交通事故で顔に傷を負った場合の慰謝料や後遺障害認定を弁護士が詳しく解説（外貌醜状）

交通事故で顔に傷を負った場合（外貌醜状）で請求できるお金とは

交通事故で顔に傷を負った場合、その程度により様々な損害賠償を請求できる可能性があります。

交通事故で顔に傷を負った場合の損害賠償

項目	説明
入通院慰謝料	交通事故の被害者が負った精神的苦痛に対する賠償
治療費	医療機関での治療にかかる費用全般（診察料、手術費、入院費、通院費など）
通院交通費	通院交通費 通院にかかる交通費（公共交通機関の運賃、タクシー代、自家用車のガソリン代など）
休業損害	事故のために仕事を休まざるを得なかった場合の収入の減少分
後遺障害慰謝料	顔に残った傷が後遺障害として認定された場合、その程度に応じた慰謝料。後遺障害等級に基づいて支払われる金額が算定
逸失利益	後遺障害によって将来の収入が減少することに対する補償。後遺障害等級と被害者の収入、年齢などを基に算定されます
顔の傷跡の美容整形費用	美容整形費用なども損害賠償の対象となることがあります

交通事故による顔の傷で後遺障害が残った場合の損害賠償

交通事故の顔の傷で後遺障害が残った場合、損害賠償の金額はさらに大きくなります。後遺障害として認定されるためには、医師の診断書や専門的な評価が必要です。外貌醜状の後遺障害等級は7級、9級及び14級があり、等級が高いほど慰謝料の額も増加します。
顔の傷の大きさ（手のひら大、鶏卵大、10円硬貨大）、長さ（3センチ、5センチ、手のひら大）によって、より高い等級が認定される可能性があります。

後遺障害に認定される顔の傷（外貌醜状）の程度と等級

交通事故に遭うと、顔など目につく部位にケガを負うことがあります。そして、そのケガの程度や状態によっては傷跡が後々まで残ってしまうこともあります。
知っておきたいのは、そのような傷跡（外貌醜状）について、後遺障害等級が認定される場合があるということです。
外貌醜状による後遺障害等級が認められる要件として、痛みやしびれ、運動障害などの症状は必要とされていません。つまり、見た目の醜状だけを理由として認定されるのです。
もちろん、どんな小さな傷跡についても後遺障害等級が認定されるわけではありません。腕・脚については手のひらサイズ以上の大きさ、首・頭部についてはタマゴ以上の大きさ、顔面については10円玉以上の大きさ（線状であれば３cm以上の長さ）の外貌醜状がある場合に、後遺障害等級は認定されます。
後遺障害等級が認められるための条件については、次に詳しく説明します。

交通事故で顔に傷を負った場合の後遺障害等級と後遺障害慰謝料

等級	後遺障害	自賠責基準慰謝料	裁判所基準慰謝料
後遺障害等級7級12号	外貌（顔）著しい醜状が残る傷跡	419万円	1000万円
後遺障害等級9級16号	外貌（顔）に相当程度の醜状が残る傷跡	249万円	690万円
後遺障害等級12級14号	外貌（顔）に醜状を残す傷跡	94万円	290万円

後遺障害等級7級12号　外貌に著しい醜状を残すもの

外貌に著しい醜状を残すものとは、以下のいずれかに当たる場合には外貌醜状で認められる等級のうち一番高い7級が認定されます。

部位	条件
頭部	手のひら（指は含みません）以上の大きさの皮膚が変性した傷跡
頭蓋骨	手のひらの大きさ以上の欠損
顔面	ニワトリの卵の大きさ以上の皮膚が変性した傷跡
顔面	10円玉の大きさ以上の組織陥没
頸部（首）	手のひらの大きさ以上の傷跡

このような基準が定められているものの、傷跡が「人目につく程度以上」に当たるかどうかは個人の主観によるところが大きいものです。

後遺障害等級9級16号　外貌（顔）に相当程度の醜状を残す傷跡

外貌（顔）に相当程度の醜状が残る傷跡とは、具体的には、顔にある長さ5cm以上の線状の痕で、人目につく程度以上のものが認められます。

部位	傷の種類
顔面	5cm以上の線状痕

後遺障害等級12級14号　「外貌（顔）に醜状が残る傷跡」

外貌（顔）に醜状が残る傷跡とは、以下のいずれかの瘢痕のうち、人目につく程度のものをいいます。

部位	条件
頭部	ニワトリの卵の大きさ以上の皮膚が変性した傷跡
頭蓋骨	ニワトリの卵の大きさ以上の欠損
顔面	10円玉の大きさ以上の皮膚が変性した傷跡、または長さ３cm以上の線状痕
頸部（首）	ニワトリの卵の大きさ以上の傷跡

また、外貌醜状を残すような事故にあわれた場合、以下のような後遺障害が残ってしまうことがあります。

後遺障害等級12～14級　まぶたの欠損障害

まぶたの欠損障害については、以下が後遺障害認定の対象です。

後遺障害等級9級4号	両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
後遺障害等級11級3号	1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
後遺障害等級13級4号	両眼のまぶたの1部に欠損を残し、又はまつげはげを残すもの
後遺障害等級14級1号	1眼のまぶたの1部に欠損を残し、又はまつげはげを残すもの

後遺障害等級12級　耳殻(耳介)の欠損障害

耳殻(耳介)の欠損障害とは、以下が後遺障害認定の対象です。もっとも、以下に当たる場合は、「著しい醜状」として7級にも該当し、より重たい7級と認定されることになります。

後遺障害等級12級4号

1耳の耳殻の大部分を欠損したもの、 または耳介の軟骨部の1/2以上を欠損したもの

後遺障害等級9級　鼻の欠損障害

後遺障害等級9級5号

鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの

なお、欠損ではなく機能に障害を残した場合は、臭覚脱失（12級）、臭覚の減退（14級）があります。

後遺障害等級12級14号　口のゆがみ

顔面神経麻痺は神経系統の機能障害にあたりますが、その顔面神経麻痺によって生じる口のゆがみは、醜状として12級14号に認定される可能性があります。

2個以上の瘢痕または線状痕

複数の瘢痕や線状痕が隣接するなどで、1つの瘢痕または線状痕と同等以上の醜状の場合、その面積や長さを合算して等級を決定します。

外貌醜状に男女の差はない

一般的に、男性よりも女性のほうが外貌醜状によって負う経済的・精神的ダメージは大きいかもしれません。実際に平成２３年２月から５月にかけて後遺障害等級表が改正されるまでは、同じ程度の外貌醜状であった場合に女性は男性よりも重い後遺障害等級が認定されていました。
しかし、平成23年に改正された後遺障害等級表が施行されてからは、外貌醜状の等級認定基準に性別による違いは設けられていません。
現在は被害者が男性であっても女性であっても、同じ程度の傷跡であれば同じ等級が認定されるということです。

手術跡も外貌醜状として認められる

交通事故によって直接負った傷の跡だけではなく、交通事故のせいで手術が必要となり、その手術跡が残った場合は、その手術跡も外貌醜状として認められる可能性があります。
手術跡についても、認定の基準は他の外貌醜状と同様です。手術後に傷跡がくっついて炎症が治まり、「もうこれ以上は治らない」という状態になったときの傷跡の大きさ・見た目で後遺障害等級が認定されるかどうかが判断されることになります。

交通事故による顔の傷で後遺障害認定を受ける5つのポイント

1.交通事故発生から症状固定までの治療期間は6か月以上？

症状固定とは治療を継続しても、症状の改善が見込めない状態をいいます。症状固定は、交通事故から6ヶ月を一つの目安としています。しかし、合理的な根拠はなく、神経症状で後遺障害等級を獲得するためには、最低6ヶ月の経過が必要だということに過ぎず、あくまで一つの目安です。
後遺障害認定には症状固定をいつとするかが重要です。弁護士に依頼していただくことで、治療の延長が見込める場合があります。
医師が、改善が見込めない「症状固定」と判断したところからが、後遺障害等級認定の手続きが始まります。

2.後遺障害認定の申請は被害者請求で

後遺障害等級認定の手続きには、被害者請求と事前認定の2つの方法があります。

種類	説明
被害者請求	被害者自身または、その代理人弁護士が申請手続きを行う方法
事前認定	相手方の保険会社に申請手続きを任せる方法

等級認定には上記2つの方法がありますが、資料を被害者が集めるのか、相手の保険会社に任せるのかの違いです。どちらが主導権を握るのかということが、大きな違いであり重要な違いです。
事前認定の場合、任意保険会社が、必要な資料を収集してくれます。
一方、被害者請求の場合、後遺障害診断書等の必要書類を自分で準備し、相手の保険会社を通すことなく、自賠責保険会社に対して書類を送付します。
被害者請求に必要な書類は主に次の書類です。

被害者請求に必要な書類

• 保険金支払請求
• 交通事故証明書
• 事故発生状況報告書
• 診断書、診療報酬明細書（施術証明書、明細書）
• 後遺障害診断書

交通事故による顔の傷跡は弁護士に相談することもご検討ください。交通事故専門の弁護士は、後遺障害等級認定の手続きに精通しており、申請書の作成や必要書類の準備、保険会社との交渉などをサポートしてくれます。また、適切な等級認定を受けるために必要なアドバイスを提供してくれるため、認定の確率が高まるとともに、慰謝料の増額も期待できます。弁護士費用特約を利用すれば、費用の心配もありません。

3.後遺障害認定基準の該当を申請書でアピール

交通事故により顔に傷を負った場合の後遺障害認定の申請書には、認定基準に該当することを具体的に示す必要があります。顔の傷については、傷の大きさや位置、深さなどが重要な判断基準となります。医師の診断書に加えて、傷の状態を詳細に説明する文章や写真を添付し、申請書を作成します。

4.後遺障害診断書の内容がもっとも重要

後遺障害等級の認定において、もっとも重要なものは後遺障害診断書及びそれに付随する医師作成の書類です。後遺障害診断書の記載内容に不備や漏れがあると、適正な認定がなされず、適正な賠償金を得ることができません。また、自賠責法上の後遺障害について、詳しい医師はほとんどいません。どちからといえば、医師は、後遺障害診断書を書くことを嫌がります。その書類が、被害者の人生を左右する書類である認識がない方がほとんどです。

5.醜状障害については面接審査対策を

交通事故による顔の傷が醜状障害として認定される場合、面接審査が行われることがあります。この際、傷の状態を正確に伝えるために、事前にどのように説明するかを練習しておくと良いでしょう。弁護士に相談することで、効果的な説明方法や面接対策についてアドバイスを受けることができます。
交通事故による顔の傷で後遺障害認定を受けるためには、適切な準備と専門家のサポートが不可欠です。被害者請求を行い、必要な書類を整え、認定基準に該当することを明確に示すことで、適正な後遺障害等級を得ることができます。

交通事故で顔に傷を負った場合（外貌醜状）の逸失利益

では、外貌醜状による逸失利益は認められるのでしょうか。
「逸失利益」とは損害賠償の項目の一つで、もし交通事故に遭っていなければ得られるはずであった利益（事故に遭ってしまったために得られなくなった利益）のことです。

この逸失利益は以下の式によって計算されます。

被害者の事故前の収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応する中間利息控除係数

この「労働能力喪失率」は後遺障害等級ごとに定められて一覧表になっていますが、外貌醜状の場合はこの表のとおりの喪失率が認められることは少ないです。なぜなら、外貌醜状は物理的な身体の機能を損なうものではないからです。喪失率は0％である（つまり逸失利益なし）と認定されることもあります。しかし、外貌醜状の程度がひどい場合には、20％ほどの喪失率が認められた事案もあります。

また、見た目が労働能力に及ぼす影響の程度は職業やその仕事内容によって異なります。被害者が女性である場合のほうが喪失率は大きく認定される可能性が高くなります。これは、男女差というよりも、女性特有の職業やその仕事内容によるものです。
つまり、逸失利益が認められるかどうかは職業や性別など個々の状況によりますし、仮に認められたとしても、表の労働能力喪失率より小さくなります。

【裁判例】顔面の外貌醜状による逸失利益を認めた裁判例と認めなかった裁判例

逸失利益を認めた裁判例

41歳男性、口唇に線状痕、後遺障害9級、逸失利益35％（さいたま地裁平成27年4月16日判決）

事案の概要
・ 被害者：41歳、男性
・ 後遺障害等級：9級（口唇部に5cm以上の線状痕）
・ 職業：自動者運転手（貨物の搬出搬入、運送）

裁判所の判断
外貌醜状による精神的苦痛に加え、顧客対応を行う機会があることから、接客への支障や昇進への影響などを考慮し、逸失利益35％を認定

ポイント
● 具体的な影響は考慮せず、「男性においても外貌醜状をもって後遺障害とする制度が確立された以上、職業のいかんを問わず、外貌醜状があるときは，原則として当該後遺障害等級に相応する労働能力の喪失があるというのが相当」と判断していることに特徴があります。
● 男女区別なく、職業の区別なく、外貌醜状による逸失利益を認めたということに一定の意義があるように思います。もっとも、具体的な考慮なく、制度設計でそうなっていると判断していることは他の裁判所でも通じるとは言いにくいのではないでしょうか。

19歳男性、顔面の外貌醜状、後遺障害併合14級、逸失利益5％（横浜地裁平成24年3月29日判決）

事案の概要
・ 被害者：17歳（事故時）
・ 後遺障害等級：併合14級
・ 職業：学生

裁判所の判断
症状固定時に就職。将来的に営業部門への配属の可能性を考慮、顔の傷が仕事の能率や意欲に影響を与える程度は大きくなる。また、労働能力喪失期間の制限をすべき合理的根拠はないとして、逸失利益5％、労働能力喪失期間48年を認定した。

ポイント
● 外貌醜状が将来の職種、仕事への意欲に与える不利益を認めている点が評価できる。

 

逸失利益を認めなかった裁判例

10歳男児、外貌醜状、後遺障害併合7級、外貌醜状による逸失利益不認定（東京地裁平成4年1月21日判決）

事案の概要
・ 被害者：10歳（症状固定時の年齢不明）
・ 後遺障害等級併合7級
・ 職業：学生

裁判所の判断
外斜視、外貌醜状ともに、労働能力喪失率を増加させるに足りる後遺障害とは認められない。

ポイント
● 右眼外斜視12級、右眼失明により併合7級となっている。外貌醜状による逸失利益はみとめられなかったものの、他の後遺障害により逸失利益は認定されている。

交通事故で顔に傷を負った場合は弁護士にご相談ください

交通事故に遭いでお悩みの方、交通事故により顔に残った傷跡（外貌醜状）についても、交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
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また、保険会社が被害者の立場を十分に考慮してくれることは基本的にありません。一見、親切に見える対応も、示談を円滑にすすめるための交渉術に過ぎないのです。

しかし、専門の弁護士に手続き依頼すると、示談に必要なすべての手続きを専門家が担当します。我々が主体的に交渉を進めて参ります。資料や証拠の収集も出来る限り弁護士が行い、こちらの主張を立証して、交渉の過程で有利な立場を確保しやすくなるメリットがあります。当事務所には、保険会社の対応を熟知した大手保険会社の顧問事務所での勤務経験を持つ弁護士が在籍しておりますので、保険会社との交渉は安心してお任せいただけます。

2.正確な被害者請求で適切な後遺障害等級認定をサポート

被害者請求では、申請に必要な検査を行い、必要な書類や診断書を不備や漏れがないよう揃えるなど、準備や手続きが複雑です。
交通事故に詳しい弁護士に依頼することで、弁護士が依頼者に代わり申請に不備がないよう資料を全て確認し、被害者請求をします。

後遺障害等級認定に強いキャストグローバルの弁護士なら、適正な後遺障害等級の認定を受けるためのポイントを知っています。後遺障害診断書の的確な記載方法だけでなく、見逃されがちな症状を明らかにし、もっとも重要な後遺障害診断書の不備を防ぎ、時には、追加で資料を用意致します。

3.交通事故対応を弁護士に依頼することで賠償金が増額する可能性が高い

弁護士に依頼した時点で、3つの基準で最も高い弁護士基準（裁判基準）で請求をしてもらえるため、初期の提示額よりも、増額されるケースがほとんどです。また、保険会社は、外貌醜状における逸失利益はないと言ってくることが多いですが、弁護士に依頼頂くことで、認めてもらえる可能性があります。

交通事故の経験豊富な弁護士に依頼すれば、保険会社の実情を踏まえて被害者にとって有利な条件を引き出すための交渉テクニックを駆使したり、必要に応じて様々な仲裁機関（紛争処理センターなど）の和解あっせんを利用したり、最終手段として場合によっては裁判を起こすなどして、弁護士基準・裁判基準での和解、もしくはこれに近い金額での示談の可能性が高くなります。

交通事故の相談無料・着手金0円、弁護士費用特約で費用の心配はありません

当事務所は、相談料無料・着手金0円にて受け付けております。
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顔の傷跡（外貌醜状）に関する解決事例

顔面、頭部の傷痕で後遺障害等級を獲得　賠償金が384万7998円アップした事例

後遺障害等級：12級15号を獲得
受傷部位：顔面、頭部

顔の傷跡（外貌醜状）よくあるお悩みと解決方法

お悩み：交通事故による顔の傷跡が原因で就職活動に支障が出ています。どのように対応すればいいでしょうか？
回答：交通事故による顔の傷跡が就職活動に影響を与えている場合、逸失利益として将来の収入減少分を補償請求することが可能です。

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