上肢機能障害が後遺障害として認定される条件

上肢機能障害の等級認定は細かく設定されている

上肢とは、肩の関節から指先までの腕全体のことです。
交通事故で上肢に機能障害を負うこともありますが、上肢は一般に仕事を行う上でも重要な器官であるため、部位や障害の程度によって細かく後遺障害等級が設定されています
また、機能障害が残らなかったとしても、上肢に大きな外貌醜状(醜い傷跡など)が残った場合には、それだけで後遺障害として認定されることがあります。

さて、細かく設定されている上肢の後遺障害等級ですが、症状ごとに大きく4つのタイプに分けて論じられることが多いです。その4つは、変形障害、欠損障害、機能障害、そして醜状障害です。以下ではこのタイプ別に、後遺障害等級の認定について説明していきます。

上肢の変形障害

変形障害とは、骨が曲がった状態でくっついてしまったり、関節ではない部分が曲がる(偽関節)ようになってしまったりすることを指します。
事故後すぐに病院で適切な治療を受ければ、変形障害が残ることはほとんどありません。しかし、ごく稀にこのような障害も残ることがあるため、その場合は後遺障害として認定できるよう等級表に定められています。

変形障害によって認められうる等級

7級 一つの上肢に偽関節を残り著しい運動障害が残るもの
「著しい運動障害」とは、常に硬性補装具を必要とするものを指します
8級 一つの上肢に偽関節が残るもの
硬性補装具が常に必要なわけではないけれど、時々必要である場合は8級に当たる可能性が高いです。
12級 長官骨に変形を残すもの
長い骨が15度以上曲がってくっついたものや、変形が著しいもの、長い骨の直径が1/2~2/3以下に減少したものなどがこれに当たります。

上肢の欠損障害

欠損障害とは、腕がある箇所から切断された状態になり、欠けてしまうことです。指の一部のみの欠損も含めれば、欠損障害によって認められる等級は1級から14級と幅広いです。それだけ細かく条件が設定されているということです。
等級の軽重は、肘より上からの欠損か、手首より上からの欠損かといったように欠損の程度・部位で決まります。

上肢の機能障害

欠損していなくても、麻痺や関節の強直、人工関節の使用などによって上肢の機能が不完全になることがあります。
腕や指の機能障害によって認められうる等級は、1〜10級、12〜14級とこれまた幅広く定められています。
機能障害が残ったのが三大関節(肩関節、肘関節、手首の関節の3つの関節)なのか、指の関節なのかという別と、障害の残った関節の数、そして関節の用が全廃したか、廃したか、または機能障害が残ったかという障害の程度などをもとに等級を決めるのです。

機能障害の程度

等級表では、上肢・指の機能障害の程度は大きく4つに段階分けされています。重い順に「用を全廃したもの」、「用を廃したもの」、「機能に著しい障害を残すもの」、そして「機能に障害を残すもの」です。
以下でそれぞれの意味を簡単に説明します。

「用を全廃したもの」

腕の三大関節と指の関節のすべてが動かなくなることを指します。

「用を廃したもの」

関節の強直、関節の完全弛緩性麻痺もしくはこれに近い状態(外からの力で動かせるが、自分で動かせる範囲が後遺症のない方の腕に比べ10%程度以下)にあるもの、または人工関節・人口骨頭を挿入した関節の可動域が後遺症のない方の腕に比べて2分の1以下に制限されているもの、のいずれかに当たることを指します。

「機能に著しい障害を残すもの」

関節の可動域が後遺症のない方の腕に比べて2分の1以下に制限されているもの、または、人工関節・人口骨頭を挿入した関節の可動域が後遺症のない方の腕に比べて2分の1以下までには制限されていないもの

「機能に障害を残すもの」

関節の可動域が後遺症のない方の腕に比べて4分の3以下に制限されているもの

上肢の醜状障害

上肢の露出面(肘関節より先)または下肢の露出面(膝関節より先)に、てのひらサイズ以上の大きさの傷跡・手術跡が残った場合は、後遺障害として14級に認定されることがあります。
醜状を対象とする後遺障害等級の認定については、痛みやしびれといった他の症状は認定のための条件となっていません。何も症状がなくても、見た目の問題だけで後遺障害等級が認定され得ます。

上肢の障害によって認定されうる後遺障害等級

上で紹介した上肢の障害・外貌醜状の概要と、それによって認められうる後遺障害等級を等級ごとにまとめました。
また、指関節・指についての障害も一緒にまとめています。

1級 両上肢をひじ関節以上で失ったもの、または両上肢の三大関節の用を全廃したもの
2級 両上肢を手首の関節以上で失ったもの
3級 両手の手指の全部を失ったもの
4級 一つの上肢をひじ関節以上で失つたもの、または両手の手指の全部の用を廃したもの
5級 一つの上肢を手首の関節以上で失ったもの、または一つの上肢の三大関節の用を全廃したもの
6級 一つの上肢の三大関節のうち2つの関節の用を廃したもの、または一つの手の全ての指もしくは親指を含む4つの指を失ったもの
7級 一つの手の親指を含む3つの指もしくは親指以外の4つの指を失ったもの、一つの手の全ての指もしくは親指を含む4つの指の用を廃したもの、または一つの上肢に偽関節を残り著しい運動障害が残るもの
8級 一つの手の親指を含む2つの指もしくは親指以外の3つの指を失つたもの、一つの手の親指を含む3つの指もしくは親指以外の4つの指の用を廃したもの、一つの上肢の三大関節中のうち1つの関節の用を廃したもの、または一つの上肢に偽関節が残るもの
9級 一つの手の親指もしくは親指以外の2つの指を失ったもの、一つの手の親指を含む2つの指の用を廃したもの、または親指以外の3つの指の用を廃したもの
10級 一つの手の親指もしくは親指以外の2つの指の用を廃したもの、または一つの上肢の三大関節中のうち1つの関節の機能に著しい障害を残すもの
11級 一つの手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの
12級 一つの上肢の三大関節中のうち1つの関節の機能に障害を残すもの、長い管状の骨(肘から肩までの長い骨や、肘から手首までの長い骨など)に変形が残るもの、一つの手の小指を失ったもの、または一つの手のひとさし指、なか指もしくはくすり指の用を廃したもの
13級 一つの手の小指の用を廃したもの、または一つの手の親指の指骨の一部を失ったもの
14級 一つの手の親指以外の指の指骨の一部を失ったもの、一つの手の親指以外の指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの、または上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの

それぞれの上肢の後遺障害が上記の表の中のどれに当たるのか、または当たらないのか、自分で判断するのは難しいものです。
できるだけ重い後遺障害等級の認定を得るためには、まずは当事務所までご相談ください。

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