内縁・事実婚の解消で財産分与はどうなる?条件と手続きを解説

監修者 弁護士法人キャストグローバル
離婚部弁護士
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目次を表示内縁や事実婚といった、婚姻届を提出していない内縁関係を解消する際にも、法律上の夫婦が離婚する場合と同様に、財産分与が認められています。
長年、夫婦として共同生活を営み、協力して財産を築いてきた実態があれば、その関係は法的に保護される対象となります。
この記事では、内縁・事実婚の解消における財産分与の条件、対象となる財産、そして具体的な手続きの流れについて詳しく解説します。
事実婚(内縁)でも法律婚と同じく財産分与は認められる

事実婚(内縁)関係を解消する際、財産分与を請求できます。これは、民法の財産分与に関する規定が、婚姻に準ずる内縁関係にも準用されるためです。過去の判例においても、最高裁判所は内縁を「婚姻に準ずる関係」と認めて財産分与請求権を肯定しており、法的な裏付けが確立されています。ただし、注意が必要な点があります。それは、内縁関係の一方の死亡によって解消した場合には、最高裁判所は財産分与の規定の類推適用を否定していることです。
財産分与が認められる「事実婚(内縁)」の成立要件

財産分与が認められるためには、二人の関係が単なる同棲ではなく、法的に保護されるべき「内縁関係」であったと認められる必要があります。
この内縁関係が成立していると判断されるためには、主に「夫婦として暮らしていく意思が互いにあること」と「夫婦同然の共同生活を送っている実態があること」という2つの要件を満たしていることが重要です。
これらの要件が揃って初めて、法律婚に準じた保護が受けられます。
1. 夫婦として暮らしていく意思が互いにあること
夫婦として暮らしていく意思、いわゆる「婚姻意思」とは、単に「いずれは婚姻届を出したい」という希望だけを指すものではありません。
お互いを生涯のパートナーと認め、社会通念上の夫婦として協力し合って生活していくという双方の意思を意味します。
例えば、結婚式を挙げたり、親族や友人、職場など対外的に夫婦として振る舞っていたりした事実は、この意思を裏付ける事情となります。
どちらか一方にしかその意思がない場合は、この要件を満たしているとは評価されにくいです。
2. 夫婦同然の共同生活を送っている実態があること
夫婦同然の共同生活の実態とは、客観的に見て法律上の夫婦と変わらない生活を送っている状態を指します。
具体的には、長期間にわたって同居していること、生計を一つにして家計を共有していることなどが挙げられます。
また、社会保険で相手の扶養に入っている、生命保険の受取人に指定しているといった事実も、夫婦としての共同生活を証明する上で重要な要素となります。
事実婚(内縁)関係を証明するために有効な証拠
当事者間で内縁関係の存在に争いが生じた場合に備え、客観的な証拠を準備しておくことが重要です。
最も強力な証拠の一つが、住民票の続柄を「夫(未届)」または「妻(未届)」と記載することです。
その他にも、健康保険証で相手の被扶養者になっていること、結婚式場の契約書や招待状、式での写真なども有効な証拠となります。
賃貸借契約書や金銭消費貸借契約書に連名で署名していることや、周囲の人々からの証言も、二人の関係を証明する上で役立ちます。
財産分与の対象となる財産とならない財産

内縁・事実婚の財産分与では、法律上の離婚と同じく、全ての財産が分与の対象になるわけではありません。
対象となるのは、二人が協力して築き上げた「共有財産」のみです。
一方で、各自が内縁関係を開始する前から所有していた財産や、親族から相続した財産は「特有財産」と呼ばれ、原則として分与の対象から外れます。
この「共有財産」と「特有財産」を正確に区別することが、財産分与を適切に行うための第一歩となります。
【対象となる】二人で協力して築き上げた共有財産
共有財産とは、内縁関係の開始から解消までの間に、双方が協力して得た財産のすべてを指します。
具体的には、預貯金、不動産(マンションや一戸建て)、自動車、株式や投資信託などの有価証券、生命保険の解約返戻金、学資保険などが該当します。
重要なのは、財産の名義がどちらか一方になっていても、それが二人の協力によって維持・形成されたものであれば共有財産とみなされる点です。
例えば、夫名義の預金であっても、妻が専業主婦として家事を支えた貢献があれば、それは共有財産となります。
【対象とならない】婚姻前から各自が所有していた特有財産
特有財産とは、夫婦の協力とは関係なく、一方の当事者のみに帰属する財産のことです。
これには、内縁関係が始まる前からそれぞれが持っていた預貯金や不動産、あるいは内縁関係の期間中に親から相続した遺産や、贈与された金銭・物品などが含まれます。
これらの特有財産は、個人の財産であるため、原則として財産分与の対象にはなりません。
ただし、特有財産を元手に購入した財産の価値が、もう一方の協力によって維持・増加した場合は、その貢献分が分与の対象となることもあります。
財産分与の割合は貢献度に応じて決まり原則2分の1

財産分与の割合は、共有財産の形成・維持に対するそれぞれの貢献度に応じて決められます。
法律上の離婚と同様に、内縁関係の解消においても、貢献度は原則として等しいとされ、共有財産を2分の1ずつに分ける「2分の1ルール」が適用されるのが一般的です。
これは、夫婦間の収入に差がある場合や、一方が専業主婦(主夫)として家事や育児に専念し、直接的な収入を得ていなかった場合でも変わりません。
外で働くことと家を守ることは、同等に財産形成に貢献したと評価されます。
内縁・事実婚解消における財産分与の進め方【3ステップ】

内縁・事実婚を解消する際の財産分与は、後のトラブルを避けるためにも、順序立てて進めることが重要です。
まずは、分与の対象となる財産を漏れなく洗い出すことから始めます。
次に、その財産をどのように分けるかについて当事者間で話し合いを行います。
そして最後に、話し合いで決まった内容を法的な効力のある書面として残す、という3つのステップで進めるのが基本的な流れです。
ステップ1:財産分与の対象となる財産をリストアップする
最初に、内縁関係が始まったときから解消する時点までに形成された共有財産をすべて正確に把握し、リストアップします。
預貯金(複数の口座を含む)、不動産、自動車、保険、有価証券などのプラスの財産はもちろん、住宅ローンや自動車ローンといったマイナスの財産も忘れずにリストに加える必要があります。
この作業を正確に行うため、預金通帳、不動産の登記事項証明書、保険証券、源泉徴収票などの関連資料を集め、財産目録を作成すると後の話し合いがスムーズに進みます。
ステップ2:当事者同士で話し合い(協議)を行う
作成した財産目録をもとに、当事者同士で財産の分け方について具体的に話し合い(協議)を行います。
どの財産をどちらが取得するのか、不動産や自動車など物理的に分割できないものはどうするのか(売却して金銭で分ける、一方が取得して相手に代償金を支払うなど)を決めます。
感情的にならず、お互いの今後の生活設計なども考慮しながら、冷静に協議を進めることが円満な解決につながります。
この段階で双方が納得できる合意に至れば、裁判所の手続きを経ることなく解決が可能です。
ステップ3:合意内容を公正証書など書面に残す
協議によって合意した内容は、口約束で済ませずに必ず書面に残しておきましょう。
特に、財産の受け渡しが将来にわたる場合は、公証役場で「公正証書」を作成することを強く推奨します。
公正証書は、公証人が作成する公的な文書であり、高い証明力を持ちます。
さらに、強制執行認諾文言を付けておけば、万が一相手からの支払いが滞った際に、裁判を起こすことなく相手の給与や預金などを差し押さえる強制執行の手続きが可能となります。
話し合いで解決しない場合は家庭裁判所の手続きを検討する

当事者間の話し合いで財産分与についての合意が成立しない場合や、相手がそもそも話し合いに応じようとしない場合には、家庭裁判所の手続きを利用して解決を図ることになります。事実婚(内縁)関係の解消に関する問題については、いきなり訴訟を起こすのではなく、まずは家庭裁判所に「内縁関係調整調停」を申し立てるのが一般的です。調停は、合意を目指すための話し合いの場であり、合意が成立しない場合は審判手続きなどに移行します。
家庭裁判所での「内縁関係調整調停」を申し立てる
内縁関係調整調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所に申し立てます。調停では、裁判官と民間の有識者から選ばれた調停委員が間に入り、中立的な立場で双方の主張を聞きながら、話し合いによる解決を目指します。この調停手続きで合意が成立すると、その内容は「調停調書」という公的な書面に記載され、確定判決と同じ法的効力を持ちます。
もし調停でも話がまとまらず不成立となった場合は、調停に代わる審判手続きとして、家庭裁判所の審判によって内縁関係の解消を判断することになります。
内縁・事実婚の財産分与で知っておくべき注意点

内縁・事実婚の財産分与を進める上では、法律婚の離婚とは異なる点や、特に注意すべき点がいくつかあります。
請求できる期間には限りがあり、それを過ぎると権利を失ってしまう可能性があります。
また、税金の取り扱いや、関係解消の理由が相手の死亡であった場合など、特有のルールが存在するため、事前に正しく理解しておくことがトラブル回避につながります。
財産分与の請求には解消から5年という期限がある
財産分与を請求する権利には、内縁関係が解消された時から5年という期限があります。
この期間は法律上「除斥期間」と解されており、消滅時効のように中断(更新)させることができません。
したがって、関係を解消した後は速やかに財産分与に関する協議を開始し、もし話し合いがまとまらなければ、5年の期間が経過する前に家庭裁判所へ調停を申し立てる必要があります。
この期限を過ぎてしまうと、財産分与を請求する権利そのものが消滅してしまうため、注意が必要です。
財産分与で受け取った財産に原則として贈与税はかからない
財産分与によって相手から財産を受け取った場合、原則として贈与税は課税されません。
なぜなら、財産分与は無償で財産をもらう「贈与」ではなく、内縁期間中に双方が協力して築いた財産の清算であって、財産分与義務の消滅の対価としての資産の移転にあるからです。
ただし、分与された財産の額が、財産形成への貢献度などすべての事情を考慮しても多すぎると判断された場合、その過大な部分については贈与税の対象となる可能性があります。
また、不動産を取得した場合には、贈与税はかからないものの、不動産取得税や登録免許税は発生します。
相手の死亡による関係解消では財産分与を請求できない
財産分与は、あくまで当事者双方が生きている間に内縁関係を解消することを前提とした制度であり、死亡の場合は相続によって処理します。
そのため、パートナーの死亡によって内縁関係が解消された場合には、残されたパートナーは財産分与を請求することができません。
また、内縁の配偶者には法律上の相続権が認められていないため、相手の財産を法的に相続することも不可能です。
相手に財産を残したい、または受け取りたいと考える場合は、生前に遺言書を作成してもらうといった対策を講じておく必要があります。
内縁・事実婚の解消による財産分与に関するよくある質問

ここでは、内縁・事実婚の解消による財産分与に関して、特に多くの方が疑問に思う点や、具体的な事例についての質問と回答をまとめました。
住宅ローンが残っている家の扱いや、厚生年金の分割、慰謝料請求の可否など、より踏み込んだ内容について解説します。
内縁関係中に購入した家の住宅ローンが残っている場合はどうなりますか?
住宅ローンが残っている不動産は、その評価額からローン残高を差し引いた金額(純資産価値)を算出します。この純資産価値がプラスであれば、その分を分け合います。
ただし、住宅ローンの残高が不動産の評価額を上回るオーバーローンの場合、不動産自体の純資産価値はゼロと評価され、不動産単体では財産分与の対象とならないのが一般的です。負債が財産分与の対象となるかについては、裁判所の判断によって異なる場合があります。
誰が家に住み続けるか、ローンをどちらが支払うか、名義をどうするかなどを当事者間で具体的に協議して決める必要があります。
事実婚でも厚生年金の分割(年金分割)はできますか?
事実婚の期間中に、国民年金の「第3号被保険者」として認定されていた期間がある場合に限り、その期間に対応する部分の厚生年金を分割(3号分割)できます。
この手続きは、関係解消の翌日から2年以内に年金事務所で行う必要があります。
第3号被保険者でない場合は、年金分割の対象とはなりません。
財産分与とは別に、不貞行為などを理由に慰謝料を請求することは可能ですか?
請求は可能です。
相手による不貞行為(浮気)やDV(暴力)、あるいは正当な理由のない一方的な内縁関係の破棄などによって精神的苦痛を受けた場合、財産分与とは別に慰謝料を請求できます。
内縁関係においても法律婚と同様の貞操義務などが認められており、内縁の妻(夫)の権利は法的に保護されます。
下記の記事では内縁・事実婚の慰謝料請求について詳しく解説しています。ご参考ください。
まとめ

内縁・事実婚の関係を解消する際にも、法律婚と同様に財産分与を請求する権利が認められています。この権利を行使するには、二人の間に婚姻の意思と共同生活の実態があったことを証明する必要があります。
対象となるのは双方が協力して築いた共有財産で、分配割合は原則として2分の1です。まずは当事者間で話し合い、合意内容はトラブル防止のために公正証書として残すことが大切です。
協議がまとまらない場合は、解消から5年以内に家庭裁判所へ調停を申し立てる手段があります。しかし、証拠の収集やローンが残る不動産の扱いなど、個人での対応には限界もあります。円滑な解決に向けて、まずは専門家である弁護士へ相談することをおすすめします。
キャストグローバルでは、離婚専門部があり、離婚問題に多くの実績を持つ弁護士が、あなたの気持ちに寄り添いながら対応します。
一人で悩まず、不安を感じたらまずはお気軽にご相談ください。
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