内縁・事実婚でも慰謝料請求はできるのか|条件と相場、関係の証明方法を解説

内縁・事実婚でも慰謝料請求はできるのか|条件と相場、関係の証明方法を解説

監修者 弁護士法人キャストグローバル

離婚部弁護士

内縁や事実婚の関係であっても、パートナーの不貞行為や一方的な関係の破棄に対して、法律婚と同様に慰謝料の請求が可能です。
しかし、請求を認めてもらうためには、二人が単なる同棲ではなく「内縁・事実婚」であったことを客観的な証拠で証明する必要があります。
この記事では、慰謝料を請求できる具体的なケースや金額の相場、そして最も重要となる内縁関係の証明方法について詳しく解説します

内縁・事実婚の関係でも慰謝料の請求は可能

内縁・事実婚の関係でも慰謝料の請求は可能

結論として、内縁・事実婚の関係でも慰謝料を請求することは可能です。
婚姻届は提出していなくても、婚姻の意思をもって夫婦同然の共同生活を営む内縁関係は「準婚関係」とみなされ、法律婚に準じた法的保護を受けられます。

そのため、パートナーの不貞行為(不倫)や正当な理由のない一方的な関係の解消(不当破棄)など、精神的苦痛を受けた場合には、その原因を作ったパートナーや第三者に対して慰謝料を請求する権利が認められています

そもそも内縁・事実婚とは?単なる同棲との違いを解説

内縁や事実婚とは、婚姻届を提出していないものの、社会通念上、夫婦としての共同生活の実態がある男女関係を指します。
法律上の明確な定義はありませんが、判例上は「当事者間に婚姻の意思があること」「夫婦としての共同生活の実態があること」の2つが認められる場合に成立するとされています。
この「婚姻の意思」の有無が、単なる同棲との違いを分ける重要なポイントです。なお、近年、生活形態の多様化にともない、同棲が必要不可欠ではなくなっています。

法律上、内縁と事実婚はほぼ同じ意味で扱われます。

内縁・事実婚で慰謝料を請求できる3つの代表的なケース

内縁・事実婚で慰謝料を請求できる3つの代表的なケース

内縁関係において慰謝料請求が認められるのは、主に相手の行為によって精神的な苦痛を被った場合です。
法律婚における離婚時の慰謝料請求と同様の考え方が適用されます。
ここでは、慰謝料を請求できる代表的な3つのケースを具体的に紹介します。

ご自身の状況がこれらのケースに当てはまるか確認してみてください。

ケース1:パートナーに不貞行為(不倫)があった場合

パートナーによる不貞行為、すなわち浮気や不倫は、慰謝料請求の最も典型的なパターンです。
内縁関係であっても、法律婚の夫婦と同様に互いに貞操義務を負っていると考えられています。

したがって、パートナーがこの義務に違反して第三者と肉体関係を持った場合、その精神的苦痛に対して慰謝料を請求できます。
この請求は、裏切ったパートナーだけでなく、その浮気相手に対しても行うことが可能です。

ケース2:正当な理由なく一方的に関係を解消された場合(不当破棄)

正当な理由がないにもかかわらず、パートナーから一方的に内縁関係の解消を告げられた場合も、慰謝料請求の対象となります。
これは「不当破棄」と呼ばれ、長年続いた安定した生活を破壊されたことによる精神的苦痛が賠償の対象です。
ただし、自身の暴力(DV)やモラハラ、あるいは自身の浮気などが原因で関係が悪化し、相手との別れにつながった場合は、正当な理由のある関係の解消とみなされ、慰謝料の請求は難しくなります

ケース3:相手が既婚者であることを隠していた場合

交際相手から既婚者であることを知らされずに内縁関係を続けていた場合も、慰謝料を請求できる可能性があります。
このケースでは、既婚者であることを隠し、将来の結婚を期待させて性的関係を継続する行為は、相手方の「貞操の自由」や「人格権」を侵害されたことになります。

既婚の事実を知っていれば関係を持たなかったはずであり、騙されていたことに対する精神的苦痛を理由に、相手に対して慰謝料を求めることが可能です。

慰謝料請求が認められない、または困難になるケース

 慰謝料請求が認められない、または困難になるケース

内縁関係であっても慰謝料請求は可能ですが、必ずしもすべてのケースで認められるわけではありません。
特に、法律婚と違って公的な証明がないため、関係性の立証が大きな壁となることがあります。
また、不貞行為などが発覚する以前から関係がこわれていた場合も、請求が困難になるため注意が必要です。
次に、慰謝料請求が難しいと思われる2つのケースを具体的にご紹介します。

ケース1:内縁関係にあった事実を客観的に証明できない場合

慰謝料を請求する大前提として、二人が「単なる同棲相手」ではなく「内縁関係」にあったことを客観的に証明する必要があります。
裁判所などの第三者に対して、夫婦同然の生活を営んでいた事実を証拠で示せなければ、慰謝料請求の土台が崩れてしまいます。

どのような証拠が有効かについては、後の章で詳しく解説しますが、この証明ができない場合は請求が難しくなります

ケース2:慰謝料を請求する以前に関係が破綻していた場合

パートナーの不貞行為が発覚した時点で、すでに関係が修復不可能なほど冷え切っていた(破綻していた)場合、慰謝料請求は認められない可能性が高いです。
例えば、長期間の別居状態にあったり、家庭内でも会話がなく生活費も別々であったりするケースがこれに該当します。
DVやモラハラなどが原因であっても、夫婦同然の生活が送れていなかいとすると同様です。

これは、不貞行為と精神的苦痛との間に因果関係がないと判断されるためで、法律婚でも同じ考え方が適用されます。

慰謝料の相場は50万円~300万円が目安

慰謝料の相場は50万円~300万円が目安

内縁関係の解消に伴う慰謝料の相場は、個別の事情によって大きく変動しますが、一般的には50万円から300万円程度が目安とされています。
これは法律婚における慰謝料相場とほぼ同水準か、やや低くなる傾向にあります。
金額の算定にあたっては、内縁関係の期間、不貞行為の悪質性、精神的苦痛の度合いなど、様々な要素が総合的に考慮されます。

内縁期間の長さや子の有無によって慰謝料は増額される傾向にある

慰謝料の金額は、内縁関係が長期間にわたるほど高額になる傾向があります。
例えば、内縁期間が10年、15年と長くなれば、それだけ関係性が強固であったとされ、破綻による精神的苦痛も大きいと判断されやすくなります。

何年から増額という明確な基準はありませんが、期間の長さは重要な考慮要素です。
また、二人の間に子どもがいる場合や、相手の不貞行為が悪質であった場合も、慰謝料が増額される要因となります。

慰謝料が減額される・低額になりやすい要因

慰謝料は常に高額が認められるわけではなく、様々な要因によって減額されたり、低額になったりすることがあります。
例えば、内縁期間が1年未満など短い場合や、不貞行為の回数が1回のみといったケースでは、金額は低くなる傾向にあります。

また、慰謝料を支払う側の収入や資産が乏しく、支払い能力が低い場合も考慮されます。
さらに、請求する側にも関係破綻の原因があったと判断されると、過失相殺として慰謝料が減額される可能性があります。

慰謝料請求の鍵となる「内縁関係」を証明する方法

慰謝料請求の鍵となる「内縁関係」を証明する方法

内縁・事実婚の慰謝料請求において、最も重要かつ困難な点が「内縁関係の証明」です。
法律婚であれば戸籍謄本で婚姻関係を簡単に証明できますが、内縁関係にはそれがありません。
そのため、二人が夫婦同然の生活を送っていたことを示す客観的な証拠を、自分自身で集めて立証する必要があります。

この証明ができなければ、慰謝料請求は認められません

内縁関係を立証するための具体的な証拠リスト

内縁関係を証明するためには、単一の決定的な証拠よりも、複数の証拠を組み合わせることが有効です。
以下のような証拠を集めることで、夫婦同然の関係であったことを客観的に示すことができます。

  • 住民票の続柄に「夫(未届)」「妻(未届)」と記載されている
  • 健康保険証で相手の被扶養者になっている
  • 結婚式や披露宴、新婚旅行の写真や招待状
  • 夫婦として参列した親族の冠婚葬祭の記録
  • 長期間の同居と生計を一つにしていたことを示す家計簿や公共料金の領収書
  • 親族や友人、職場への紹介やその証言
  • 生命保険の受取人に相手を指定している保険証券

不貞行為を立証するための具体的な証拠リスト

パートナーやその浮気相手に慰謝料を請求するためには、内縁関係の証明に加えて、不貞行為(肉体関係)があったことを立証する証拠も必要です。
単に「仲が良さそうだった」というだけでは不十分で、以下のような性交渉があったことを推認させる客観的な証拠が求められます。
浮気や不倫の証拠の集め方については、下記の記事でも解説していますので、ご参考ください。

関連ページ
何を調べるべき?浮気や不倫の証拠の集め方
  • ラブホテルに出入りする写真や動画
  • 性交渉の事実がわかるメール、LINE、SNSのやりとり
  • 肉体関係を認める会話の録音データ
  • ホテルの領収書やクレジットカードの利用明細
  • 探偵事務所の調査報告書
  • 不貞行為を認める念書や自認書

慰謝料を請求するための具体的な3つのステップ

慰謝料を請求するための具体的な3つのステップ

内縁関係と相手の不法行為を証明する証拠がそろったら、実際に慰謝料を請求する手続きに進みます。
基本的には、まず当事者間での話し合いから始め、合意に至らない場合に法的な手段へ移行するという流れになります。
感情的な対立を避け、冷静かつ段階的に進めることが、問題解決への近道です。

法律の専門家である弁護士に相談しながら進めることも有効な手段です。

ステップ1:まずは当事者間での直接交渉から始める

最初のステップは、慰謝料を請求したい相手(パートナーやその不倫相手)と直接話し合うことです。
電話や対面で、慰謝料を請求する意思とその理由、希望する金額を具体的に伝えます。
感情的にならず、あくまで冷静に交渉を進めることが重要です。交渉をしたくない場合には、ステップ2から始めても良いでしょう。

この話し合いで双方が合意に至った場合は、後日のトラブルを防ぐため、合意内容(金額、支払日、支払方法など)を記載した「示談書(合意書)」を必ず作成し、書面で残しておきましょう

ステップ2:交渉に応じない場合は内容証明郵便を送付する

相手が話し合いに応じない、交渉したくない場合には、次の手段として「内容証明郵便」を送付します。
内容証明郵便は、誰が、いつ、どのような内容の文書を送ったかを郵便局が証明してくれるサービスです。
これにより、慰謝料を請求したという事実を公的な証拠として残すことができます。

請求書面が内容証明郵便で届くことで、相手に心理的なプレッシャーを与え、交渉のテーブルに着かせたり、支払いに応じさせたりする効果が期待できます。

ステップ3:最終手段として調停・訴訟を申し立てる

交渉が決裂し、内容証明郵便を送っても合意に至らない場合の最終手段が、裁判所を利用した法的手続きです。
具体的には「慰謝料請求調停」「慰謝料請求訴訟(裁判)」を申し立てます。
調停は、調停委員を介して当事者間の話し合いによる解決を目指す手続きです。

一方、訴訟では、お互いの主張や証拠に基づき、最終的に裁判官が過去の判例なども参考にしながら慰謝料の支払い義務の有無や金額について法的な判断(判決)を下します。

内縁・事実婚の慰謝料請求を弁護士に相談するメリット

内縁・事実婚の慰謝料請求を弁護士に相談するメリット

内縁関係の慰謝料請求は、法律婚とは異なり「内縁関係の立証」という特有の難しさがあります。
また、精神的に大きな負担を伴う相手方との交渉や複雑な法的手続きを一人で進めるのは容易ではありません。
そのため、法律の専門家である弁護士に相談・依頼することには、多くのメリットがあります。

法的に有効な証拠の集め方をアドバイスしてもらえる

慰謝料請求の成否は、いかに有効な証拠を集められるかにかかっています。
しかし、何が法的に有効な証拠となるのかを法律の素人が判断するのは非常に困難です。
弁護士に相談すれば、現在の状況でどのような証拠が内縁関係や不貞行為の立証に有効か、またそれをどのように集めればよいか、具体的なアドバイスを受けられます。

これにより、無駄なく的確に証拠収集を進めることが可能になります

相手方との交渉をすべて任せられる

自分を裏切ったパートナーやその不倫相手と直接交渉することは、精神的に大きな苦痛とストレスを伴います。
弁護士に依頼すれば、その交渉の全てを代理人として任せることができます。
感情的な対立を避け、法的な根拠に基づいて冷静に交渉を進めてもらえるため、精神的な負担が大幅に軽減されます。

また、相手方も専門家が出てきたことで真摯に対応するようになり、有利な条件での解決が期待できます

法的手続きをスムーズに進められる

調停や訴訟といった裁判所での手続きは、申立書の作成から証拠の提出、期日での主張まで、専門的な知識と経験が求められます。
これらの複雑で煩雑な手続きをすべて弁護士に任せることができるため、時間や労力の負担を大きく減らすことができます。
手続きの各段階で適切な対応を取ってもらえるため、自分に有利な結果を得られる可能性も高まります

内縁・事実婚の慰謝料に関するよくある質問

内縁・事実婚の慰謝料に関するよくある質問

ここでは、内縁・事実婚の慰謝料に関して、多くの方が抱く疑問についてお答えします。ご参考ください。

不倫したパートナーではなく、不倫相手にだけ慰謝料を請求できますか?

はい、可能です。
不貞行為は、内縁の夫(妻)とその不倫相手による「共同不法行為」とみなされます。
そのため、慰謝料を支払う義務は両者が負っており、どちらか一方にのみ請求することも、両方に請求することも法律上認められています。

内縁関係を証明する決定的な証拠がありません。慰謝料請求は不可能ですか?

ただちに不可能とは限りません。
住民票の続柄のような決定的な証拠が一つもなくても、複数の間接的な証拠を組み合わせることで、内縁関係が認められる可能性は十分にあります。
友人や親族の証言、写真なども証拠になり得ますので、諦めずに弁護士へ相談することをおすすめします。

慰謝料を請求できる期間に時効はありますか?

はい、慰謝料請求権には時効が定められています。不貞行為に基づく慰謝料請求権の時効は、「損害および加害者を知った時から3年」または「不法行為の時から20年」のいずれか早い方が適用されます。この期間を過ぎると請求が困難になる可能性があるため、注意が必要です。
慰謝料請求権の消滅時効については下記の記事でも詳しく解説していますので、ご参考ください。

関連ページ
不倫の消滅時効(3年/20年)とは?慰謝料請求の期限と時効を止める方法

まとめ

まとめ

内縁・事実婚であっても、パートナーの不貞行為や不当な関係破棄に対しては、法律婚と同様に慰謝料を請求することが可能です。
しかし、請求を成功させるためには「内縁関係にあったこと」と「相手の不法行為」の両方を客観的な証拠で証明することが不可欠です
慰謝料の問題に直面した際は、一人で抱え込まずに専門家である弁護士に相談することが解決への第一歩です。

▶ パートナーの不倫に悩んでいる方へ

慰謝料を請求できるのか、不倫相手にも責任を問えるのか、証拠は足りているのかなど、早い段階で見通しを整理することが重要です。
ご自身の状況でどのような請求が可能かは事案によって異なるため、一度弁護士に相談し、具体的な見通しを確認することをおすすめします。

関連ページ
不倫慰謝料を請求したい

監修者 弁護士法人キャストグローバル

離婚部弁護士

離婚に関する記事は、当事務所の弁護士や専門スタッフが監修しています。
離婚・男女問題で不安や悩みを抱えながら、一歩を踏み出そうとしている方も多いのではないでしょうか。

私たちは、これまで数多くの離婚・男女問題の解決をサポートしてきました。
法律のことはもちろん、心に寄り添いながら、「相談してよかった」と思っていただける対応を心がけています。
この記事を通じて、少しでも安心していただける情報をお届けできれば嬉しく思います。

関連ページ