子どもを育てている側の親からすれば色々な理由から子どもを別れた元夫や元妻に会わせたくないと思うこともあります。

それでは、監護する親の意向次第により他方の親と子との面会交流を一方的に拒否することはできるのでしょうか。あるいは、面会交流を拒否できる場合というのはどのような場合なのでしょう。

今回は、面会交流の実施により子どもを元夫・元妻に会わせたくない場合の条件や方法について解説します。

面会交流が子どもの成長に悪影響を及ぼすときは拒否できる

原則として、面会交流は拒否できない

面会交流権は監護権のない親のための権利ではなく、あくまでも子の健全な発育を図るための親の子の監護のために適正な措置を求める権利であると理解されています。

そのため、面会交流は子の利益を害するおそれのない限り認められ、面会交流の制限あるいは否定されるケースは面会交流を認めることにより子の福祉を害するおそれのある特段の事情のある場合に限られます。

すなわち、原則として面会交流は拒否することはできず、面会交流の実施により子の健全な成長を阻害するおそれのある場合に限り例外的にこれを拒否・制限できるのです。

面会交流を拒否できるケース

連れ去りや虐待のおそれのある場合

まず、非監護親の子に対する暴力・虐待のおそれのある場合、あるいは子の連れ去りのおそれのある場合には、基本的に面会交流を認めることは子の利益に反しますから面会交流を拒否することができます。

但し、親の暴力・虐待のある場合には、必ず面会交流を拒否することが認められるとは言い切れません。実際、過去の子に対する暴力・虐待の背景事情や子の暴力・虐待の事実についての認識の有無、それまでの面会交流の実績の有無などに照らし面会交流を認めることについて子の福祉に資するものとして是認される事例は存在します。

子ども自身が面会交流を拒否する場合

子ども自身が面会交流を拒否する場合には、基本的に面会交流を拒否することができます。そもそも、面会交流を認める究極の目的は、子の福祉を図ることにあるのですから子自身が面会交流を拒絶している以上、面会交流を否定すべきことは当然であるといえます。

但し、子の意向に沿って面会交流の許否を判断する際には、その子の年齢を踏まえてその意思表示の背景あるいは真意について慎重に検討する必要があります。なぜなら、子は監護する親の心中を察して本心を隠すことがあり、また、色々な心理的要因から本心と外部に表す意思表示が食い違うことがあるからです。

実際の審判例でも幼児あるいは小学校低学年までの子については、適切な判断能力を欠いていたり、監護親からの影響を強く受けて面会交流を拒否している可能性を検討して子の真意を探求した上、最終的に面会交流を認めるケースは存在します。

再婚

監護親が離婚後に再婚して再婚相手と一緒に子を育て始めたようなケースでは、面会交流により子の監護親と再婚相手との家庭生活に混乱を生じさせることになり、結果として子の健全な発育を阻害することにもなりかねないため面会交流を拒否することが認められるケースがあります。

もっとも、監護親の再婚により監護親が再婚相手との生活に配慮して再婚後の面会交流について消極的であることを理由に面会交流を否定することは妥当ではないでしょう。

なぜなら、面会交流の許否の判断は、あくまでも子の利益を最優先に考えてなされるべきだからです。実際にも監護親の再婚後の面会交流が認められるケースは多く存在しています。

したがって、監護親の再婚後の面会交流の許否については、単に再婚した事実により面会交流が否定されることはなく、再婚により生じる子の発育環境に与える面会交流の影響の有無・内容を具体的に検討して判断されるのです。

子の発育に対する悪影響

面会交流の当事者となる親の言動について子の健全な発育を阻害するような影響を有するような場合には、面会交流は制限あるいは否定されます。

面会交流のルールを無視し自分の利益のために子を利用する、子どもの教育的に適切でない場所へ連れていくことが続くといったケースです。

もっとも、そのように子の発育に対する悪影響を及ぼす危険のある場合でも面会交流の方法を工夫することによりその危険を除去できる場合もあるため全面的に面会交流を拒否するのではなく、たとえば第三者の立ち合いの下に面会させるなど一定の条件付であれば面会交流を認めるケースもあります。

監護親に対するDV

監護親が子との面会交流について拒絶反応を示すことがほとんどといえるケースがあります。それは、過去に非監護親から監護親がDVを受けていたような場合です。このように監護親が面会交流に対する協力を全くできない場合には、面会交流を認めても実現が難しいことになります。

過去にDVの事実があったとはいえ、子との面会交流に多少でも協力が得られそうな場合には、監護親と非監護親の感情や子の心情も踏まえたうえで第三者を含めた面会交流を認めることがあります。

面会交流の相談は弁護士に

面会交流は、子の健全な成長を目的として認められるものですから、基本的に親の意向により自由に拒否することはできません。

しかし、逆に言えば、面会交流を認めることにより子の健全な成長を阻害することになるのであれば、親の権利であるとして、無制限に面会交流を認めることは適切なのです。

そのため、連れ去りや虐待のおそれのある場合、子自身が拒否している場合、親の再婚、親の言動について子の発育に対する悪影響を認める場合、監護する親に対するDVなどの存在する場合には、面会交流を認めることにより子の健全な成長を阻害するとして面会交流を拒否することが認められる場合があります。

もし、そのような面会交流を拒否するような理由のある場合には、子を監護しない親に会わせないようにすることは許されますし、当事者同士でトラブルになりそうなのであれば家庭裁判所に調停・審判の申立を行うことにより問題の解決を図ることができます。

面会交流の拒否できる場合の判断は、様々な事情を考慮してなされる微妙な判断ですから、面会交流の拒否について悩まれているのであれば、一度、弁護士に相談することをおすすめします。

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