交通事故で手首の痛みが残る場合はTFCC損傷の可能性がある

TFCC損傷とはどんな症状が出るのか

交通事故で比較的軽度なケガを負うことも多いですが、その中の代表的なものにTFCC損傷があります。
これは簡単に言うと、手首の捻挫の程度の少しひどいもののことです。

TFCC(三角繊維軟骨複合体)という軟骨が損傷し、手首の小指側(手首外側の突起のあたり)に局部的に症状が出るところに特徴があります。
その症状は、押したら痛む、手首をひねったら痛むといった痛みが主です。ひどい場合には患部が腫れたり、手首の可動域が制限されたりといったこともあります。

TFCCはテニスや野球といったスポーツのやりすぎ等によっても損傷することがあるため、交通事故によるケガの中でも比較的身近なものといえるでしょう。

TFCCの検査ではMRIが重要になる

手首の痛みを訴えると、レントゲンを撮られることがあります。
しかし、TFCCは軟骨複合体であるため、骨折と違い、レントゲンによって得られた画像だけでは判別が難しいのです。

TFCCの損傷の有無を判断するのにはMRIを用いるのが効果的で、触診や痛み等の自覚症状の有無と合わせ、診断に用いられます。

痛みを医師に正確に伝えないと見逃される可能性が高い

TFCCは軟骨ですから、当然、外から見えるものではありません。
また、被害者が事故後に痛みを訴えた場合、お医者さんの判断としては、まずはMRIではなくその部位のレントゲンを撮ることが一般的です。

レントゲンを撮って骨には異常がないとわかってもその後しばらく痛みが続く場合に、はじめてMRIを使うということが多いのです。

そのため、交通事故後に手首に痛みを感じる場合は、どんなに些細なものであっても詳細にお医者さんに伝えることが重要となります。
事故の直後から手首の痛み・違和感が継続しているとなれば、MRIを撮ってもらえて、その結果、TFCC損傷の存在が認識される可能性が高まるからです。

また、MRIは軟骨組織の損傷を確認するのに効果的な手段ではありますが、損傷の部位や程度は様々であるため、専門家であってもMRIの画像だけを見て損傷の有無をハッキリ見分けるのは難しいものです。
そうした意味でも、痛みという自覚症状があることをきちんと主張しておくことが、「損傷あり」との診断を得るために重要になってきます。

TFCC損傷の治療方法

TFCCが損傷していることがわかった場合、どのように治療すればよいのでしょうか。
TFCCの治療方法は、一般的なねんざと同様です。できるだけ安静にして、炎症の治癒を待つことに集約されます。

炎症の治癒を促進するには、患部を動かさず安静にすることが重要です。
そのためにはテーピングを用いて手首を固定することが効果的でしょう。
また、炎症の程度がひどい場合には、お医者さんの判断によって鎮痛剤やステロイドが使用されたり、手術が行われたりする場合もあります。

TFCC損傷の後遺障害等級

TFCC損傷の症状が後遺症として残った場合、認められうる後遺障害等級は以下のいずれかになります。

  • 14級(「局部に神経症状を残すもの」)
  • 12級(「局部に頑固な神経症状を残すもの」または「一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの」)

MRIなどの画像によってTFCCが損傷していることが客観的にわかる場合は、12級が認められる傾向にあります。

また、手首関節を動かせる範囲が事故によって狭まってしまったことが認められれば、同じ12級でも「局部に頑固な神経症状を残すもの」(12級13号)ではなく、「一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの」(12級6号)に分類されます。

12級6号も13号も同じ12級なので、自賠責保険から支払われる保険金の限度額は同じです。
しかし、13号の後遺症は10年以内に消えると判断されることが多いのに対し、6号の後遺症は長く続くのが一般的で、一生続くものと判断されることもあります。

そのため、下の後遺障害の逸失利益計算式(要は、自賠責保険からもらえる保険金額の計算式)の「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」の数字が大きくなり、結果、13号の場合よりももらえる保険金額が大きくなるのです。

後遺障害の逸失利益=基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

一方、MRIなどの画像で損傷が確認できなければ、12級13号や6号に認定されることはありません。
ただし、事故の状況や痛み等の自覚症状の有無・程度などを総合考慮し、TFCC損傷が医学的に認められる場合には14級に認定されることがあります。

気をつけなければならないのは、TFCC損傷と交通事故との間に因果関係が認められなければ、何級であれ後遺障害等級は認定されないという点です。
事故から1年も2年も経って初めて被害者が「手首に違和感がある」と言い出したら、そのケガと事故とは関係がないのではないかと疑われてしまっても仕方ありません。
特にTFCC損傷については、スポーツのしすぎや加齢によっても引き起こされるケガなので、事故との因果関係が厳しく判断されるものと思っておきましょう。

上でも述べましたが、痛みが軽微だからといって遠慮せず、事故後のできるだけ早い段階で医師に伝えておくことが大事なのです。

しかし、時間が経ってしまったというだけで諦める必要もありません。
まずは後遺障害等級認定の可能性を知るために、当事務所までご相談ください。

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