夫婦間での離婚の話し合いの末、協議離婚することになれば、離婚届を作成して、これを役所に提出することになります。

実際に離婚届を見ると分かりますが、その記載すべき内容は、結構たくさんあります。また、どのように記載すればよいか迷ってしまうようなところもあります。記載を間違えてしまったときは、どのように修正すればよいのでしょう。さらには、離婚届を提出するとき、ほかに提出しなければならない書類はあるのでしょうか

今回は、協議離婚の最終場面である離婚届の作成・提出に関する知識・ノウハウについて解説します。

離婚届を提出する前に準備すべきモノ・コト

離婚届は最寄りの市区町村役場で受け取ることができます。
また、全国共通なので現住所関係なくどこの書式でも提出することが可能です。

離婚届は単に離婚すること以外に多くの事項を記載するよう求められています。その中でも特に大切なのは、①未成年の子の親権者②婚姻前の氏にもどる者の本籍の2つです。

未成年の子のいるときは親権者を指定しなければ離婚できない!

離婚する夫婦の間に未成年の子がいる場合には、離婚後の親権者を決めなければ離婚することはできません。より具体的にいえば、親権者の記載欄を空欄にした離婚届は、役所において受理してもらえないのです。

親権者になることの意味は、未成年の子の利益を保護するため代理人として、その子の財産を管理することや契約などの法律行為を代理する権限と責任を持つことです。通常、親権者は監護権者になりますから子を養育していく責任も伴います。

親の離婚について子どもに罪はないですから、子の利益を最優先にして慎重に親権者を決めるようにしましょう。

離婚後に婚姻中の姓を継続使用するには特別の手続を必要とする!

日本の婚姻制度(戸籍の制度)では、夫婦同姓ですから基本的に、夫婦の一方は、婚姻時に婚姻前の姓を変更します(厳密には同じ姓の人同士の結婚でも戸籍上は姓を変更しています)。

そして、離婚した場合、原則、婚姻により姓を変更した者は、婚姻前の姓に戻ることになっており、特に、婚姻中の姓を継続して使用したい場合には、特別の手続を経る必要があります。この手続は、離婚日より3ヶ月以内に行う必要がありますから離婚の際には、この点について、あらかじめ決めておくと良いでしょう。

また、原則どおり、婚姻前の姓に戻る場合でも離婚後に婚姻前の戸籍に戻る場合と新たに戸籍を作る場合を選択できますのでその点について、よく考えておく必要があるでしょう。

離婚届の書き方・記入例

各ケースに応じた離婚届の記入例

それでは、実際の離婚届の記入例について見ていきましょう。
まずは、離婚後、婚姻前の姓に戻り、元の戸籍に入るケースの記入例は、以下のようになります。
通常離婚届サンプルPDF|参照元:札幌市HPより
これがオーソドックスな離婚届の記入例になります。

次に、離婚後、婚姻前の姓には戻るものの、元の戸籍には入らず、新たに戸籍を作るケースの記入例は、以下のようになります。
新たな戸籍を作る離婚届サンプルPDF|参照元:札幌市HPより
この場合には、新しい戸籍を作る際の本籍地を記載しなければなりません。ちなみに、本籍地は、基本的にどこでも構いません。

最後に、離婚後、婚姻中の姓を継続して使用するケースの記入例は以下のようになります。
婚姻中の姓を使用する離婚届サンプルPDF|参照元:札幌市HPより
ここでは、「婚姻前の氏にもどる者の本籍地」の記載欄は空欄にします。

そして、離婚日から3ヶ月以内に以下の記載例にならい、「離婚の際に称していた氏を称する届」を記載して提出することになります。
離婚の際に称していた氏を称する届サンプルPDF|参照元:札幌市HPより

押印は認印で可

離婚届の作成の際に使用する印鑑は、認印でもかまいませんが、シャチハタ印はNGですから注意しましょう。見た目には判断付かない場合が多いので、実際はシャチハタ印でも受理される可能性はあります。

訂正する際の方法

離婚届を記入している際、誤った記載をしてしまった場合には、間違えた部分に二重線を引いて正しい記載を欄内に記載すれば足ります。訂正印については、基本的には、親権者の指定などの重要事項の記載の訂正以外の場合は欄外の捨て印を押せば足りますが、全ての訂正箇所に訂正印を押すことでも構いません。

修正液・修正テープの使用は認められませんから注意しましょう。また、消せるボールペンの使用は、そもそも認められませんので消しゴムを使って訂正することもダメです。

証人の欄を埋めなれないときはどうすれば?

協議離婚の際には、離婚についての証人2名用意して、離婚届の所定欄に証人の署名、生年月日、住所、本籍を記載の上、押印してもらう必要があります。これは、離婚届の偽造防止と安易に離婚することを防止するための制度と言われており、証人は夫婦以外の成人であれば誰でもよいとされ、証人になったことにより何か責任に問われることもありません。

とはいえ、離婚の証人役というのは、あまり気持ちの良いものではありませんから特に友達に離婚は知られたくない、家族とは疎遠になっているなどの理由から証人を用意することのできないことがあります。そのときは、民間の証人代行サービスがあるようですから、適宜、利用しましょう。(有料となります)

離婚届を提出する際に必要となる書類

離婚届を提出する際に必要になる書類は、①離婚届、②身分証明書、③戸籍謄本または戸籍の全部項証明書(本籍地以外の役所に提出する場合に限る。)です。

また、離婚後、婚姻中の姓を継続して使用する場合には、離婚届の提出と同時に「離婚の際に称していた氏を称する届」を一緒に提出しても構いません。

離婚届の受理されないケース

必要的記載事項の漏れ

離婚届を提出した際、役所の担当者は、記載事項に漏れのないことをチェックします。細かな記載漏れであればその場で訂正して受理してもらえることもありますが、たとえば、親権者の指定の欄のように、夫婦間の協議により決めておかなければならない箇所に記載漏れのあるような場合には、離婚届は受理されません。

離婚届不受理申出のなされている場合

また、形式的には問題のない離婚届でも一方の配偶者から離婚届の不受理申出のなされている場合には、申出の当の本人により離婚届を提出する場合を除き、離婚届は受理されません。

その場合には、離婚届不受理申出を取り下げる(不受理申出の効果は無期限なので取り下げない限りは有効のままです。)、あるいは、不受理の申出をした本人により離婚届を提出することにより受理されることになります。

離婚届を提出する際のトラブルにも要注意

離婚届の作成・提出における注意点は以下のとおりです。

  • 親権者、離婚後の姓・本籍などの必要事項を決めておく
  • 離婚届を役所の窓口・HPより入手する
  • 消すことのできないボールペンで正確に記載する
  • 訂正は二重線と訂正印
  • 証人2名をどうしても用意できなときは民間の代行サービスの利用を検討
  • 離婚届不受理申出をしているときは取り下げ又は申出した本人による提出により対応

協議離婚において、よく起きる問題は、離婚自体には合意できていても親権で揉めているために離婚届を出せないというケースです。そんなときには、弁護士に依頼することにより、親権を含めた子どもの問題を適切に解決できることがあります。悩む前に是非一度当事務所までご相談ください。

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