親権・養育費とは?離婚時の決め方や相場、共同親権を弁護士が解説

監修者 弁護士法人キャストグローバル
離婚部弁護士
目次
目次を表示離婚を考えたときに、子どもがいる場合は、「親権はどうなるのか」「養育費はいくら支払うのか」といった不安を抱く方が多いのではないでしょうか。
親権や養育費は、離婚後の生活や子どもの将来に大きく影響する重要な問題です。
本記事では、離婚時に整理しておきたい親権・養育費の基本から、近年注目されている共同親権の考え方、相場や決め方のポイントまでを、弁護士の視点でわかりやすく解説します。
1.親権とは?離婚時に必ず決める重要なポイント
親権とは、未成年の子どもの利益のために、親権者が子どもを監護・養育し、子どもの財産を管理する権利と義務をいいます。
離婚する場合、夫婦のどちらか一方を親権者として定めなければならず、親権を決めずに離婚することはできません(民法766条1項、771条)。
親権は、単に「子どもと一緒に暮らす権利」ではありません。子どもの生活・教育・将来を左右する極めて重要なものであり、強い責任を伴います。
親権者となった親は、子どもの生活全般について責任を負い、進学や医療など重要な判断を行います。
そのため、親権は単なる名義的な問題ではなく、子どもの生活基盤そのものに関わる重要事項です。
1)親権で決まること
親権には主に身上監護権、財産管理権の2つがあり、親権者は、次のような事項について決定権を持ちます。
- 子どもの居住地(誰と暮らすか)
- 子どもへのしつけ
- 医療行為への同意
- 財産管理や契約行為の代理
これらは、子どもの日常生活から将来設計までを左右する重要な判断であり、親権には重い責任が伴います。
2)離婚時に親権を決めなければならない理由
離婚後も未成年の子どもを安定して保護するため、法律上、親権者を明確に定めることが義務付けられています。
親権者が定まらない状態では、子どもの生活や教育、医療などに関する重要な判断を誰が行うのか不明確となり、子どもの利益が損なわれるおそれがあります。
また、親権者は、子どもの監護・養育を行うだけでなく、財産管理や各種契約、学校や医療機関での手続きなど、日常生活において法的な代理人としての役割を担います。
そのため、離婚時に親権者を定めておかないと、転校や進学、パスポートの取得、医療行為への同意などが円滑に行えなくなる可能性があります。
このような混乱を防ぎ、子どもが離婚後も安心して生活できる環境を整えるために、離婚時には必ず親権者を決める必要があるのです。
3)親権は「権利」ではなく「責任」
親権は「取り合うもの」「有利になるためのカード」と誤解されがちですが、本質は子どもを守り育てる責任です。
感情的な対立や離婚条件の一部としてみるものではありません。
将来にわたり子どもの生活を支える覚悟があるか、現実的な視点で慎重に考える必要があります。
2.共同親権とは|2026年4月1日施行の法改正と今後の影響
日本では、離婚後の親権について大きな転換点を迎えています。
共同親権制度は、2026年4月1日から施行されることが決定しており、今後は離婚後の親権の在り方が大きく変わります。
海外では広く採用されている制度ですが、これまでの日本では、離婚後は父母のいずれか一方のみが親権を持つ「単独親権」が原則でした。
しかし法改正により、家庭の状況に応じて「共同親権」か「単独親権」を選択できる制度へと移行します。
もっとも、共同親権はすべての家庭にとって望ましい制度ではありません。
制度の内容を正しく理解し、自身と子どもの状況に合った選択をすることが重要です。
1)共同親権とは何か(単独親権との違い)
共同親権とは、離婚後も父母双方が共同で親権を持ち、子どもに関する重要な決定を行う制度です。
一方で、日常の監護や教育に関する行為については、父母の一方が単独で親権を行使することができます。
また、子の利益のために急迫の事情がある場合(例:緊急の手術や虐待からの避難など)は、単独で親権を行使することも認められています。
一方、単独親権では、これらの判断を親権者一人で行うことができます。
両者の違いは、「協力関係が前提かどうか」 にあります。
2)2026年の法改正で何が変わるのか
2026年4月1日から施行される法改正により、離婚後の親権の取り扱いが見直されます。
これまで日本では、離婚後は父母のいずれか一方のみが親権を持つ「単独親権」が原則でした。
法改正後は、離婚時に「共同親権」または「単独親権」のいずれかを選択できる制度へと変更されます。
どちらを選択するかは、
- 原則として、父母の合意
- 父母が合意できない場合は家庭裁判所の判断
によって決められます。
この改正は、共同親権を一律に導入するものではなく、家庭ごとの事情に応じた親権の在り方を選択できるようにする制度変更です。
3)共同親権が認められにくいケース
共同親権は、父母が協力して子どもを養育できる関係にあることが前提となります。
そのため、次のような事情がある場合には、共同親権は認められにくい傾向があります。
- 配偶者からDVやモラハラを受けている
- 離婚後も相手からの支配や干渉が想定される
- 冷静な話し合いが成立しない
- 子どもが相手親に強い恐怖や拒否感を示している
これらの事情がある場合、共同親権がかえって子どもの生活や精神的安定を損なうおそれがあると判断されます。
特にDVやモラハラが関係するケースでは、 離婚後も元配偶者との合意が必要になること自体が、子どもや監護親にとって大きな負担となるため、単独親権が選択されることがあります。
4)共同親権のメリット・デメリット
共同親権を選択した場合、離婚後の生活や子育ての在り方に大きな影響があります。
制度としてのメリットだけでなく、現実的な負担やリスクも理解しておく必要があります。
共同親権は、父母が協力できる関係にあることが前提です。
関係性によっては、子どもにとって不安定な環境になる可能性もあります。
メリット
- 離婚後も両親が子どもに関わり続けることができる
- 子どもが「片方の親を失った」と感じにくい
- 進学や医療など重要な判断を両親で共有できる
デメリット
- 重要な決定に父母双方の合意が必要となり、話し合いが難航することがある
- 離婚後も元配偶者との関係が続き、精神的負担になる場合がある
- モラハラ傾向がある場合、支配や干渉が続くリスクがある
5)共同親権を、どう判断すればよいのか
共同親権を選ぶかどうかは、次の視点から冷静に考える必要があります。
- 離婚後も相手と対等な立場で話し合いができるか
- 子どもに関する重要な決定を共同で行える関係か
- 相手からの精神的圧力や支配が残らないか
- 子どもが安心して生活できる環境を守れるか
これらに少しでも不安がある場合、 「子どものために共同親権を選ぶ」ことが、逆に子どもを苦しめる結果になることもあるため、注意が必要です。
6)共同親権を選ぶ前にすべきこと
共同親権を検討する場合は、次の6点を必ず整理しておきましょう。
- どの事項を共同で決定するのか
- 連絡手段
- 合意事項の変更
- どちらを監護権者とするか
- 面会交流の具体的取り決め
- 養育費の取り決め
これらを文書で明確にしないまま共同親権を選ぶと、 離婚後に新たな紛争を生む原因になります。
7)共同親権か単独親権か迷ったら弁護士へ相談を
共同親権は、一度決めると簡単に変更できるものではありません。
特にDVやモラハラが関係する離婚では、「子どものために我慢する」という選択が、長期的には子どもの安心を損なうケースも少なくありません。
2026年4月の施行を見据え、下記2点を専門家の視点で整理することが、後悔のない判断につながります。
- 単独親権を主張すべきか
- 共同親権が本当に適切か
3.離婚時の親権はどう決まる?判断基準と決め方
親権については夫婦間で合意して決定します。
夫婦間で合意できない場合、最終的には家庭裁判所が判断します。 裁判所が重視するのは、父母の優劣ではなく、「どちらが子どもの利益に資するか」という視点です。
主に以下の要素を総合的に考慮して判断されます。
1)これまでの監護実績
これまで日常的に子どもの世話をしてきたのは誰か、育児・教育・生活管理を主に担ってきた親が重視されます。 一時的な関与ではなく、継続的な監護実績が重要です。
2)生活環境の継続性
離婚によって子どもの生活環境が大きく変わらないかも重要な判断材料です。
- 現在通っている学校を継続できるか
- 生活リズムや人間関係が維持できるか
環境変化による子どもの負担が最小限であることが重視されます。
3)親の養育能力と安定性
経済力のみで判断されるわけではなく、心身の健康状態や育児への理解、安定した生活基盤があるかが総合的に評価されます。
4)子どもの意思(年齢・成熟度に応じて)
子どもが一定の年齢に達している場合、その意思が尊重されることもあります。 ただし、必ずしも子どもの希望だけで決まるわけではありません。
5)不倫・DV・モラハラは親権に影響するのか
不倫や夫婦間トラブルがあったからといって、直ちに親権が否定されるわけではありません。
ただし、次の観点から、親権判断に不利に働く可能性はあります。 特にDVやモラハラが子どもに直接・間接的な影響を与えている場合は、重要な判断要素となります。
- 子どもに精神的・身体的な悪影響が及んでいないか
- 安心して生活できる養育環境が確保されているか
4.養育費とは?離婚後の子どもの生活を支える仕組み
養育費は、離婚後に子どもが安定した生活を送るために必要な費用であり、衣食住だけでなく、教育費・医療費なども含まれます。
重要なのは、養育費は「元配偶者のためのお金」ではなく、子どもの生活を守るための権利であるという点です。
親権を持たない親であっても、子どもに対する扶養義務はなくなりません。
そのため「離婚したのだから支払わなくてよい」「会えていないから払わない」ということは、法律上認められていません。
1)養育費を払わなくていいケースはある?
養育費は、原則として離婚後も子どもに対して負う扶養義務に基づくものです。
そのため、「離婚したから」「親権がないから」という理由で、養育費の支払い義務がなくなることはありません。
もっとも、例外的に養育費の支払いが不要、または減額されるケースは存在します。
例えば、次のような事情がある場合です。
- 子どもがすでに経済的に自立している場合
- 受け取る側の親が再婚し、再婚相手が子どもを養子縁組している場合
- 支払う側が生活保護以下の収入の場合
- 支払う側が困窮し、支払いが困難な場合
- 養育費が消滅時効にかかった場合
ただし、これらに該当するかどうかは個別の事情によって判断されます。
自己判断で支払いを止めることは、後にトラブルへ発展するおそれがあるため注意が必要です。
2)養育費を支払わないとどうなる?
養育費を取り決めたにもかかわらず支払いをしない場合、法的な手続きを取られる可能性があります。
例えば、公正証書や調停調書などの取り決めがある場合には、裁判を経ることなく、給与や預貯金を差し押さえられることがあります。
これを「強制執行」といい、勤務先に養育費の不払いが知られてしまう場合もあります。
また、養育費の不払いは、子どもの生活や教育に直接影響を与える問題です。
金銭的な問題にとどまらず、親子関係や将来の信頼関係に悪影響を及ぼすおそれもあります。
支払いが難しくなった場合には放置するのではなく、減額の協議や調停を申し立てるなど、正式な手続きを取ることが重要です。
5.養育費の相場はいくら?算定表とシミュレーションの考え方
離婚後の養育費について最も多い疑問が「実際にいくら支払うのか」という点です。
養育費の金額は、父母それぞれの収入や子どもの人数・年齢などをもとに算定されます。
金額の目安としては、家庭裁判所が公表している「養育費算定表」が一般的な目安として広く参考にされています。
平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について | 裁判所
算定表やシミュレーションは便利なツールですが、あくまで目安であり、個別事情によって増減することがあります。
教育費や医療費など特別な事情がある場合には、柔軟な調整が必要です。
6.養育費はいつまで支払う?再婚した場合はどうなる?
養育費は、原則として子どもが成年に達するまで支払われますが、大学進学などにより支払い期間が延長されるケースもあります。
また、支払う側または受け取る側が再婚した場合でも、直ちに養育費の支払い義務がなくなるわけではありません。
養子縁組をして、再婚した相手が第1次扶養義務者となることが必要です。
状況の変化があった場合は、協議や調停により見直しを検討することになります。
1)成人年齢18歳への引き下げで養育費はどう変わる?
2022年4月の民法改正により、成人年齢は20歳から18歳に引き下げられました。
しかし、この改正によって養育費の支払いが自動的に18歳で終了するわけではありません。
なぜなら、養育の支払いの終期が成人になるまでと決まっているわけではないからです。
養育費の支払い期間は次により決定します。
- 離婚時の取り決め内容
- 調停や審判で定められた条件
子どもが高校を卒業するまで、または20歳に達するまでと定められるケースが多く、大学進学を前提に「卒業まで」とする合意がなされることもあります。
そのため、「成人になったから養育費は不要」と自己判断で支払いを止めることは、トラブルの原因となるため注意が必要です。
2)支払う側・受け取る側が再婚した場合の養育費
離婚後に父母のいずれかが再婚しても、原則として養育費の支払い義務が直ちになくなることはありません。
支払う側が再婚した場合でも、前の婚姻で生まれた子どもに対する扶養義務は継続します。
一方、受け取る側が再婚した場合も、再婚したことだけを理由に養育費が当然に減額・終了するわけではありません。
もっとも、再婚後の収入状況や生活環境の変化によっては、養育費の金額を見直す余地が生じる場合があります。
この場合は、協議や調停を通じて、正式な手続きを取ることが重要です。
また、再婚相手と子どもが養子縁組をした場合には、再婚相手が、第1次扶養義務者となるため、養育費を支払う必要がなくなる場合があります。
3)再婚して新たに子どもが生まれた場合の影響
再婚後に新たな子どもが生まれた場合、支払う側の扶養すべき家族が増えることになります。
このような事情の変化は、養育費の減額を検討する理由として考慮されることがあります。
ただし、「子どもが増えたから払えない」という理由だけで、一方的に支払いを減らしたり止めたりすることは認められません。
家庭裁判所では、次の点を踏まえて判断します。
- 前婚で生まれた子どもの生活状況
- 再婚後の家庭における生活実態
状況が変わった場合には、早めに弁護士へ相談し、適切な見直し方法を検討することが重要です。
7.親権・養育費をめぐるトラブルを防ぐために
親権や養育費は、離婚時にしっかり取り決めておかないと、後々大きなトラブルに発展することがあります。
口約束だけで済ませるのではなく、書面として残すことが重要です。
特に養育費については、公正証書を作成しておくことで、支払いが滞った場合の強制執行が可能となり、リスクを軽減できます。
1)公正証書とは何か
公正証書とは、公証役場で公証人が作成する公的な文書のことです。
離婚時に取り決めた養育費や面会交流の内容を、法的な効力を持つ書面として残すことができます。
当事者同士の合意内容を第三者である公証人が確認したうえで作成されるため、後から「そんな約束はしていない」と争いになるリスクを大きく減らすことができます。
2)なぜ養育費は公正証書にしておくべきなのか
養育費の取り決めを口約束や私的な書面だけで済ませてしまうと、支払いが滞った場合に、改めて調停や裁判を起こさなければなりません。
一方、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しておけば、養育費の不払いが生じた際に、裁判を経ることなく給与や預貯金を差し押さえる手続き(強制執行)が可能になります。
この点は、将来のトラブルを防ぐ上で非常に大きな違いです。
3)「強制執行認諾文言」があるかが重要
公正証書によって強制執行を行うためには、「支払いを怠った場合には、直ちに強制執行を受けても異議はありません」といった内容の「強制執行認諾文言」を入れておく必要があります。
この文言が入っていない場合、公正証書を作成していても、改めて裁判所で手続きを行う必要が生じるため、注意が必要です。
4)公正証書に記載しておくべき具体的な内容
養育費について公正証書を作成する場合には、次の4点を具体的に記載しておくことが重要です。
- 毎月の養育費の金額
- 支払日と支払方法(振込先など)
- 支払いの終期(いつまで支払うか)
- 特別費用(進学費用・医療費など)の取り扱い
内容が曖昧だと、後に解釈をめぐるトラブルにつながるため、できるだけ具体的に定めておくことが望ましいです。
5)公正証書を作成するタイミングと注意点
公正証書は、離婚届を提出する前後のどちらでも作成できますが、離婚前に取り決めを済ませておく方が、話し合いがスムーズに進むケースが多くあります。
また、公証人は、法律相談を行う立場ではないため、取り決め内容が不利になっていないか、実情に合った内容になっているかを検討してくれません。公正証書の内容については、事前に弁護士に確認することが重要です。
6)公正証書があっても安心できないケース
公正証書は非常に有効な手段ですが、次のような場合には注意が必要です。
- 相手の収入や勤務先が把握できていない
- 支払能力が著しく低い
- 海外に居住する可能性がある
このようなケースでは、公正証書を作成するだけでなく、未払いのリスクに備えた対策を併せて検討することが重要です。
具体的には下記の対策を行うことで、離婚後のトラブルを防ぎやすくなります。
- 勤務先や収入状況を事前に把握しておく
- 振込口座を固定し、支払い履歴を残す
- 支払いが滞った場合の連絡方法や対応をあらかじめ決めておく
8.親権・養育費で悩んだら弁護士に相談を
親権や養育費は、感情的な対立が生じやすく、当事者同士で冷静に話し合うことが難しい問題です。
誤った判断をしてしまうと、離婚後も長期間にわたり不安やトラブルを抱えることになりかねません。
弁護士に相談することで、法的な観点から状況を整理し、子どもの将来を見据えた適切な解決策を検討することができます。
キャストグローバルでは、離婚専門部があり、養育費・親権を含む離婚問題に多くの実績を持つ弁護士が、あなたの気持ちに寄り添いながら対応します。
一人で悩まず、不安を感じたらまずはお気軽にご相談ください。
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