交通事故に遭い、頭を強く打つと「びまん性軸索損傷」となることがあります。
びまん性軸索損傷になると、脳が機能しなくなり、仕事ばかりか日常生活にも支障が発生することも多いので、日常生活への影響が非常に大きいです。
以下では、びまん性軸索損傷の症状や治療方法、認定される後遺障害などについて、交通事故に詳しい、キャストグローバルの弁護士が解説いたします。

びまん性軸索損傷とは

びまん性軸索損傷についての基本的な知識

びまん性軸索損傷(びまんせいじくさくそんしょう)とは、脳に強い衝撃を受けることにより、脳の線維組織が広くダメージを受ける傷病です。特に、交通事故では、強い衝撃を受けることがあり、その衝撃が頭部に伝わった場合、びまん性軸索損傷となることがあります。

軸索は、脳の神経細胞の1種で、情報を伝達するはたらきをする重要な組織です。
びまん性というのは、局所性に対する言葉で、全体に広がっているということを意味します。びまん性軸索損傷とは、脳内の神経細胞が、広い範囲で損傷を受けたり断裂してしまったりした状態と言えます。

損傷の程度により、症状が軽いケースも重いケースもあります。
軽い場合には日常生活や仕事を続けることもできますが、酷くなると、自分ではほとんど何もできなくなってしまうこともあります。

まん性軸索損傷の特徴は、意識障害を伴うことです。自賠責の後遺障害認定基準においても、受傷後の意識障害がポイントとなっています。

びまん性軸索損傷の原因と、脳挫傷との違い

びまん性軸索損傷の原因は、脳が強く揺すられることです。特に回転性の衝撃を受けると、発症しやすいとされています。乳幼児揺さぶられ症候群の一つに、びまん性軸索損傷があります。
脳挫傷とは異なり、頭部に外傷がなくても、脳が揺すられると、びまん性軸索損傷になってしまう可能性があります。特に、乳幼児は、首が座っておらず、頭蓋骨に隙間があり、骨が柔らかいので、頭部に外傷がなくてもびまん性軸索損傷になりやすいです。
また、脳挫傷の場合には、傷害を負った部分について、脳が局所的に損傷しますが、びまん性軸索損傷の場合には、全体が損傷を受けるという点で、大きな違いがあります。

びまん性軸索損傷の症状

びまん性軸索損傷になった場合、脳の神経線維がダメージを受け、脳の認知機能が低下することが多いです。
具体的には「高次脳機能障害」の症状が顕れます。
高次脳機能障害の典型的な症状としては、以下のようなものがあります。

記憶障害

物事を覚えていられなくなる症状です。たとえば、日付や曜日、自分のいる場所などを認識できなくなります。

注意傷害

集中力がなくなって、1つのことに長時間取り組むことができなくなったり、人の話を聞くことができなくなったりします。

遂行機能障害

ものごとをやり遂げることができなくなる症状です。
たとえば、自分で計画を立てられなくなったり、言われたことしかできなくなったり、効率的に仕事ができなかったり、優先順位を付けて段取りよく物事をこなせなくなったりします。

社会的行動障害

社会内で、適切な行動をとることが難しくなります。やたらと感情的になって暴れたり、子どもっぽくなったり、場違いな発言・行動をしたりします。
交通事故後、「性格が変わった」と思われることもあります。

失語症、失行症、失認症

言葉を発せられなくなったり、道具を使えなくなったりぎこちなくなったり、物事を認識できなくなったりします。
他に、麻痺や運動障害などが起こるケースもあります。

また、びまん性軸索損傷では、事故後しばらく(6時間以上)意識障害が起こる特徴がありますが、そのときの昏睡状態が長くなるほど、重症化しやすいです。
意識障害が24時間以上になると脳幹にまで障害が及んでいる可能性があり、死亡率も高まります。

びまん性軸索損傷の診断基準

びまん性軸索損傷で後遺障害認定を受けるには、傷病の存在を証明する必要があります。
以下では、どのようにしてびまん性軸索損傷を判断するのか、診断基準をご説明します。

画像検査で異常を確認できることが必須

「びまん性軸索損傷の症状がある」と言えるためには、基本的に、画像所見によって異常が見られる必要があります。
頭蓋骨骨折の場合にはレントゲンではっきり異常が見られますし、脳挫傷や脳内血腫ができた場合などには、CT画像にて異常所見が見られます。
ただ、外傷のないびまん性軸索損傷の場合、上記のような方法では異常を発見できず、MRIによる画像検査結果が必要です。

そして、びまん性軸索損傷では、事故直後と急性期、慢性期、それぞれにおいて、得られる画像データの内容が異なります。

  • 受傷当日

    びまん性軸索損傷の場合、脳の神経組織全体がダメージを受けるものですから、受傷当日には、異常が見られないことがあります。ただ、微細な血管損傷を伴う場合には、脳内に点状の出血や脳室出血が認められるケースもあります。

  • 急性期

    受傷後数日間の急性期には、脳内の点状出血が拡大して脳内血腫になることがあります。そこで、受傷当日には異常が見られなくても、数日後にMRI撮影をすると、異常を発見できるケースがあります。
    ただ、点状の出血は拡大を続けることはなく、ほとんどのケースにおいて、そのまま消失します。

  • 慢性期

    事故後1週間~3ヶ月くらい経って慢性期に入ってくると、脳が全体的に萎縮する傾向があります。脳の中心にある「脳室」という空間が拡大することにより、脳全体が小さくなってしまうのです。これは、頭部の衝撃で神経線維である軸索が減ってしまうことにより、代償として脳室が拡大しているのです。事故当初のMRIと慢性期のMRIを比べたときに明らかに脳室が拡大している場合、びまん性軸索損傷と診断される可能性が高いです。

意識障害との関係

びまん性軸索損傷の判定に際しては、意識障害も関係します。
自賠責保険でびまん性軸索損傷を判定するときの判断基準は、以下の通りです。

  1. 昏睡以上の意識障害が、受傷後6時間以上継続することまたは
  2. 軽度の意識障害が1週間続くこと

ただし、上記の基準に達していない場合でも、「一定の意識障害」があるとして、びまん性軸索損傷が認められる例もあります。

びまん性軸索損傷の治療方法

びまん性軸索損傷になると、根本的な治療は困難です。脳が局所ではなく全体的に傷害を受けてしまっていますし、一度損傷を受けた神経組織を元の状態に戻すことは、現在の医学では難しいからです。
治療としては、対処療法が基本となります。たとえば血腫がある場合には除去したり、合併症を防いだりして、状態が悪化しないようにします。
高次脳機能障害のさまざまな症状と付き合いながら一生過ごしていかなければならないので、周囲による理解と支援が必須です。

びまん性軸索損傷で認定される後遺障害の等級

びまん性軸索損傷で高次脳機能障害となると、さまざまな精神障害が発生しますので、基本的にはその程度により、後遺障害の等級が認定されます。
このとき、社会生活を送るために必要な、以下の4つの能力を考慮することがあります。

  • 意思疎通能力(他人とのコミュニケーション能力)
  • 問題解決能力(理解力や判断力)
  • 作業を課されたときの持続力や持久力(一定時間、作業を続けられるか)
  • 社会行動能力(状況にそぐわない不適切な行動がないか)

具体的には、医師による意見書や、家族による日常生活状況の報告書などの資料をもって、個別的に判断をします。
びまん性軸索損傷で認められる後遺障害の等級は、以下の通りです。

  • 3級(1つ以上の能力を全部損失または2つ以上の能力を大部分喪失)
  • 5級(1つ以上の能力を大部分喪失または2つ以上の能力を半分程度喪失)
  • 7級(1つ以上の能力を半分程度喪失または2つ以上の能力を相当程度喪失)
  • 9級(1つ以上の能力を相当程度喪失)
  • 12級(1つ以上の能力を多少喪失)
  • 14級(1つ以上の能力をわずかに喪失(画像所見なし)

びまん性軸索損傷で後遺障害認定を受ける方法

びまん性軸索損傷によって後遺障害認定を受けるためのポイントは、以下の通りです。

事故直後にMRI撮影を行う

まずは、交通事故直後に病院に行き、MRI撮影を行うことです。びまん性軸索損傷では、事故当初に出血などの異常を発見できることがあり、それを記録に残しておくと、後にびまん性軸索損傷を証明しやすくなります。事故後しばらくすると、こうした症状は消失しますので、直後に保存しておくことが重要です。
細かい出血はCTやレントゲンには写らないので、MRI検査を受けることもポイントとなります。

こまめにMRI撮影を続ける

びまん性軸索損傷では、事故直後だけではなく、事故後の経過が重要です。だんだんと脳室が拡大していくことを確認できれば、びまん性軸索損傷である可能性が高まるからです。
そこで、事故後はこまめに病院に通い、当初は数日~1週間おきくらいで、こまめにMRIによる撮影を行いましょう。検査方法について、詳しくは、医師と相談して決めると良いでしょう。

精度の高いMRI検査機器を使う

びまん性軸索損傷の照明のためには、MRIによる画像が非常に重要ですが、MRI検査機器には、精度の低いものと高いものがあります。
特に初期の出血などについては、精度の低いものには異常が写らなくても、精度の高いものでは異常が写ることがあります。
MRI検査機器の精度の単位は「テスラ」と言いますが、一般に0.5テスラから3.0テスラのものまであります。
そこで、特に事故直後の急性期には、3.0などの高精度の検査機器を使って検査を受けることが重要です。そのためには、事故当初から、適切な病院を選ぶことも必要となってきます。最先端の検査機器を使っている病院を探して通院しましょう。

弁護士に依頼するメリット

びまん性軸索損傷となったときに弁護士に対応を依頼すると、弁護士が、後遺障害認定を受けるために適切な検査方法や対応方法をアドバイスします。
また、弁護士が後遺障害認定請求の手続きを代行して、「被害者請求」の方法で進めるので、被害者に有利な資料を積極的に提出できます。これらのことにより、ご自身で後遺障害認定申請をするよりも、弁護士が対応した方が、確実に高い等級の認定を受けやすくなります。

また、後遺障害認定を受けた後、弁護士が示談交渉をするときには、「弁護士基準」が適用されるので、被害者の方がご自身で示談交渉をされる場合と比べて、大きく賠償金の金額がアップします。

以上のように、びまん性軸索損傷となったときに弁護士に対応を依頼すると、いろいろなメリットがあります。

びまん性軸索損傷が疑われるなら、キャストグローバルにお任せ下さい

びまん性軸索損傷になったとき、適切に後遺障害認定を受けるためには、弁護士によるサポートが必要となります。
キャストグローバルは、交通事故被害者の方のサポートに非常に注力している専門事務所です。適切に後遺障害認定を受けてより高い賠償金を獲得するため、是非とも一度、ご相談ください。

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