逸失利益の種類
逸失利益には大きく分けて「後遺障害逸失利益」と「死亡逸失利益」の2種類があります。
逸失利益の請求には、仕事への実際の影響を証明するために、医師の診断書や収入証明書など、具体的な証拠が必要です。これらの書類を適切に揃え、提出することで、より正確な逸失利益を請求することができます。
後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益とは、交通事故によって後遺障害が残った場合に、後遺障害がなかったならば得られたであろう収入から減少する分を補償するものです。後遺障害があると、被害者は元の仕事に戻れない、または働ける時間や労働の質が低下するため、将来的な収入が減少する可能性が高くなります。後遺障害等級は1級から14級まであり、等級の数字が小さいほど重い障害が残ったことを意味し、高い等級となります。そのため、高い等級ほど逸失利益も大きくなります。
計算式は、以下のようになります。
逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応する中間利息控除係数(ライプニッツ係数) |
死亡逸失利益
死亡逸失利益は、被害者が死亡した場合に、その人が将来得られるはずだった収入を補償するものです。被害者が生きていれば得られたであろう収入を基に計算され、被害者の家族が請求することができます。
被害者が一家の大黒柱であった場合、その収入が家族の生活を支えていたため、死亡逸失利益は家族にとって非常に重要な補償となります。この計算には被害者の年齢、職業、収入、扶養家族の数などが考慮されます。
計算式は、以下のようになります。
逸失利益 = 基礎収入 × (1-生活費控除率) × 勤労可能年数に対応する中間利息控除係数(ライプニッツ係数) |
それぞれについて詳しく解説します。
後遺障害逸失利益と死亡逸失利益の計算方法の違い
主な違いは以下の点です。
生活費控除率
死亡逸失利益では、交通事故被害者の生活費が控除されます。これは、交通事故被害者が亡くなったことで、その方の生活費がかからなくなるためです。生きておられたら収入からその人の生活費を支出されていたはずです。つまり、収入のうち、生活費分は残らないことになりますから、その分控除するということになります。後遺障害逸失利益には、この控除はありません。亡くなったわけではありませんから、生活費が今後必要となります。
労働能力喪失率
後遺障害によって労働能力が減少する(その分収入が減少する)割合のことです。後遺障害逸失利益では、後遺障害の程度によって労働能力喪失率が異なります。死亡した場合は労働能力が完全に失われているため、労働能力喪失率が100%となります。よって、死亡逸失利益の計算式には出てきません。
項目 |
後遺障害逸失利益 |
死亡逸失利益 |
生活費控除率 |
控除なし |
被害者の生活費が収入から控除される |
労働能力喪失率 |
後遺障害の程度により異なる |
100% |
後遺障害逸失利益とは
後遺障害による逸失利益とは、「交通事故で後遺障害を負っていなければ得られたはずの利益」のことを指します。
例えば、後遺障害によって、利き手である右手が全く使えなくなった場合、当然、仕事の能率が落ちてしまいます。そのせいで事故の前より年収が低くなったり、上がるはずの年収が上がらなくなる可能性もあります。
このような、下がった分の年収や、上がるはずだったのに上がらなかった分の年収などを後遺障害逸失利益と呼びます。
後遺障害を負った場合の逸失利益の計算方法
後遺障害逸失利益の計算方法は、被害者の年齢、職業、収入、後遺障害等級などの要素を基に行われます。後遺障害逸失利益の基本的な計算式は、以下のとおりです。
逸失利益=(基礎収入)×(労働能力喪失率)×(労働能力喪失期間に対応する中間利息控除係数(ライプニッツ係数)) |
自賠責保険、任意保険、そして裁判の全ての場面において、基本的に逸失利益の計算にはこの式が用いられます(個々の要素の数字が多少異なることはあります)。
では、この式のそれぞれの項目について説明していきましょう。
基礎収入
被害者が事故前に得ていた収入を基にします。通常は年収が用いられます。
労働能力喪失率
後遺障害の程度に応じて設定される割合です。例えば、後遺障害等級14級であれば5%が目安となります。
ライプニッツ係数
将来的な収入を現在価値に割り引くための係数です。これは、将来の収入を一括して現在の金額に換算するために用いられます。つまり、交通事故の損害賠償金は、将来にわたって得られたであろう利益を損害として、原則一括で受け取ることになります。その賠償額を銀行等に預けることによって利息を受け取ることが出来ることになり、現実の損害を上回る賠償額を取得することになります。そこで、そのような利息を中間利息といい、この中間利息を控除することによって、賠償額を調整します。
後遺障害逸失利益の基礎収入の算定方法
被害者に収入があった場合
被害者に収入があった場合には、原則として「被害者の交通事故に遭う前の現実の収入」が基礎収入となります。
基礎収入の算定基礎となるのは、以下のとおりです。
サラリーマン
(給与所得者) |
事故前年の実収入 |
個人事業主 |
前年度の確定申告での申告所得額 |
会社役員 |
労働の対価としての役員報酬
(配当としての役員報酬は基礎収入には算入されません。) |
被害者に収入がなかった場合
一方、被害者が幼児や学生、家事従事者(専業主婦など)、無職者(一時的)である場合は異なります。こうした人たちは、未だ収入が無い(又は低い)ため、事故前の収入を基礎収入として計算すると、不適切に低い逸失利益が算出されてしまいます。
そのため、事故前の収入ではなく賃金センサスの平均賃金を基礎収入とするのです。
そのため、事故前の収入ではなく賃金センサスの平均賃金を基礎収入とするのです。
幼児や学生 |
全年齢平均賃金または学歴別平均賃金 |
家事従事者 |
無職者 |
(概ね30歳未満で、全年齢平均賃金または学歴別平均賃金程度の年収を得られる可能性がある者に限ります。また、実収入のほうが全年齢平均賃金より高ければ、実収入のほうを基礎収入とします。)
無職者については、収入がないので原則として逸失利益も認められません。ただし、事故当時無職であっても、働く意思と能力があって、将来的に働いていた蓋然性が高い場合は、事故に遭わなければ働いて収入を得ていた可能性が高いとして、年齢別平均賃金を基礎収入とすることもあります。
後遺障害逸失利益の労働能力喪失率の計算方法
では次に、労働能力喪失率について説明しましょう。
自賠責保険における労働能力喪失率は、後遺障害等級ごとに以下のとおり定められています。
後遺障害等級 |
労働能力喪失率(自賠責保険) |
後遺障害等級 |
労働能力喪失率(自賠責保険) |
第1級 |
100/100 |
第8級 |
45/100 |
第2級 |
100/100 |
第9級 |
35/100 |
第3級 |
100/100 |
第10級 |
27/100 |
第4級 |
92/100 |
第11級 |
20/100 |
第5級 |
79/100 |
第12級 |
14/100 |
第6級 |
67/100 |
第13級 |
9/100 |
第7級 |
56/100 |
第14級 |
5/100 |
任意保険の場合であっても、基本的には自賠責保険の後遺障害等級を参考に労働能力喪失率は算出されます。そのため、自賠責保険の後遺障害等級は非常に重要な意味を持つのです。
もっとも、自賠責保険の上記の基準に拘束されるわけではなく、あくまで個別具体的な判断によって労働能力喪失率を算出します。つまり、後遺障害等級による労働能力喪失率を基準にしつつ、実際の後遺障害の程度、職業、年齢などを加味して、被害者にとって有利な結果を導くことが可能です。そうだとすると、適切な後遺障害等級を獲得すること、依頼者の状況に応じて依頼者にとって有利に労働能力喪失率を主張立証することがとてもとても大切です。
したがって、交通事故被害者に寄り添って適切に動く交通事故専門の弁護士に依頼するメリットは大きいです。
労働能力喪失期間と、それに対応する中間利息控除係数(ライプニッツ係数)とは
労働能力喪失期間とは
労働能力喪失期間とは、働くはずだった期間(労働能力を喪失する期間)のことです。
原則として、後遺障害の症状固定時から被害者が67歳(一般的な定年の年齢)になるまでの期間として計算されます。
つまり、労働能力喪失期間は原則として以下のように計算されます。
ただし、以下のように例外もあります。
症状固定時に被害者が幼児や学生の場合や、高齢者の場合、後遺症がむち打ちなどで12級または14級となった場合です。
幼児や学生の場合
被害者が幼児や学生の場合は、まだ働いていません。
そのため、労働能力喪失期間は18歳〜67歳=49年間として計算します。
ただし、被害者が大学生の場合は22歳(大学卒業の年)〜67歳=45年間とします。
高齢者の場合
被害者がすでに67歳以上の高齢者である場合には、原則として簡易生命表(厚生労働省が作成しています。)の平均余命の2分の1を労働能力喪失期間とします。
また、被害者が67歳未満である場合であっても、症状固定時から67歳までの期間が平均余命の2分の1より短くなる場合には、平均余命の2分の1を労働能力喪失期間とします。
むち打ちの場合
後遺障害がむち打ちの場合の労働能力喪失期間は、後遺障害等級が12級であれば10年、14級であれば5年程度になることが多いです。なぜなら、むちうちによる後遺症は、時間の経過によって消失するとされていること、比較的軽度であって順応することで労働能力に対する影響が消失するとされているからです。
もっとも、これも目安の期間であって、個別具体的な事案によって異なります。例えば、自営業、弁護士などの士業、医師などは、67歳を超えても働くことが多いです。また、年々、健康寿命が伸びており、経済的な問題もあるかもしれませんが、生涯現役という人も増えてきています。そこで、個別事情をしっかり主張立証して、労働能力喪失期間を勝ち取らないといけません。したがって、交通事故被害者に寄り添って適切に動く交通事故専門の弁護士に依頼するメリットは大きいです。
中間利息控除係数(ライプニッツ係数)とは
中間利息控除係数とはどういったものなのでしょうか。
そもそも逸失利益は、被害者が将来にわたって少しずつ稼ぐはずだった(と推定される)利益を、損害賠償として一括払いで支払ってもらうものです。
しかし、稼ぐはずだった金額をそのまま一括で受け取り、そのお金を銀行等に預けて運用することで利息等を得ると、その分だけ、被害者側が利益を得ることになります。
そのため、中間利息控除係数という数値を掛けて調整するのです。
現在は、ライプニッツ係数という中間利息控除係数を用います。このライプニッツ係数は、労働能力喪失期間によって決まります。つまり、労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数ということになりますから、基本的に主張立証によって有利な数字に変わるというものではありません。
ライプニッツ係数早見表の活用
逸失利益の計算は複雑であり、特にライプニッツ係数の計算が難しいため、早見表を利用することが推奨されます。早見表には、年齢別、労働能力喪失率別の係数が記載されており、これを利用することで迅速かつ正確に逸失利益を算出することができます。
年齢 |
労働能力喪失期間 |
ライプニッツ係数 |
0歳 |
49年 |
14.980 |
10歳 |
49年 |
20.131 |
20歳 |
47年 |
25.025 |
30歳 |
37年 |
22.167 |
40歳 |
27年 |
18.327 |
50歳 |
17年 |
13.166 |
60歳 |
12年 |
9.954 |
70歳 |
8年 |
7.020 |
80歳 |
5年 |
4.580 |
90歳 |
3年 |
2.829 |
100歳 |
2年 |
1.913 |
後遺障害等級と逸失利益の関係
後遺障害等級は、逸失利益の計算において非常に重要な要素です。後遺障害等級が高いほど、労働能力喪失率が上昇し、結果として逸失利益の金額も増加します。具体的には、後遺障害等級1級から14級までが存在し、それぞれに応じて労働能力喪失率が異なります。
例えば、1級の後遺障害では労働能力喪失率が100%とされ、完全に労働能力を失ったとされます。一方で、14級では労働能力喪失率が5%とされ、比較的軽微な労働能力の喪失となります。これらの等級制度に基づいて、逸失利益の計算が行われます。
後遺障害等級と労働能力喪失率(自賠責保険)
後遺障害等級 |
労働能力喪失率(自賠責保険) |
後遺障害等級 |
労働能力喪失率(自賠責保険) |
第1級 |
100/100 |
第8級 |
45/100 |
第2級 |
100/100 |
第9級 |
35/100 |
第3級 |
100/100 |
第10級 |
27/100 |
第4級 |
92/100 |
第11級 |
20/100 |
第5級 |
79/100 |
第12級 |
14/100 |
第6級 |
67/100 |
第13級 |
9/100 |
第7級 |
56/100 |
第14級 |
5/100 |
減収がない場合は後遺障害逸失利益の請求はできないのか
もし後遺障害が残っていても、それが仕事に影響を及ぼさない程度のものであれば、「逸失利益はない」と判断されることもあります。
また、自賠責保険については、後遺障害等級に認定された場合しか逸失利益は支払われません。
任意保険も自賠責の後遺障害等級を参考にするので、逸失利益がないと主張する可能性は高くなります。
自賠責の後遺障害等級に左右されることなく個別具体的な判断であるということにはなりますが、後遺障害逸失利益を獲得することは困難です。例えば、次のような事案です。
- 外貌醜状、生殖機能障害
- 鎖骨等の変形障害(痛みがない場合)
後遺障害等級が認定されなくても、慰謝料に考慮されて慰謝料が増額する場合があります。こちらから主張しない限り、相手が勝手に慰謝料に考慮して増額するということはありません。したがって、交通事故に強い弁護士に相談して頂けると増額の可能性が上がります。
保険会社の提示する逸失利益の額に納得いかない場合は、弁護士に相談する方がいいでしょう。
当事務所では無料相談も行っております。お客様の状況や、どうしたいかをしっかりとお伺いした上で、最適にサポートいたします。
後遺障害逸失利益の計算例
例1:パート勤務の主婦の場合
被害者 |
35歳、パート勤務の主婦 |
年収 |
150万円 |
後遺障害等級 |
10級(労働能力喪失率20%) |
就労可能年数 |
32年間 |
ライプニッツ係数 |
20.389 |
逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応する中間利息控除係数(ライプニッツ係数))=1,500,000×0.2×20.389=6,116,700円 |
【解説】パート勤務の主婦の場合、基礎収入が低くなりがちである。就労可能年数も67が基礎になるため、逸失利益額は会社員と比較して少額になる傾向があります。もっとも、一時的にパートをしているなどの場合に、前職の収入や賃金センサスを基準として請求することも考えられます。交通事故に強い弁護士に相談してください。
例2:高収入の専門職の場合
被害者 |
40歳、年収1,200万円の医師 |
後遺障害等級 |
8級(労働能力喪失率30%) |
就労可能年数 |
30年間(67歳を基礎とせず、70歳とした) |
ライプニッツ係数 |
19.600 |
逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応する中間利息控除係数(ライプニッツ係数))=12,000,000×0.3×19.600=70,560,000円 |
【解説】高収入の専門職の場合、基礎収入が高いため、逸失利益額は大幅に増加します。また、専門職は一般的に定年が遅い、定年がないため、就労可能年数も長くなる傾向があります。裁判においても、医師の就労可能な年齢を70歳として就労可能年数を認めた事案があります。
例3:自営業者の場合
被害者 |
50歳、個人事業主(年収300万円) |
後遺障害等級 |
14級(労働能力喪失率5%) |
就労可能年数 |
17年間 |
ライプニッツ係数 |
13.166 |
逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応する中間利息控除係数(ライプニッツ係数))=3,000,000×0.05×13.166=1,974,900円 |
【解説】自営業者の場合、収入が変動しやすく、経費と私費の区別があいまいなまま確定申告をしています。したがって、基礎収入をどう考えるかが大切なのですが、上記点の理解がない人、そもそも確定申告書の味方すらわかっていない保険担当者もおられます。適切にアドバイスできる弁護士に相談することがとても大切です。また、就労可能年数も67歳を基礎にすべきかは検討を要するところであるため、交通事故に強い弁護士のアドバイスを受けることが重要です。
上記の計算はあくまで一例であり、実際には個別の状況に応じて異なる計算が必要です。交通事故に強い弁護士のアドバイスを受けることで、より正確な逸失利益の金額を算出することが可能です。当事務所では、個別のケースに応じた適切な計算を行い、最大限の補償が受けられるようサポートいたします。まずは無料相談で、お気軽にご相談ください。
死亡逸失利益とは
交通事故で被害者が死亡した場合の逸失利益を死亡逸失利益といいます。
遺族は加害者に対し、被害者の死亡によって生じた「逸失利益」も損害賠償として請求することができます。
死亡による「逸失利益」とは、「交通事故で被害者が死亡していなければ、被害者が将来得ていたはずの利益」のことです。
これには、被害者の職業や年齢、将来の収入見込み等が考慮されます。
交通事故で死亡した場合の逸失利益の計算方法
例えば、働き盛りの40代サラリーマンの被害者が事故で死亡した場合、彼は事故に遭わなければ、高い確率で定年まで働き、給料という形で毎月収入を得ていたものと考えられます。
その収入を事故によって奪われてしまったので、その奪われた利益(逸失利益)を加害者に賠償してもらうということです。
では、この死亡逸失利益はどのように計算されるのでしょうか。
死亡による逸失利益は、以下の式によって計算されます。
逸失利益 = 基礎収入 × (1-生活費控除率) × 勤労可能年数に対応するライプニッツ係数 |
なお、基礎収入とライプニッツ係数の考え方は、前述した後遺障害逸失利益と同じです。
以下では「赤い本」の基準を基にして説明しています。
生活費控除率とは
「生活費控除率」とは、被害者が生きていれば、その被害者等のために必要になったと考えられる生活費を損害賠償額から差し引く割合のことです。被害者が亡くなったために、生活費の支払いが不要になるので、この生活費分を控除することになります。そうしないと、本来必要となる生活費分も手元に残ってしまうことになるからです。
この割合は被害者の家庭内の役割によって異なり、以下が目安です。あくまで簡易計算するための目安であって、個々の生活実態に応じて異なります。
被害者が大黒柱であった場合の生活費控除率
• 被扶養者1名であれば40%
• 被扶養者2名以上であれば30%
その他の生活費控除率
• 女子であれば30%
• 男子であれば50%
就労可能年数はどのように考えられているのか
就労可能年数とは、事故で死亡しなければ働くことのできた残りの年数のことを指します。
就労可能年数は原則として、死亡時から67歳になるまでの年数として計算されます。
ただし、被害者がまだ就労年齢に達していない幼児や学生だった場合は、18歳から(大学生などの場合は卒業予定年齢から)67歳まで働くものとして計算されます。また、被害者が高齢者であった場合には、67歳までの年数と、「簡易生命表の平均余命の2分の1」のうち長いほうを就労可能年数とします。
もっとも、この数字はあくまで目安であり、職業によって70歳になるまでなどと長い期間を基礎とすることが認められる可能性があります。個別具体的な事情をしっかり主張立証して、勝ち取ることができるために、交通事故に強い弁護士に相談することをお勧めします。
では次に、就労可能年数に対応する「ライプニッツ係数」について説明しましょう。
ライプニッツ係数とは
ライプニッツ係数とは、労働能力が喪失するであろう年数(労働能力喪失期間)ごとに定められている数値のことです。
逸失利益を請求する場合は、被害者が将来長期間にわたって稼ぐはずであった収入を損害賠償金として一度に受け取ることになるので、この係数を掛けることで中間利息(利息など運用によって得られる利益)を控除しているのです。10年後に100万円を受け取ることのできる価値を現在価値に引き直すというイメージでしょうか。
就労可能年数とライプニッツ係数表(一部)
年齢 |
就労可能年数 |
ライプニッツ係数 |
0歳 |
49年 |
14.980 |
10歳 |
49年 |
20.131 |
20歳 |
47年 |
25.025 |
30歳 |
37年 |
22.167 |
40歳 |
27年 |
18.327 |
50歳 |
17年 |
13.166 |
60歳 |
12年 |
9.954 |
70歳 |
8年 |
7.020 |
80歳 |
5年 |
4.580 |
90歳 |
3年 |
2.829 |
100歳 |
2年 |
1.913 |
死亡事故の逸失利益計算表(職業別・生活費控除率適用)
逸失利益=基礎収入×(1—生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
職業 |
基礎収入 |
生活費控除率 |
ライプニッツ係数 |
備考 |
有職者(給与所得者) |
事故前の年収 |
一家の支柱:40%~30%、女性:30%、その他:50% |
67歳−死亡時の年齢 |
|
個人事業主 |
前年度の確定申告での申告所得額 |
|
会社役員 |
労働の対価としての役員報酬
(配当としての役員報酬は基礎収入には算入されません。) |
|
家事従事者 |
賃金センサス |
30%~50% |
|
学生・幼児 |
賃金 センサス |
|
高齢者 |
男女別・年齢別平均賃金 (就労能力・意欲あり) |
|
失業者 |
失業前の収入 |
|
年金受給者 |
年金額 |
50%~80% |
|
※ 上記はあくまで一般的な目安であり、個々の事案によって異ります。
会社役員の給与は、従業員とは異なって、株主総会の決議で決まり、定期同額給与、業績連動・利益連動給与、事前確定給与などの方法によって支払われます。会社役員の給与の性質を考えると、その経営手腕による対価が含まれ、世間では考えられないような報酬を受け取る場合があり、それを基礎として計算するのは適切ではありません。そこで、会社役員の場合は、役員給与のうち労働の対価としての性質を持つ部分だけを切り出して基礎として考えるのです。
また、学生に関して、単に賃金センサスといっても一つの方法だけではなく、一般的には、「学歴計・男女別・全年齢平均」の平均賃金を用いて算定しますが、事案によっては、「学歴別」や「男女計」の平均賃金が用いられることもあります。医学部生の場合は、将来的に医師になる可能性が高いため、賃金センサスでは不適切であり、職業別平均年収で計算するのが妥当です。
このように基礎収入一つとっても、検討材料は多くあり、専門性がないと見逃してしまいかねません。当事務所では、死亡事故の逸失利益について、多数の経験を持っており、これまで培ってきた経験をもとに適切な金額が受け取れるよう全力で対応させていただきます。無料相談も行っておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
死亡逸失利益の計算例
死亡逸失利益 = 基礎収入 × (1 – 生活費控除率) × 就労可能年数に対応するライプニッツ係数
例1:男性45歳、会社員、年収650万円、一家の大黒柱で、妻と子ども2人いる場合の逸失利益
基礎収入 |
650万円 |
生活費控除率 |
40% |
就労可能年数 |
67歳 – 45歳 = 22年 |
ライプニッツ係数(22年) |
15.937 |
死亡逸失利益 = 650万円 × (1 – 0.4) × 15.937=68,369,730円 |
例2:女性50歳、パート、年収200万円の場合の逸失利益
基礎収入 |
200万円 |
生活費控除率 |
30% |
就労可能年数 |
67歳 – 50歳 = 17年 |
ライプニッツ係数(17年) |
13.166(例) |
死亡逸失利益 = 200万円 × (1 – 0.3) × 13.166=18,432,400 円 |
【解説】逸失利益の計算は、個々のケースによって大きく変動します。上記の計算例はあくまで一般的なケースを想定したものです。実際の逸失利益額は、個別具体的な事案によって異なりますから、交通事故に強い弁護士による詳細な検討が必要です。まずは当事務所にお気軽にご相談ください。
逸失利益と損害賠償
逸失利益は、事故により将来得られるはずだった利益を意味します。交通事故により、被害者やその家族は生活に大きな影響を受けることになります。損害賠償は、こうした逸失利益を含めたあらゆる損害を補填するための手段です。
逸失利益の損害賠償請求の手続き
逸失利益を適切に請求するのはとても複雑で、適切な証拠を提示しなければなりません。まず、事故の詳細や被害状況を明確にするための資料を準備します。医療記録、警察の報告書、証人の証言などが役立ちます。次に、逸失利益の算出に必要な収入証明や就労状況の証拠を集めます。これらの資料を基に、被害者がどれだけの逸失利益を受けたかを算出し、賠償請求書を作成します。
逸失利益が増額される4つのポイント
①適正な基礎収入額の算定
基礎収入は事故直前の収入だけでなく、それ以前の収入、将来の収入などを検討し、ボーナス、残業代、昇給の見込みなどを考慮して算定しましょう。また、給与所得者(サラリーマン)以外の場合は、収入、支出(経費、税金)など項目ごとに分析する必要があります。
②適切な後遺障害の等級認定
後遺障害の等級は、逸失利益の算定に大きく影響します。等級が高いほど、将来の収入が減る可能性が高くなり、より多くの賠償を受けることができます。専門医の診断書を基に、適切な等級認定を目指しましょう。
③労働能力喪失率及び労働能力喪失期間の評価
一定の目安があるものの、個別具体的な事案によって異なります。目安の率、期間の方が高いと見込める場合はその目安で主張したり、個別事案の方が高いと見込める場合はその根拠を客観的証拠で主張立証するなど、被害者にとって最善な評価を獲得しましょう。
④交通事故に詳しい弁護士への相談
交通事故に強い弁護士は、逸失利益の複雑な計算や、保険会社との専門的な交渉において豊富な経験と知識を持っています。特に、労働能力の喪失率、喪失期間の算定や、将来の収入の予測など、専門的な知識が必要な部分において、適切なアドバイスやサポートを受けることができます。弁護士に依頼することで、より客観的な立場で損害額を算定し、保険会社との交渉を有利に進めることができるため、適切な賠償を受ける可能性が高まります。
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