低髄液圧症候群の症状と後遺障害として認定される為に必要なこと

低髄液圧症候群とむち打ちの違い

ここ数年、交通事故に関連して「低髄液圧症候群」という言葉をよく聞くようになりましたが、これは一体どのような症候群なのでしょうか。

低髄液圧症候群とは、交通事故の衝撃などによって髄液が漏れ出すことで、頭痛や吐き気めまい耳が聞こえにくくなるといった様々な症状を発症することです。

脳と脊髄は、一つの閉じた空間(脳脊髄腔)に一緒に包まれています。この空間を満たしているのが脳脊髄液という液体なのですが、これが外部からの衝撃によって漏れ出してしまうことで体調不良が起こる、これが低髄液圧症候群のメカニズムと考えられています。

この低髄液圧症候群はむち打ちと症状が似ていることから、一時期はむち打ち症の原因なのではないかと取りざたされた事がありました。
しかし現在は、低髄液圧症候群の研究は十分に進んではいないものの、むち打ちと低髄液圧症候群は全く別の物だと捉える考え方が一般的となっています。

両者の大きな違いとして、むち打ちの場合は立ち上がった時に頭痛がするという症状がないというのが挙げられます。
また後遺障害の残る期間の長さも異なり、むち打ちは一般的に半年程度で症状がなくなるのに対し、低髄液圧症候群の場合は治療しなければ数年以上も症状が続くことが多いのです。ただしこれは個人差が大きいので、「症状が長く続いているからむち打ちでなく低髄液圧症候群だ」などと断定することはできません。

このように関係ないと考えられている両者ですが、むち打ちを負うことで脳脊髄腔にも損傷が生じ、低髄液圧症候群を起こす可能性はあると考えられています。

低髄液圧症候群はどんな症状が出るのか

低髄液圧症候群の代表的な症状は、頭痛(特に起き上がる時の頭痛)、吐き気、めまい、耳が聞こえにくくなる、首の痛み、全身の倦怠感、耳鳴りなどです。
こういった症状が交通事故後に何日も続くようであれば、低髄液圧症候群かもしれません。

こうした症状は貧血や風邪など、他のよくある体調不良によっても引き起こされるものです。そのため、つい見逃してしまい、治療の開始が遅れることも多くあります。
交通事故後はショックで混乱していますし、保険関係の手続で慌ただしいものなので、微妙な体調の変化をなおざりにしがちではあります。
しかし、自分の身体の声にしっかりと耳を傾け、どんなに小さな違和感も見逃さないようにお医者さんに伝えるようにしましょう

低髄液圧症候群の検査と診断

低髄液圧症候群については未だ研究が十分に進んでいないため、その検査方法と診断基準は統一されておらず様々です。

ただし、厚生労働省の研究班が以下の3通りの検査を用いた画像判定基準を作成しています。

  • 脊髄MRI/MRミエログラフィー
  • RI脳槽シンチグラフィー
  • CTミエログラフィー

こちらの基準は、信頼性の高いものとして裁判でも用いられています。

低髄液圧症候群の治療方法

低髄液圧症候群であるとの診断を受けた場合、まずは数週間安静にして様子をみることになります。同時に、十分な水分を摂取するよう心がけましょう。
場合によってはお医者さんの判断で点滴が施されることもあります。

2週間ほど安静にしてもあまり回復せず、かつ、画像検査で髄液が漏れていることが確認できたときは、硬膜外自家血注入療法(ブラッドパッチ)という治療法が用いられます。
これは、髄液の漏れたあたりに患者本人の血液を注射して、血液が広がることによって髄液の漏れている穴を塞ぐという治療法です。

100%これによって治癒するわけではありませんが、複数回このブラッドパッチを繰り返せば、50%~70%の確率で満足のいく結果が得られるとされています。

注意点として、ブラッドパッチテストは比較的安全な治療法と言われていますが、副作用が出る場合もあります。
代表的な副作用としては、注入部あたりの痛みが上げられます。また、人によっては失禁、しびれなどの副作用が生じることがありますので、ブラッドパッチテストの前には医師からしっかり説明を受け、副作用で慌てないようにしましょう。

低髄液圧症候群の後遺障害等級

治療しても症状が残ってしまった場合、低髄液圧症候群について認められる後遺障害等級は以下のとおりです。

  • 14級(局部に神経症状を残すもの)
  • 12級(局部に頑固な神経症状を残すもの)
  • 9級(神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの)

上述のとおり、低髄液圧症候群は研究が十分に進んでいないため、後遺障害等級認定を得るのは未だハードルが高いというのが現状です。

後遺障害等級認定を受けるためには、まず事故後のできるだけ早い段階で脳神経外科の専門医の診察を受けることが重要です。
その際、自分の症状についてできるだけ詳しく説明できるよう、事前に説明内容をまとめておくようにしましょう。

低髄液圧症候群の一番の特徴は立ち上がった時に起こる頭痛です。
こうした頭痛がある場合は特に、忘れないように問診で伝えるようにしてください。

その他にも、症状の伝え方の大事なポイントを押さえておくために、当事務所に一度ご相談いただければと思います。

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