被害者参加制度の重要性

監修者 弁護士法人キャストグローバル

弁護士 松田 健人

交通事故によって大切なご家族が亡くなられた場合や怪我をされた場合に、加害者には刑事責任が問われることになります。

このような場合に、加害者の刑事裁判において「被害者参加制度」の利用ができます。
被害者参加制度は、被害者のご遺族等が刑事裁判に参加し、公判期日に出席することで、裁判の経過を直接見守ることができるというものです。
被害者参加制度は2008年から導入され、被害者のご遺族等が加害者の処罰について意見を述べたり、証人尋問を行ったりすることが認められています。
今回は、交通事故被害者参加制度について解説します。

交通事故の加害者に問われる刑事責任

交通事故によって大切なご家族が亡くなられた場合や怪我をされた場合に、加害者には刑事責任が問われることになります。交通事故による死亡等の重大な事故において、加害者がどのような犯罪に問われるのかについて理解しておくことは、ご遺族にとって重要です。

加害者に問われる主な犯罪であって、被害者参加制度の対象となるものとしては、「過失運転致死罪」(自動車運転死傷行為処罰法5条)と「危険運転致死罪」(同法2条)があります。
なお、同法は、業務上過失致死傷罪(刑法211条)によって処罰が適切に出来ない事案があることから、2007年に新設されました。つまり、自動車運転の危険性を根拠として、過失致死傷罪の加重類型として生まれました。被害者やそのご遺族の気持ちを思えば、加害者が適切な刑罰を受けることで、少しでも気持ちの整理がつくことを願いたいものです。

これらの罪は、事故の状況や加害者の運転行為の内容によって適用される刑罰が異なります。以下に、それぞれの罪について詳しくご説明します。

過失運転致死罪

過失運転致死罪は、運転者が過失により他者を死傷させた場合に適用される犯罪です。

ここでいう過失とは、自動車運転を行う上で必要とされる注意を怠たることをいい、交通ルールを守らなかったりする行為を指します。具体的には、前方注視義務、適切なハンドル操作義務、適切なブレーキ操作義務などについて、運転時にしっかりとそれらの義務を履行していなかった場合をいいます。

過失運転致死罪の刑罰は、7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金とされています。加害者の過失の程度や事故の状況によっては、刑が免除されたり執行猶予がつく場合もあります。

危険運転致死罪

危険運転致死罪は、過失運転致死罪よりも重い犯罪で、特に悪質な運転行為によって他人を死傷させた場合に適用されます。

この罪は、運転者が通常の注意義務を超えて、極めて危険な運転を行った結果、人の生命身体に危害を加えた場合に適用されるものです。
具体的な例としては、飲酒や薬物の影響下で正常な運転が困難な状態での運転、車両を制御することが困難なスピードでの運転、信号無視を何度も無視してある一定のスピードでの運転などがあります。
これらの行為は、人の生命身体を危険にさらすものであり、その結果としての死亡事故はさらに重く処罰されます。

危険運転致傷罪の法定刑は、15年以下の懲役、危険運転致死罪の法定刑は、1年以上の有期懲役です。
加害者が悪質な運転行為を行っていた場合、世間からも注目を集めるケースが多く、厳罰を求める声が高まる傾向にあります。
最終的にどのような判決が下るかは、被害者のご遺族にとって重要な問題の1つです。

刑事裁判の「被害者参加制度」とは

交通事故でご家族を死傷された場合、加害者の刑事裁判において「被害者参加制度」の利用ができます。
被害者参加制度は、被害者のご遺族が刑事裁判に参加し、公判期日に出席することで、裁判の経過を直接見守ることができるというものです。
被害者参加制度は2008年から導入され、被害者のご遺族が加害者の処罰について意見を述べたり、証人尋問を行ったりすることが認められています。

「被害者参加制度」でできること

被害者参加制度を利用すれば、ご遺族は刑事裁判に積極的に関与できるようになります。
具体的には、以下のようなことが可能です。

内容 説明
公判期日への出席 裁判の進行状況を直接見守ることができます。
検察官への質問等 検察官の訴訟活動に関して意見を述べたり、説明を求めたりすることができます。
証人尋問 情状証人に対して尋問して検証、証拠にすることができます。
被告人質問 被告人に対して質問を行うことができます。
意見陳述 被害者やご遺族の気持ち、法律の適用などについて意見を述べることができます。

「被害者参加制度」を利用するために

被害者参加制度を利用するためには、以下の要件と手続きを満たす必要があります。

被害者参加制度の対象者

被害者、被害者死亡または心身の重大な故障がある場合にはその配偶者、孫、両親などの直系の親族、兄弟姉妹。
被害者の親権者、後見人などの法定代理人
上記から委託を受けた弁護士

対象となる事件

交通事故による場合は、過失致死傷罪、危険運転致死傷罪です。それ以外にも

  • 殺人や傷害など、故意の犯罪により死傷させた犯罪
  • 強制わいせつ、強制性交等の性犯罪
  • 業務上過失致死傷、誘拐など

被害者参加制度の利用手続き

被害者参加制度の具体的な流れは以下の通りです。

① 参加申出
被害者参加制度を利用するには、まず被害者やご遺族が事件を担当する検察官に対して刑事裁判への参加を申し出ます。
検察官は、この申し出を受けて、被害者やご遺族が刑事裁判に参加することに対する意見を付して裁判所に通知します。

② 裁判所の許可
これを受けた裁判所は、被告人や弁護人の意見を踏まえ、犯罪の性質や被告人との関係、その他の事情を考慮して、刑事裁判への参加を許可するかどうかを判断します。
裁判所が許可した場合、被害者やご遺族は「被害者参加人」として刑事裁判に参加できるようになります。
なお、参加の申し出は、検察官が起訴してから、裁判が係属している間、いつでもすることができます。

被害者参加制度のメリット

被害者やその遺族が「被害者参加人」として刑事裁判に参加することが許可された場合、以下のようなメリットがあります。

1. 公判への出席し直接質問できる
被害者参加人は、公判に出席することができ、検察官、被告人や証人に対して直接質問を行うことができます。これは、被害者の視点から事件の真相を明らかにし、公正な裁判を促進するための重要な権利です。

2. 意見陳述権
被害者参加人は、裁判の進行中や判決前に、自身の意見や感情を陳述する機会があります。これにより、被害者の声が裁判に反映されることが期待されます。

3. 弁護士を選任できる
被害者参加人は、裁判において自身の権利を守るために弁護士を選任することができます。弁護士は、被害者の代理として質問や意見陳述を行うほか、法的助言を提供します。経済的に困難な場合には、国が費用を負担する「被害者参加弁護士制度」も利用可能です。

4. 裁判資料の閲覧・謄写
被害者参加人は、裁判の関連資料を閲覧したり、コピーを取ったりすることができます。これにより、裁判の進行状況を把握し、適切な対応を取ることが容易になります。
被害者参加制度を利用することで、被害者やその遺族は刑事裁判において積極的な役割を果たすことができるようになります。これにより、裁判の透明性と公正性が高まり、被害者の心理的なサポートにもつながることが期待されます。しかし、利用にあたっては手続きが複雑であり、弁護士のサポートが重要となります。被害者や遺族が制度を適切に利用するためには、事前にしっかりとした準備と相談が必要です。

被害者参加制度のデメリット

被害者参加制度のデメリットについても理解しておくことが重要です。

1.被害者参加制度の手続きが複雑
被害者参加制度に関する手続きや刑事訴訟の手続きが複雑であるため、被害者やその遺族が制度を正しく利用するには専門的な知識が必要です。

2.裁判に参加することで心的外傷やストレスのリスク
裁判に参加することで意見等を述べることが出来る反面、事件を思い出したり、加害者から思わぬ発言を受けることがあり、被害者やご家族が再び心的外傷を負うリスクもあります。このため、心理的な準備やサポートが不可欠です。

被害者参加制度利用の際の注意点

加害者に会いたくない
被害者参加制度で参加したいと思ったけど、加害者に会いたくない、裁判の傍聴人に顔を見られたくないという方も多いです。この場合は
・弁護士に依頼して代わって参加してもらう
・遮蔽措置を裁判所にお願いする

遮蔽措置については、裁判所が必ず認めてくれるとは限りません。性犯罪は認められやすい傾向にありますが、交通事故でその他特殊な事情がない場合は認められない可能性も十分あります。その場合は、弁護士に依頼するというのも一つの手段です。

弁護士のサポートと相談の重要性

被害者参加制度の手続き及び刑事訴訟の手続きは複雑であるため、弁護士のサポートは重要です。弁護士は被害者の代理として法的助言や裁判の進行をサポートします。弁護士を付ける経済的余裕がない方には、国が費用を負担する「被害者参加弁護士制度」を活用することで、経済的な負担を軽減しつつ、専門的なサポートを受けることが可能です。
また、それ以外に法テラスから旅費日当などが支給されます。裁判所までの旅費や宿泊料が支援されます。
被害者参加制度を通じて、被害者の声が裁判に反映されることは、司法制度全体の信頼性向上にも寄与します。そのためにも、被害者やその遺族が制度を正しく理解し、適切に利用するための支援体制が整っていることが重要です。

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監修者 弁護士法人キャストグローバル

弁護士 松田 健人

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