交通事故に2回遭ってしまったら

交通事故被害に遭い、車両が大きく損傷して、全損となった場合、加害者に対して車両損害として、車両本体の時価額及び買い替えに係る様々な諸費用を請求できます。
そして、全損とは、修理不可能な損傷を受けた場合と経済的全損があります。経済的全損とは、交通事故をした車両の中古価格よりも、修理価格が上回ることをいい、経済的に修理よりも同一条件の車両を再調達が合理的となります。損害賠償において、不合理な選択について、より賠償額が上がったとしても、それは、そのような不合理な選択をした本人が負担するものであるということになります。
全損となり買い替えるとなると、修理時には発生しない費用が発生します。例えば、消費税、車庫証明費用、納車費用などです。

複数の交通事故に巻き込まれる3つのパターン

複数の交通事故に巻き込まれるパターンには、大きく分けて以下の3つが考えられます。

  • 1回目の交通事故に遭って、治療を終えた後で、再度交通事故に遭った場合
  • 1回目の交通事故に遭って、治療をしていたところ、治療が終了しない間に新たに交通事故に遭った場合
  • ほとんど同時に2つの交通事故にあった場合、衝突の衝撃であらぬ方向へ飛ばされ、さらに別の車両と衝突した場合など

交通事故に遭って手続きが終わった後、また交通事故に遭ってしまった場合

交通事故に遭って示談手続きが終わったものの、再度、交通事故に遭ってしまったという相談もあります。
このような場合、一回目の交通事故の治療が終了していますので損害額はこの時点で確定しうる状況にあります。そうすると、二回目が、一回目の交通事故の損害額に影響することはありません。したがいまして、二回目の交通事故の処理と一回目の交通事故の処理は、互いに独立していますので、あまり影響がないことが多いです。
もっとも、一回目の交通事故が二回目の交通事故に影響する場合があり、その場合の処理がやや複雑になってしまいます。
物損では、一回目の交通事故の修理が終了する前に、同じところをぶつかった場合です。
人損では、一回目の交通事故で後遺症が残ったまたは後遺障害が認められた場合において、二回目の交通事故でも同じ場所に怪我を負った場合です。いわゆる既往症があった場合と同じようなことになるのですが、損害計算に争いが生じるために、交渉が難しくなります。

例えば一回目の交通事故で頚椎捻挫、二回目の交通事故でも頚椎捻挫という場合、一回目の交通事故で頚椎捻挫に関する後遺障害14級が認定されていると、二回目の交通事故では頚椎捻挫に関わる後遺障害14級は認定されることはありませんので、より上位の12級が認められないとなると、後遺障害慰謝料及び逸失利益を獲得することは困難になります。

交通事故に遭って治療中にまた交通事故に遭ってしまった場合

交通事故に遭って怪我の治療中に、また交通事故に遭ってしまったという相談が時折あります。また、ほぼ同時に複数の交通事故にあった場合です。玉突き事故のような場合は、一般的に、最後尾に追突した車両に過失が100があり、他の方はみなさんの過失は0%となるため、単純な処理で足ります。しかし、その他の場合は、一般的に後の交通事故の保険会社との対応のみで足りることが多いものの、処理は複雑になりますし、求償をふまえて過失で案分してほしいという保険会社もあったり、場合によっては、2つの保険会社を相手にしなければならないこともあります。こんな時は、どのようにすればいいか分からなくなってしまう方もいらっしゃると思います。

冒頭に例示した2つ目と3つ目のケースのような場合は、互いの交通事故が一つの損害について相互に影響しあっています。したがって、誰がどれだけの責任を負うのかということの判断が困難です。

もっとも、被害者がかかる解決が出来ず賠償が受けられない状況になっては困りますから、被害者保護の観点から、民法には共同不法行為という規定があります。

共同不法行為とは

数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする(民法719条1項)という規定があります。

共同不法行為が成立すると、各加害者が全損害について連帯して責任を負うことになりますので、被害者としては、いずれの加害者に対しても、自分に生じた損害の全額を請求することができます。つまり、お金の払えそうな方、任意保険に加入しその限度額も十分にあり、資力のありそうな方に対して、請求することができます。被害者にとっては非常に便利な制度です。

しかし、現実問題として、各保険会社は、その後の他の加害者に対する求償をみすえて検討せざるを得ないですから、すんなり解決できるとは限らないというところに問題があります。

以上のように、2回以上の交通事故に遭った場合は、一度だけ交通事故に遭ったという場合とは異なる点に注意しなければいけなくなることがあります。上記のような交通事故の場合は、保険会社もある程度経験のある担当者が割り当てていることが多いように思えますが、それでも保険会社の担当者もよく理解していないことが少なくありません。理解不足がさらなる紛争を巻き起こしてしまうこともあります。訴訟となると、一般的な交通事故より長期間かかる傾向があります。
交通事故に2回遭ってしまったという場合、より弁護士に相談する必要性が高いと言えるでしょう。