交通事故の治療費は、誰にどうやって請求できるのか

治療費は自分で立て替えるべきなのか

交通事故の被害に遭ってケガをしたら、多くの人はすぐに病院に行って治療を受けます。
しかし、その場合の治療費は自分で払うべきなのでしょうか。

これについては、まずは被害者自身で治療費を支払うのが原則です。
そして後日、治療費を他の損害と合わせて、損害賠償金として加害者に請求することになるのです。
そのため、自分で治療費を立て替えた場合は必ず領収書を保存しておくようにしましょう。

ただし、加害者が任意保険に加入している場合は、「一括払い」という制度が使えることがあります。
これは、任意保険会社が、自賠責保険会社の負担すべき分も含む治療費を一旦立て替えて病院に支払い、後から自賠責保険会社にその負担分を請求するという制度です。

被害者にとっては、すぐに治療費を支払ってもらえること、そして自賠責保険会社と任意保険会社それぞれに対して治療費を請求する手間が省けること、といったメリットがあります。

一方で、弁護士に依頼せずに、後遺障害認定の申請をも任意保険会社に任せる場合、後遺障害認定が受けにくくなるかもしれないというデメリットはあります。
また、慰謝料等も全て任意保険会社を通じて受け取ることになるため、示談の成立が遅れるとその分だけ損害賠償金の支払も遅れてしまいます。
(ただし、治療費は、示談前であっても支払われることがほとんどです。)

交通事故によるケガの治療に健康保険が使えない?

よくある誤解の一つに、「交通事故で負ったケガの治療には健康保険が使えない」というものがあります。
しかし、そんなことはまずありません。交通事故によるケガの治療にも健康保険は使えます。
そのため、一括払い制度を使わず自分で治療費を立替払いする場合には、健康保険を使って負担を軽くしましょう。

ただし、ちょっとした手続が必要になります。
加入している公的医療保険に交通事故にあった旨を連絡し、「第三者行為による傷病届」や「負傷原因報告書」など、全部で7枚程度の書類を作成して提出しなければならないのです。
事故直後でバタバタしてしまって書類を作成する余裕がない場合は、まずは事故の状況だけでも連絡するようにしてください。

保険会社から治療費の支払いを打ち切られた場合

任意保険会社からの治療費立替払いは、ケガの治療の途中で突然打ち切られてしまうことがあります。一括対応を打ち切って、示談を進めようとしてくるのです。

これには理由が2つあります。
一つは、治療費が自賠責でカバーできる額を超えてしまうと、その分は任意保険会社が負担することになってしまうため、治療費の総額を低く抑えるためです。
もう一つは、通院が長くなるとそれだけ慰謝料も高くなるので、通院を打ち切らせる事で慰謝料の金額も抑えるためです。

では、支払いを打ち切られた場合はどうすればよいのでしょうか。

まず考えられるのは、主治医に自分のケガの状態を確認し、まだ治療が必要であることを保険会社に伝えて、支払いを継続してもらえるよう交渉することです。
注意すべきなのは、症状固定かどうかは期間で決まるものではないということです。

次に考えられるのは、とりあえず自分で治療費を支払い、後から保険会社に請求することです。
症状が固定するまでの治療費はもともと、被害者が保険会社に請求できるものです。そのため、保険会社が一方的に立替払いを打ち切った後の治療費も、当然請求することができます。
自分で治療費を支払う場合には、上述のように健康保険を利用して負担を軽くしましょう。

治療費の支払いが経済的に厳しい場合

一括払い制度を使わない場合や、保険会社から治療費の支払いを打ち切られた場合で、被害者が自分で治療費を支払うのが経済的に厳しいときにはどうすればよいのでしょうか。

まずは、被害者自身が加入している任意保険に人身傷害補償特約がついていないかどうか確認しましょう。
これは、自分が事故でケガをした場合に、過失割合や示談の成立に関係なく限度額の範囲で保険金が支払われるという特約です。
速やかに、損害を受けた分だけ全額補償してもらえるので、この人身傷害補償特約が使えればそれが一番です。

他の手段としては、自賠責保険の「仮渡金」という制度を使うことができます。
自賠責保険の保険金は、請求から支払までにある程度の日数がかかります。しかし、事故直後は急な出費が嵩むため、一刻も早く保険金を支払ってほしいと思っている被害者が多くいます。そういった被害者(や遺族)を経済的に支える制度としてできたのが「仮渡金」です。

加害者が加入する自賠責保険会社に対して被害者側が直接請求することで、死亡の場合は290万円、傷害の場合は程度に応じて5万円、20万円、または40万円が即刻支払われます。
ただし、これを使えるのは1回だけです。
また、もらった仮払金よりも実際の損害額が小さいことが後からわかった場合は、もらいすぎた分は返さなければなりません。

複数の病院で治療を受ける場合の注意点

交通事故で複数のケガを負った被害者が、複数の病院に通院することもあります。
例えば、脚の骨折を治療するために整形外科へ入院し、顔の傷を治療するために形成外科へ通院するといった具合です。

また、1つのケガであっても複数の病院で治療する場合があります。
引っ越しの都合で病院を転院する場合や、通い易さを考えて大きな総合病院から近所にある小さなクリニックへ転院する場合などです。

以上の場合はどれも必要な治療であるため、複数の病院でかかった治療費の全てが損害賠償として保険会社や加害者に請求できます

しかし、1つの症状について同時に複数の病院にかかり、同じ検査を重複して行った場合などは、不必要な治療であったとして重複分の治療費の請求が認められない可能性が高いです。
複数の病院に通院する場合は治療内容が重複しないよう、医師に別病院で行った検査内容等を伝えるようにしましょう。

交通事故のプロに依頼することが最適

繰り返しになりますが、保険会社は、治療費や休業補償を低く抑え、示談金を少なくさせるために、症状固定を迫ってきます。

そろそろ事故から3か月(半年)経ちましたので、症状固定ですねと言ってきます。
ある程度期間の目安は必要ですが、症状固定かどうかは期間で決まるものではありません。

その場合はなるべく早く当事務所にご相談下さい、そんな不当な治療打ち切りを許しません。

無料相談も行っておりますので、まずは早めの段階でお気軽にご相談ください。

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