高次脳機能障害とはどのようなものか

高次脳機能障害とは、ケガや病気が原因で脳の高次機能に障害が生じることを指します。
代表的な症状は、以下のようなものです。

  • 記憶障害(何度も同じことを質問する、新しいことが覚えられないなど)
  • 注意障害(ミスが増える、注意力が散漫になるなど)
  • 遂行機能障害(指示をもらわないとどうしたらよいかわからない、段取りが考えられないなど)
  • 社会的行動障害(興奮して暴力をふるってしまう、無気力になるなど)

交通事故後にこうした症状が発現した場合は高次脳機能障害を負っている可能性があります。
被害者本人に症状の自覚がない場合も多いため、家族など周りの人が「最近何かおかしい」と思ったら、まずは医師に相談してみましょう

高次脳機能障害の原因

高次脳機能障害はケガや病気が原因で発症します。
もちろん、交通事故による脳外傷もその原因となりえます。脳外傷の種類は大きく分けて次の5通りです。

びまん性軸索損傷

外から強い回転力がかかり、脳がねじれて軸索が損傷してしまった状態。

急性硬膜外血腫

脳を守っている硬膜の外側、頭蓋骨の内側に血腫ができて脳細胞が破壊された状態。

急性硬膜下血腫

硬膜の内側、脳の表面に血腫ができて脳細胞が破壊された状態。

脳内出血

脳の血管が破れて出血した状態。血液の塊ができて脳を圧迫してしまいます。

脳挫傷

脳が打撲を受けた状態。

高次脳機能障害と認知症の違い

高次脳機能障害は認知機能の障害であるため、認知症と混同されがちです。
では、この2つはどう違うのでしょうか。

一般的に、交通事故の後遺症を語る文脈での「高次脳機能障害」には進行性の障害は含まれません。
一方、認知症はそのスピードは様々であるものの、だんだんと症状が進行するものです。

つまり、症状が進行しないものが高次脳機能障害(回復することもある)で、症状が進行するものが「認知症」と思っておけば良いということです。

後遺障害等級を獲得するのが難しい

このように、日常生活に重大な支障を生じる高次脳機能障害ですが、その後遺障害等級認定を獲得するのは容易ではありません。

後遺障害等級認定を勝ち得るためには、各等級ごとの認定基準を満たすことももちろん必要です。
しかしその前に、そもそも高次脳機能障害を負ったことを証明するための基準も満たさなければならないのです。

高次脳機能障害があることを証明する基準は以下①〜⑤のいずれかに当たることです。

  1. ①初診時に頭部外傷の診断があり、頭部外傷後の意識障害(半昏睡~昏睡で開眼・応答しない状態)が少なくとも6時間以上、もしくは、健忘症あるいは軽度意識障害が少なくとも1週間以上続いたこと
  2. ②経過の診断書または後遺障害診断書において、高次脳機能障害、脳挫傷(後遺症)、びまん性軸索損傷、びまん性脳損傷等の診断がなされていること
  3. ③経過の診断書または後遺障害診断書において、高次脳機能障害を示唆する具体的な症状(記憶障害、判断力低下、注意力低下、性格変化、攻撃性、暴言・暴力、幼稚性、被害妄想、意欲低下など)があること、あるいは失調性歩行(ふらふらしてぎこちない歩行)、痙性片麻痺(股関節を中心に伸ばした脚で円を描くように歩くこと)など高次脳機能障害に伴いやすい神経徴候が認められること、さらには知能検査など各種神経心理学的検査が施行されていること
  4. ④頭部画像上、初診時の脳外傷が明らかで、少なくとも3ヶ月以内に脳室拡大・脳萎縮が確認されること
  5. ⑤その他、脳外傷による高次脳機能障害が疑われる症例

画像で脳外傷が明らかに判ること、または医師の診断書に高次脳機能障害を示すような症状がある等と記載されていることが後遺障害等級認定の大前提になっているということです。

そして後遺障害等級認定されるためには、以上の基準を満たした上で各等級の基準を満たさなければなりません。
各等級の基準については次の項目を参照してください。

高次脳機能障害の後遺障害等級

高次脳機能障害を理由に認められる後遺障害等級とその基準は以下のとおりです。

1級1号

身体機能は残っているが、高度の痴呆があるために、生活維持に必要な身の回りの動作に全面的な介護が必要。

2級1号

著しい判断力の低下や情動の不安定などがあり、1人で外出することができず、日常の生活範囲が自宅内に限定されている。
身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことができても、 生命維持に必要な身辺動作に家族の声掛けや看視を欠かすことができない。

3級3号

自宅周辺を一人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声掛けや介助なしでも日常の動作を行える。
しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難である。

5級2号

業務内容を単純なくり返し作業などに限定すれば一般就労も可能。
ただし新しい作業を学習できない、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。
このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には職場の理解と援助を欠かすことができない。

7級4号

一般就労は維持できるものの、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどの問題があり、一般人と同等の作業を行うことができない。

9級10号

一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続能力などに問題がある。

各人の症状が上のどの等級に当たるのか、もしくは当たらないのかを判断するのはとても困難なことです。
後遺障害等級認定の結果に納得がいかない方やこれから申請をしようとお考えの方はぜひ一度、当事務所までご相談ください。

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