遷延性意識障害(植物状態)とは

遷延性意識障害「せんえんせいいしきしょうがい」(植物状態)は、遷延性植物状態と表記される場合もあります。
重度の意識障害の一形態であり、主に頭部外傷や脳卒中などによって引き起こされます。この状態にある患者は、自発的な意識活動が著しく制限されており、外部からの刺激に対する反応がほとんどないか、またはまったくない状態が続きます。一般的には、目を開けているか、閉じているかに関わらず、自己の意識や周囲の状況を認識する能力が失われています。
遷延性意識障害は、医療現場で植物状態とも称され、通常は3か月以上続く意識不明の状態を指します。この状態が長期間続く場合、回復の見込みは非常に限られています。医療技術の進歩により、生命を維持するための支援が可能となりましたが、意識の回復には至らないケースが多く見られます。
この状態に陥った患者の介護には、専門的な医療と介護が必要です。患者のQOL(生活の質)を可能な限り向上させるため、日常生活のすべてにおいて介護者のサポートが求められます。また、患者の健康状態を維持するために、定期的な医療チェックやリハビリテーションが行われます。遷延性意識障害は交通事故などの突然の出来事に起因することが多く、被害者家族にとっては計り知れない心理的、経済的負担が伴います。
このような負担を少しでも和らげるために、損害賠償請求をしっかりとおこない、経済的負担を少しでも軽くしましょう。
交通事故による遷延性意識障害の損害賠償金の内訳

遷延性意識障害は、単なる後遺症の一つではなく、被害者の一生涯にわたる生活支援が必要となる重大な障害です。そのため、損害賠償の対象も多岐にわたります。交通事故による遷延性意識障害の損害賠償請求は、単に経済的な補償を求めるだけではなく、被害者やその家族の生活の質を維持するために重要です。損害賠償金は、被害者の現在と将来の生活に必要な費用をカバーするためのものであり、適切な金額を確保することが求められます。
損害賠償に含まれるもの
- 治療関係に関わる費用
- 付添看護費
- 交通費・付添人交通費
- 将来介護費
- 逸失利益
- 休業損害
- 介護用住居改修費・車両改造費
- 慰謝料(後遺障害慰謝料
- 近親者の慰謝料
- 成年後見申立費用
ご家族がすべてを把握し、過不足なく損害項目を請求するのは容易ではありません。漏れのない請求のためにも、交通事故に精通した弁護士のサポートが不可欠です。
1)治療関係に関わる費用
入院費、治療費、リハビリ費用、医療器具の購入費、将来の医療費も含まれます。
2)付添看護費
入院中や自宅療養中の介護人件費。家族による付き添いも「有償介護」として請求可能です。
3)交通費・付添人交通費
通院や転院にかかる交通費、付き添い者の交通費も含まれます。タクシー代や駐車場代も対象になります。
4)将来介護費
症状固定後、長期にわたって必要となる日常的な介護費用。職業介護人を雇った場合の費用や、家族による介護の経済的評価額も含まれます。
5)逸失利益
遷延性意識障害に陥った被害者が本来得られるはずだった収入の補填です。これを「逸失利益」と呼びます。被害者が事故前にどのような職業に就いていたか、その収入がどれほどだったかを基に、将来的に得られるはずだった収入を計算します。また、専業主婦や学生の場合でも、家事労働や将来の就労可能性を考慮して算出されます。
6)休業損害
症状固定までの間に、仕事を休んだことによる収入の減少を補償するものです。勤務先の証明などが必要になります。
7)介護用住居改修費・車両改造費
自宅のバリアフリー化(段差解消、スロープ設置など)や、介護に適した車両への改造費が含まれます。生活の質を確保するための重要な支出です。
8)慰謝料(後遺障害慰謝料)
植物状態の場合の損害賠償・慰謝料の相場
慰謝料:約2,800万円~3,000万円(1級1号)
遷延性意識障害により被害者自身が感じる苦痛や、その状態に置かれたことによる精神的苦痛に対する慰謝料も請求可能です。一般的には、被害者の年齢や状態、事故の状況などを考慮して、適正な金額が算出されます。家族が受ける精神的苦痛についても、慰謝料の対象として考慮されることが多いです。
9)近親者の慰謝料
近親者慰謝料とは、被害者本人ではなく、その家族が精神的苦痛を受けたことに対する賠償金です。被害者が長期間にわたって意識が戻らない状態でいる場合、家族にとっては大きな精神的負担となるため、その苦痛を金銭で補う目的があります。
10)成年後見申立費用
損害賠償請求を行うために成年後見制度を利用する際の申立て費用。申立書類の作成や医師の診断書取得、家庭裁判所への手続きにかかる実費・専門家報酬が含まれます。
遷延性意識障害(植物状態)の後遺障害等級

遷延性意識障害のような重度の後遺症は、後遺障害等級の中でも最も重い「1級」に該当します。ここでは、該当する等級や必要書類、認定のためのポイントを解説します。
1)自賠責での等級:1級1号
遷延性意識障害は後遺障害等級表の「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」に当たります。
遷延性意識障害を負った被害者は後遺障害等級1級に認定されることになります。
後遺障害等級1級に認定されると、自賠責保険からは4000万円を限度に保険金が給付されます(左記は慰謝料と逸失利益を合わせた分の限度額です。症状固定までの治療費は別に請求できます。)。
2)等級認定に必要な診断書・検査結果
適切な後遺障害等級認定は、その後の賠償金額に大きく影響します。被害者の状態に見合った等級を獲得するためには、診断書の記載内容が極めて重要であり、医学的観点と法律的観点の両面からのチェックが必要です。
弁護士は医師と協力して、診断書や検査結果が後遺障害等級の認定基準を満たすかを確認し、必要な場合には追加の検査や意見書の作成を依頼することがあります。
さらに、遷延性意識障害のような重篤なケースでは、被害者家族が医療や介護の負担を抱える一方で、法律手続きに詳しくないことが多いため、専門家のサポートが重要になります。弁護士は、医療機関から適切な情報を収集し、保険会社との交渉を円滑に進めることで、被害者とその家族が最大限の補償を受けられるよう支援します。
当事務所では、医師と連携しながら診断書の記載ポイントをアドバイスし、適正な等級認定を目指します。
遷延性意識障害だと賠償金額計算の際に余命を制限されるか

被害者が遷延性意識障害を負った場合、将来にわたって必要となる介護費用も損害賠償として請求することができます。
この介護費用は被害者が生きている限り必要となるものなので、被害者の余命の長さが直接金額に影響します。
余命を長く設定するほど、その分、介護費用として請求できる金額は大きくなるのです。
一般的に、遷延性意識障害を負った方の余命は平均余命に比べかなり短くなり、だいたい3年程度であることが多いと言われています。
そのため、損害賠償金額を低く抑えたい加害者側は、「介護費用の計算には平均余命をそのまま用いるべきではなく、余命を制限して計算すべきだ」と主張してくることがあります。
平均余命で計算するのか、短縮余命を前提にするのか 、この争点は数千万円単位で賠償金額を左右します。
しかし、被害者側が何も準備せずにいると、加害者側の一方的な主張に押されてしまう危険もあります。
**余命の正しい評価と、その証拠資料の整備、専門的な反論が不可欠です。**当事務所では、裁判例や医学的知見をもとに、ご家族に代わって説得力ある主張を構築します。
遷延性意識障害による損害賠償を受けるための流れ

交通事故によって遷延性意識障害(植物状態)となった場合、被害者やご家族が損害賠償を適切に受け取るには、段階的かつ慎重な手続きが求められます。以下では、主な流れとその中で必要となる制度について解説します。
①症状固定の確認
②後見人選任(成年後見制度の利用)
③後遺障害診断書の作成
④後遺障害等級の申請(被害者請求)
⑤等級認定と損害賠償請求
⑥保険会社との交渉~示談または訴訟(裁判)へ
順番に説明します。
【ステップ1】症状固定の確認
治療の過程で回復が見込めなくなり、状態が安定した時点を「症状固定」と呼びます。症状固定となると、これまでの治療費、後遺障害の有無、逸失利益などが算定可能となり、損害賠償額が確定できます。
【ステップ2】後見人の選任(成年後見制度の利用)
遷延性意識障害の場合、被害者本人は意識疎通が難しいため、有効に損害賠償請求をすることができません。そこで、被害者が未成年者である場合は、すでに存在する親権者または未成年後見人が本人に代わって行います。一方、被害者が成年である場合は、まず成年後見制度を利用して被害者に後見人をつけ、後見人が本人に代わって行うことになります。
後見人とは、「物事を判断する能力が十分でない人の権利を守る援助者」のことです。
成年後見制度を利用する場合は、被害者本人の配偶者、4親等以内の親族等が家庭裁判所に申立てをすることになります。
申立ての方法は、裁判所のホームページに詳しく書かれていますので、参考にして下さい。手続きに不安のある場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
【ステップ3】後遺障害診断書の作成
症状固定後、医師による「後遺障害診断書」の作成が必要です。この書類は、損害賠償の根拠となる後遺障害等級を判断する際に最も重要な資料となります。内容に不備があると、適正な等級が得られない可能性もあるため、後遺障害等級認定に詳しい弁護士に確認の上、医師と相談して記載内容を確認することが重要です。
【ステップ4】後遺障害等級の申請(被害者請求)
作成された診断書や必要な資料をもとに、**損害保険料率算出機構(損保料率機構)**へ後遺障害等級の認定申請を行います。これは「被害者請求」と呼ばれる手続きで、保険会社を介さずに自分たちで申請を行う方法です。
【ステップ5】等級認定と損害賠償請求
後遺障害等級が認定されると、それを前提に損害賠償の請求を行うことができます。ここでは、医療費・将来の介護費・逸失利益・慰謝料など、幅広い損害項目をもれなく請求する必要があります。
適切な後遺障害等級が認定されなかった場合は、不服申し立てを行います。
【ステップ6】保険会社との交渉~示談または訴訟(裁判)へ
保険会社との間で賠償金額についての交渉を行い、納得できる内容であれば示談をします。交渉が難航した場合や不当な提示しか得られない場合は、裁判(訴訟)で解決を図ることも検討します。
遷延性意識障害で適正な慰謝料・賠償金を得るための4つのポイント

交通事故によって遷延性意識障害(植物状態)となった場合、適正な慰謝料や損害賠償金を確実に受け取るためには、重要なポイントがあります。ご家族が冷静に判断できる状態でないことも多いため、早めに備えておくことが非常に大切です。
- 1.後遺障害等級「1級」の認定を取得する
遷延性意識障害は原則として1級に該当しますが、正確な診断書や検査資料がなければ認定が得られないこともあります。
- 将来の介護費用や逸失利益を正確に計算する
長期にわたる介護には多額の費用がかかります。また、被害者が本来得られたはずの収入(逸失利益)も損害賠償の対象です。
- 家族が受けた精神的苦痛(近親者慰謝料)を適切に主張する
家族もまた、加害者に対して慰謝料を請求できる立場にあることを理解しておきましょう。
- 交通事故に強い弁護士に早めに相談する
複雑な後遺障害等級の認定手続や損害賠償の交渉には、専門的な知識と経験が不可欠です。交通事故に詳しい弁護士に早期相談することで、損害を正しく評価し、最大限の補償を得られる可能性が高まります。
交通事故による遷延性意識障害を弁護士に相談する5つのメリット

遷延性意識障害は、医療的にも法律的にも高度な知識が必要となる極めて深刻な後遺障害です。このような重度の障害を負った交通事故では、被害者本人が損害賠償請求を行うことができないため、家族が代理して請求手続きを進める必要があります。そこで重要になるのが、交通事故と後遺障害に精通した弁護士の存在です。以下に、弁護士に相談・依頼する主なメリットを挙げます。
1.後遺障害等級「1級」の認定をサポート
弁護士は医師と連携し、診断書や検査結果に必要な記載があるかを確認したうえで、適切な書類の整備・提出を行うことで、等級認定の精度を高める支援を行います。
2.将来にわたる賠償項目を漏れなく請求できる
遷延性意識障害による損害は、医療費・介護費・住環境整備費用・逸失利益・慰謝料など多岐にわたります。特に、将来の介護費や住宅改修費は、早期に適正な金額で見積もる必要があります。
示談が終わった後に、あの項目が漏れていたと気が付いても、請求はすることが出来ません。弁護士は各費目に応じた法的根拠や判例をもとに、適正な金額を算出し、漏れのない請求を実現します。
3.加害者や保険会社との交渉を代行し、精神的負担を軽減
事故直後は混乱や不安の中、医療・介護の手配で精一杯になるご家族も多いでしょう。そんな中で、保険会社からの示談提案に対応するのは大きな負担です。
弁護士が介入すれば、保険会社との交渉窓口を一任できるため、ご家族の精神的負担を大幅に軽減できます。
4.成年後見制度の申立てなど、法的手続きも一貫サポート
遷延性意識障害の被害者は自ら法律行為を行うことができないため、損害賠償請求の前提として成年後見人の選任が必要です。
弁護士は、家庭裁判所への後見人申立てや必要書類の整備など、煩雑な法的手続きも一括して対応可能です。
5.将来に備えた「介護者なき後」への法的準備も可能に
家族による介護が長期にわたる場合、「親なき後」「介護者なき後」問題も現実味を帯びてきます。
弁護士は、後見制度や信託、福祉施設利用の計画、財産管理の仕組みなども含め、長期的な視点で法的な備えを提案できます。
当事務所では、交通事故による重度後遺障害の案件を数多く手がけております。
事故後、何から始めればよいか分からない方も、どの段階からでも丁寧にサポートいたします。
交通事故に関するご相談は無料です。まずはお気軽にご相談ください。
交通事故による遷延性意識障害の介護の概況

交通事故によって遷延性意識障害(植物状態)に陥った患者の介護には、専門的な医療と介護の体制が欠かせません。生活の質を少しでも維持・向上させるためには、日常生活のすべてにおいて継続的なサポートが必要です。さらに、健康状態の管理のためには、定期的な通院や医師による診察、リハビリテーションの継続も求められます。
このような状態は、突然の交通事故によって発生することが多く、長期にわたる介護が必要になるため、家族にとって精神的・経済的な負担は非常に大きなものとなります。
遷延性意識障害の介護は、家族の協力だけでは限界があるケースも多いため、地域の支援体制を活用することが大切です。
1)「介護者なき後問題」とは
遷延性意識障害を含む重度後遺障害者である子どもが、「介護者なき後」(親なき後)、つまり自らが介護できなくなった場合に、子どもが安心できる生活環境を確保することの難しさについて考えることが「介護者なき後問題」です。
独立行政法人自動車事故対策機構(ナスバ)の介護料受給者世帯(自動車事故による重度後遺障害者の子どもを介護している親世帯)を対象に行った調査によると、「親なき後に子どもの介護を頼める人がいる」と回答した親は、全体の2割程度。そのうちのほとんどが脳損傷者の兄弟姉妹に介護を頼まざるを得ない状況と回答しています。
参考:自動車事故 よる重度後遺障害者 自動車事故による重度後遺障害者の 「親亡き後問題」に関する調査報告書
2)「介護者なき後問題」に備えるために
被害者が若年である場合でも、親が高齢であれば「介護者なき後」を意識せざるを得ません。介護が長期化し、親が先に亡くなってしまうと、被害者の生活は大きく揺らぎます。
そうしたリスクを最小限に抑えるためにも、法的な手続きや財産管理を含めた「備え」が必要です。
以下のような対策が有効です。
対策 |
詳細 |
成年後見制度の活用 |
判断能力がない被害者に代わり、財産管理や契約手続きを行える後見人を家庭裁判所に選任しておく制度です。 |
信託制度の利用 |
被害者の生活資金や財産を信頼できる第三者に託し、必要なときに必要な支援が継続されるよう設計できます。 |
施設・グループホームの事前検討 |
将来的に自宅介護が難しくなることを見越し、適切な受け入れ先の候補を事前に調べ、見学・相談しておくことも重要です。 |
地域包括ケアや専門職との連携 |
地域のケアマネジャー、医療ソーシャルワーカー、自治体の福祉窓口と連携し、地域全体で支える仕組みを構築します。 |
全国遷延性意識障害者家族の会などの支援団体の活用 |
同じ状況の家族と情報交換ができる場として、精神的な支えにもなります。制度や施設の実体験に基づくアドバイスを得ることもできます。 |
早い段階でこれらの対策を講じることで、「もしものとき」にも安心して生活を続けられる基盤を整えることができます
遷延性意識障害と脳死の違い

交通事故に遭うと、最悪の場合、被害者が死亡してしまうことがあります。
また幸い一命を取り留めた場合であっても、遷延性意識障害を負ってしまう、つまり植物状態になってしまうこともあります。
誤解されやすいところですが、遷延性意識障害は脳死とは違います。
脳死は、全ての脳の機能が停止してしまった状態で、回復の見込みがありません。
一方で遷延性意識障害の場合、生命を維持する機能は残っているため、肺や心臓、消化器官などは機能し続けています。
自分の器官で生命を維持できるものの、意識はないという状態になっているのです。
状態 |
特徴 |
脳死 |
全ての脳の機能が停止、自発的な呼吸がない、心臓が動かない、瞳孔が開く、回復の見込みがない |
遷延性意識障害 |
生命を維持する機能が残っている(肺や心臓、消化器官が機能)、意識がない |
1)遷延性意識障害の定義とは
もっと具体的に説明すると、遷延性意識障害の定義は、疾病・外傷により種々の治療にもかかわらず、3ヶ月以上にわたって、以下の6項目を満たす状態にあるものとされています。
- 自力で移動できないこと
- 自力で摂食できないこと
- 失禁してしまう状態にあること
- 意味のある発語ができないこと
- 簡単な指示(例:「指を動かせ」「目を開けろ」)には反応することがあるが、それ以上の意思疎通ができないこと
- 動いているものを目で追うことができない、物を認識できないこと
遷延性意識障害はこのように、生命を維持する基本的な機能は働いているものの、意識を取り戻すことができない状態を指します。
参考:一般社団法人日本救急医学会 医学用語解説集
2)遷延性意識障害からは回復する可能性がある
脳死から回復することはできませんが、遷延性意識障害の場合は回復して意識が戻ることもあります。
しかし、脳に大きなダメージを負っていることに変わりはないため、必ず回復することのできる治療法というのはまだ存在しません。
遷延性意識障害の治療法は、被害者本人の治癒能力による回復を待つことです。
その間、周囲の人は、被害者の身体への悪影響を排除しながら現状維持を続ける傍ら、話しかけたり、手に触れたりすることで五感を刺激し、回復を促すことになります。
ただし、仮に意識が回復したとしても完治は難しいというのが現状です。
意識が戻ったとしても、身体は動かないがなんとか意思表示ができるといった状態や、身体は動くものの記憶障害などが残るといった状態まで戻るに止まることがほとんどでしょう。
回復の可能性がゼロではないという事実は、家族にとって希望でもあります。しかし、医学的にも「確実な回復をもたらす治療法」が確立されているわけではないため、先の見えない不安と向き合いながら日々の介護を続けるご家族も少なくありません。
そのような不確実な状況の中で、経済的・精神的な負担をどう軽減するかが極めて重要になります。医療費や介護費の見通し、保険会社との交渉、慰謝料の妥当性など、専門的な判断を要する場面も多いため、早い段階で専門家にご相談いただくことをおすすめします。
10.まとめ
交通事故により遷延性意識障害(植物状態)に陥った場合、被害者本人はもちろん、そのご家族にも長期にわたる介護・医療・生活支援といった極めて大きな負担がのしかかります。
しかも、適切な損害賠償を得るためには、後遺障害等級の認定、介護費用・逸失利益の算定、加害者や保険会社との交渉など、多くの専門的手続きが必要です。
この記事では、遷延性意識障害の医学的な特徴や後遺障害等級、そして損害賠償請求の流れとポイントを解説しました。特に、後遺障害等級1級の認定と、「介護者なき後」問題への備えは、将来を見据えた非常に重要な視点です。
当事務所では、医師との連携を含めた総合的な支援体制を整えており、無料相談も承っております。将来に向けて適切な補償を受けるために、まずは一歩踏み出してみてください。