自賠責で後遺障害非該当の認定→判決で14級を獲得した事例

京都府京都市在住

当方:普通自動車
相手:普通自動車
態様:直進走行中、進路変更しようとした相手方に右側方に衝突された

  • 傷害部分112万円+後遺傷害部分167万2088円
  • 頸椎捻挫、腰椎捻挫

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相談内容

本件は、進路変更車両に衝突され、首と腰のむち打ち症を受傷された事案です。
依頼者は、事故から約10ヶ月、整形外科及び整骨院への通院を続けましたが、首と腰に痛みが残存してしまいました。
そこで、依頼者は、症状固定後に自賠責保険に対して後遺障害の等級認定の申立てを行いましたが、過去の事故(約16年前)において、すでにむち打ち症で14級9号(局部の神経症状=むち打ちをした頸椎の痛み)を認定されていたことから、今回の事故については後遺障害非該当(14級9号からの加重なし)という認定を受け、後遺障害についての損害賠償を得られませんでした。
依頼者は、過去の事故でのむち打ちの症状は、今回の事故に遭った時点ですでに完治しており、まったく症状がなかったにも関わらず、今回の事故後、仕事が続けられなくなるほどの後遺症に悩まされていました。
そこで、自賠責の認定内容にどうしても納得がいかず、このような場合に、一体どうしたら良いかとご相談がありました。

自賠責の「加重」認定について

自賠責の後遺障害の認定のルールの一つに、「加重」認定があります。
「加重」とは、過去の事故ですでにある部位で後遺障害等級を認定されている場合に、後の事故で同一部位に新たな後遺障害が生じた場合、過去の事故で認定された等級を上回る後遺障害が残った場合に、より上位の等級を認定する、というルールです。
自賠法では、体の各部位ごとに1級~14級までの後遺障害等級が定められています。例えば、首のむち打ち(頸椎捻挫)の場合、首に痛みが残った場合には14級9号の「局部の神経症状」という等級が認められることになりますが、より上位等級として、12級13号の「局部に頑固な神経症状を残すもの」という等級があります。
仮に、過去の事故で、首のむち打ちで14級9号の認定を受けたことのある方が、再度、別の事故で再度首のむち打ちとなった場合に、以前の事故よりも後遺障害の状態が悪くなった場合には、12級13号の「加重」認定がされることになります。そして、この場合、自賠責保険金は、12級分の224万円から、既に獲得済の14級分の75万円を控除した、149万円が支払われることになります。
裏を返すと、一度、ある部位に後遺障害等級が認められた場合には、同一箇所には同じ等級が認められることは理屈上あり得ないということになっています。
今回の依頼者の方のように、一度、むち打ちで14級を取った方の場合、また事故にあっても同一の14級が出ることはあり得ず、12級に該当するほど症状が悪化しない限りは、新たな

むち打ちの症状の残存期間について

上記の加重のルールは、通常はあまり問題になることはありません。
なぜならば、後遺障害とは、定義上、その方が生きている限りは残存し続ける症状のことを指すからです。一度ある等級が認められれば、その時点でその方の稼働年齢(通常、67歳までで計算)までの期間の賠償を受けることができますので、加重(より重い後遺障害)が残らない限りは、再度賠償を認める必要がないからです。
ところが、むち打ちの場合は特殊な事情があります。それは、賠償の対象となる期間が一生涯ではない、という点です。すなわち、むち打ちの場合は、症状が一生残存するとは考えられておらず、14級の場合で3年~5年、12級の場合でも7年~10年程度で症状が軽快し消失すると考えられています。したがって、賠償の対象期間が限られており、一度認定されたとしても必ずしも一生涯分の賠償とはならないのです。
このような特殊性から、過去に一度14級相当が認められて10年以上経って一度完全に治っていたにも関わらず再度事故に遭ってむち打ちによる痛みが残存した場合、前の事故では保証がされていないにも関わらず、後の事故で自賠責での後遺障害が認められないために、再発した後遺障害の賠償が受けられない、というケースが生じる場合があるのです。今回の依頼者の方は、まさにこのケースでした。

解決までの経緯

ご依頼を受けて、まずは、依頼者の後遺障害は14級9号に相当するとして示談交渉を行いましたが、相手方保険会社としては、自賠責の認定が非該当である以上は、後遺障害についての賠償を認めることは一切できない、とのスタンスでした。
このような場合、前記の通り、自賠責の手続上において同一部位に同一の後遺障害等級が出ることは理論上あり得ないということになりますので、自賠責の等級認定を前提とする示談では解決不可能です。もっとも、最終手段として、裁判であれば自賠責の認定を覆すことが可能な場合があります。そこで、今回のケースは、民事訴訟を提起し、裁判所において後遺障害が残存していることを主張していく方針となりました。
裁判においては、カルテ等の医療記録を詳細に検討し、むち打ちによる症状が残存していることを裏付ける事実を丹念かつ詳細に主張しました。これに対して、相手方は、一貫して和解による解決を拒否したため、和解による解決はできず、尋問を経て判決を受けることとなりました。そして、判決では、後遺障害14級9号が残存している、という当方の主張に沿った認定を受けることができ、無事、勝訴判決を得ることができました。最終的には、相手方も上記判決に対して控訴せずに一審判決が確定し、依頼者は、後遺障害に関する損害賠償の支払いを受けることができました。
依頼者の方からは、自身では到底解決不可能であったが、希望していた後遺障害に対する賠償が受けられたことで大変喜んでいただけました。

監修:弁護士法人キャストグローバル
   大津オフィス 人身傷害交通事故担当