物損について買替諸費用等が認められ、また、過失割合についても相手方提示5:5から8:2で解決した事例

当方:バイク
相手:普通自動車
態様:依頼者バイクが直進走行中、前方を走行していた相手方車両が停車したため、追い抜こうとしたところ相手方車両が後退発進し、衝突した事故事例

  • <物損>5万8055円(初回提示額)→24万2712円(受領金額) <人損>55万4483円(受領金額)

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概要

1 事故態様

依頼者バイクが住宅街の狭い道路を直進走行中、前方を走行していた相手方車両が停車したため、追い抜こうとしたところ、相手方車両が自宅駐車場に車を入れるため、後退発進し、衝突したという状況です。
幸いにも骨折等はしませんでしたが、依頼者バイクは海外から並行輸入されたもので、現行生産モデルではなく、部品供給がなく、日本では修理不可能なため、物理的全損となりました。

2 相談内容

依頼者は、相手方任意保険会社から過失割合は5:5のため、治療費、修理費を支払わないと言われてお困りでした。ご相談をいただく前に、依頼者自身で相手方任意保険会社に弁護士に依頼する旨を伝えて、何とか治療費と修理費について対応するという相手方保険会社の約束を取り付けたところでした。
ただ、約束取り付け後も過失割合は当初と変わらず5:5、車両の時価についても納得いかないというところで、当事務所にご相談をいただきました。

解決までの流れ

1 物損について

(1) 車両時価
全損の場合、車両の損害額は車両時価額となります。ここにいう車両時価額とは、原則として同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得しうるに要する価格と解されています。また、全損の場合に車両を買い替える場合は、車両時価額に加えて、車両を買い替えるにあたって必要となる諸費用(「買替諸費用」といいます)として、消費税・地方消費税相当額や、自動車取得税、登録、車庫証明等の法定手数料、リサイクル法に基づくリサイクル関連費用、ナンバープレート代、車検整備費用などが損害となります。
本件では、この車両時価額を算定するにあたって、「同一の車種・年式・型」の中古車市場をどう設定するかが問題となりました。
依頼者によると、依頼者のバイクは、並行輸入されたもので、日本での流通数は少なく、購入したときの価額から現在は5万円位のプレミアムがついて販売されているのに、相手方保険会社はそれを考慮せず、低い金額で算定しているとのことでした。
ただ、依頼者のバイクは流通数が少ないため、バイクの中古車サイトでも同一の車両の販売がほとんどなく、全く同一の車両で中古車市場価格を算定するのは困難でした。相手方保険会社が時価額として低い金額を提示してきたのも、同一車種がないため、依頼者バイクの基となっている基本モデルの車種Aの中古車市場価格を基に時価額が算定されているからでした。
そこで、依頼者から、バイクの詳細を更に聴取したところ、依頼者のバイクが、相手方保険会社が算定根拠とした車種Aをベースに、マニュアル式4速リターンミッションを採用し、フロントカウル等の外装も変更した上位グレードのBに、更にダート用タイヤやアジャスター付リアクションを備えた仕様のものであることがわかりましたので、基本モデルの車種Aではなく、より依頼者バイクに近い上位グレードBの中古車市場価格で時価額を算定しなおして、相手方保険会社に請求することにしました。
上位グレードで算定した方が時価額が5万円位アップするため、相手方保険会社との交渉は難航しました。最終的には、こちらの主張する上位グレードでの時価額の請求は認められませんでしたが、代わりに買替諸費用を充分に認定してもらうことで、こちらが請求していた「上位グレードでの時価額+買替諸費用」の総額とほぼ変わらない金額で示談することができました。

(2) 過失割合
過失割合についても、当初、相手方保険会社からは50:50という提示がされていました。
しかし、依頼者が主張する事故態様を前提とすると50:50という過失割合は妥当ではないと思われました。そこで、まず、依頼者が主張する事故態様が立証可能なものか確認するため、相手方立会いの下で作成された実況見分調書を取り寄せ、依頼者の主張する事故態様と矛盾しないこと、バイクの破損状況とも依頼者が主張する事故態様が整合することを確認しました。
そのうえで、過去の類似する事故態様の裁判例を検索し、本件の過失割合は80:20~90:10(相手方:依頼者)が妥当であるという結論に達し、相手方保険会社と交渉を行いました。
交渉結果は、90:10では応じないという相手方本人の強い意向もあり、また、依頼者自身も裁判までは望まなかったため、最終的には過失割合は80:20での決着となりました。

(3)まとめ
物損については、相手方保険会社が当初主張していた時価額及び過失割合(50:50)を前提とすると、相手方車両修理費との相殺後の受領金額は、5万8055円でしたが、交渉により、過失割合と時価額等を依頼者に有利なものにすることができたため、24万2712円まで増額させることができ、依頼者にも満足いただける結果となりました。

2 人損について

事故から約5ヶ月経ったところで、相手方保険会社の治療費の一括対応が終了しました。ただ、痛みが残っていたため、依頼者は治療の継続を希望しており、主治医も治療の継続の必要性を認めていました。
そこで、相手方保険会社に一括対応の延長を申し出ましたが、応じられないという回答でしたので、依頼者には1ヶ月程度自費通院をしていただき、治療終了後、自己負担分の治療費を含めて、自賠責保険、相手方保険会社に請求し、無事回収できました。

事例のまとめ

時価額や過失割合に大きな開きがある場合、依頼者本人で交渉を行うのは困難なことが多いです。弁護士に依頼することで、過去の裁判例等を基に、妥当な解決を図ることが期待できます。
今回のケースでは、依頼者が納得がいかなかった車両時価額についても、時価額算定の根拠を詳細に説明しつつ、買替諸費用と合わせて交渉することで、最終的には依頼者が主張していたプレミアムが反映された時価額とほぼ同額での解決をすることができました。また、過失割合についても、依頼者が主張する事故態様について根拠となる証拠を示しつつ、過去の類似する事故態様の裁判例を基に交渉することで、妥当な解決を図ることが出来ました。
依頼者にも弁護士に依頼したかいがあったと思っていただけたと思います。

監修:弁護士法人キャストグローバル
   高槻オフィス 人身傷害交通事故担当