すると経済的メリットがないこと(相手からの賠償金の増額分以上の弁護士費用が発生する)が多いです。その負担を解決するため,加入している保険に弁護士費用特約を付けることをおすすめします。本件では弁護士費用特約がついていたため,弁護士費用の点は気にすることなく依頼を受けることができ,裁判まで対応することができ,依頼者の主張が認められました。

監修:弁護士法人キャストグローバル
   大津オフィス 人身傷害交通事故担当