離婚の原因について、違法性のある行為があった場合は、相手方の元配偶者に離婚に伴い慰謝料を払う義務を負います。

しかし、適切な慰謝料の額は、不貞については一応相場として100万円~300万円であるとは言われているものの個別のケースにおける具体的事情に応じて異なりますから一概に相手方配偶者の要求額が適正額とは言い切れません

また、慰謝料の適正額は明確でも、実際にそれを払える余裕のない場合や一括での支払は難しいこともあるでしょう。そのような場合、慰謝料を払う側としては、どのように対処すればよいのでしょうか。

相手の要求する額の慰謝料を払えないときは減額交渉する

離婚慰謝料の問題について、当事者同士、納得の行かないケースというのは多々あります。そのときには、いきなり裁判を起こすつもりでない限り、まずは、話し合って、どこかで折り合いを付けるしかありません。支払う側からすれば、相手の要求する慰謝料の額について減額交渉等をするのです。

離婚慰謝料の減額交渉のポイント

対立点を明確にする!

離婚慰謝料に限った話ではありませんが、ある問題を解決するために交渉する場合には、まずはお互いに相手の言い分は聞いて対立点を明確にしておくことが肝要です。

仮に、離婚慰謝料300万円を一括請求された場合は、

  • そもそも離婚の原因について一方的に責任はないから慰謝料を払う義務はないと考えるのであれば、対立点は、離婚慰謝料の支払義務の有無になる
  • 謝料の支払義務は認めるが、300万円は高すぎると考えているのであれば、対立点は、慰謝料の適正額になる
  • 慰謝料300万円の支払義務は認めるものの一括では払えないのであれば、対立点は、慰謝料の支払方法になる。

このように一口に離婚慰謝料の問題と言っても具体的な対立点は、双方の意向や状況に応じて異なってくるのです。交渉を冷静かつ合理的に進めるための第1歩は対立点を明確にすることです。

交渉の原則は相手を説得すること

離婚慰謝料の交渉は、離婚慰謝料の問題についての話し合いによる解決、すなわち和解を目指して行われます。和解は、お互いの譲歩による解決ですから交渉は、原則、相手を説得するためのものです。

そして、人間の納得は、感情と理性(利害得失の判断)の2つの側面から生まれます。相手の感情を全く無視して交渉すると相手にとって合理的な解決案でも受け入れてくれないことがあるのは、そのためです。

解決のために譲歩できる上限を設定しておく

最後に、交渉をスムーズに進めるために大切なのは、相手の要求に対して譲歩できる範囲を事前に設定しておくことです。たとえば、慰謝料300万円は高額に過ぎる場合、100万円の支払による解決を望むものの最悪、150万円の支払であれば応じて良いという感じです。

これを事前に決めておかないと相手の要求に引きずられる形で交渉を進めることになり、後悔することになるパターンが多いのです。

分割支払の途中において払えなくなった場合でも減額交渉する!

離婚の際、慰謝料の分割支払について合意したものの失業や転職などにより毎月の分割金の支払の難しくなった場合には、事情を伝えて減額交渉しましょう。

もちろん、相手からあなたの事情など知らないから約束は守れと言われればそれまでですから、できれば、最初の合意の段階において事情の変更による慰謝料の分割金の額に関する再交渉の余地を残しておくべきでしょう。

離婚の慰謝料は相手と合意できれば分割支払できる

法律的には慰謝料の支払義務は一括

法律上、離婚慰謝料の支払義務は、不法行為を理由とする損害賠償義務であり、交通事故の場合と同様、その支払方法は一括です。ですから、離婚慰謝料を請求する裁判において、判決は慰謝料〇〇円の一括支払の判決の形になります。

現実的には慰謝料の一括支払は困難であることが多い

しかし、現実問題として、貯金を含めた資産の乏しい場合には、100万円単位の慰謝料を一括支払するのは難しいことが多いでしょう。そこで、そうした現実を踏まえて、相手方と交渉することにより、慰謝料の分割支払に納得してもらい和解することは可能です。

慰謝料の分割支払の場合の注意点

離婚慰謝料を分割支払する場合の注意点として、分割金の支払を約束どおり払わなかった場合の取り扱いです。

特に何も決めなければ、それはそれで良いのですが、たとえば分割金の支払を怠れば、その時点での残金を一括支払するとの約束をしている場合や遅れた分だけ追加の支払を約束している場合もありますから注意しましょう。

放置はNG!最終的には強制執行のリスク!

離婚慰謝料を請求されたとき、NGなのは放置することです。相手方は、交渉の余地なしと考えて慰謝料請求の裁判を起こし、それでも無視されれば強制執行に踏み切り、あなたの所有する不動産や自動車、貯金、給料などを差し押さえることもあり得ます

仮に、相手の言いがかりのような請求でも裁判を起こされたら必ず対応しましょう。裁判に出席しないと相手の言い分を認めたことになってしまうからです。

相手の要求に納得できない場合には弁護士に相談を

離婚慰謝料を請求された場合の対処方法をまとめると以下のようになります。

  • 放置はNG 最悪強制執行される
  • 相手の請求の根拠や金額、現実的な支払能力を踏まえた交渉する

また、交渉のポイントは以下の3点です

  • 対立点を明確にする
  • 相手の感情と理性(利害得失)の両面を踏まえて交渉する
  • 自分の譲歩できる範囲を事前に決めておく
  • 慰謝料の分割支払は相手と合意できる限り可能だが判決では認められない

このように、慰謝料の減額交渉は、法律の知識はもとより交渉の技術を必要としますから、できれば、第三者として味方になってサポートしてくれる弁護士を代理人に付けるようにすべきでしょう。そうすれば、意外にスムーズに交渉は進み、慰謝料問題から早期に解放されることが多いのです。まずは、離婚問題に精通した弁護士を探して相談してみましょう。

当事務所では慰謝料の減額交渉に卓越した弁護士が在籍しております。お客様の情況をお伺いし、適切な減額交渉を行うことが可能です。まずは安心して当事務所までご相談ください。

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