嫡出否認の訴え 改正で母・子も対象に!2024年からの変更点を弁護士が解説

監修者 弁護士法人キャストグローバル

離婚部弁護士

離婚後すぐの出産で、子どもが前夫の戸籍に入ってしまうのではないか、あるいは、血縁のない子が戸籍に入ったままで、訴えを起こす期間が過ぎてしまったのではないかと、お悩みかもしれません。
今回の法改正により、これまで諦めていたケースでも、親子関係を戸籍に正しく反映できる可能性があります。
この記事を読めば、ご自身の状況に照らし合わせて、「今すぐ嫡出否認の訴えを起こすべきか」「誰が原告となって手続きを進めればよいか」を判断できるようになります。

この記事でわかること

・ 2024年の法改正による嫡出否認制度の主な変更点
・ 新しい制度の対象となる子の条件と、法改正前に生まれた子への救済措置
・ 嫡出否認の訴えを家庭裁判所で進める具体的な手続きの流れ
・ 手続きを円滑に進めるために弁護士へ相談するメリット

そもそも嫡出否認の訴えとは?「離婚後300日問題」との関係を解説

そもそも嫡出否認の訴えとは?「離婚後300日問題」との関係を解説
嫡出否認の訴えとは、法律上、夫の子(嫡出子)と推定されている子どもについて、その父子関係を否定するために家庭裁判所に起こす裁判手続きのことです。
民法では、妻が婚姻中に妊娠した子どもは夫の子と推定する「嫡出推定」という原則があります。
この原則は、離婚後300日以内に生まれた子どもにも適用されるため、実際には別の男性との間の子であっても、戸籍上は元夫の子として扱われてしまう問題、いわゆる「離婚後300日問題」が生じていました。

この問題を解決し、生物学上の父子関係と法律上の父子関係を一致させるために必要な法的手続きが、嫡出否認の訴えです。
この長年の問題に対応するため、2024年4月に民法が大きく改正されました。

【2024年4月1日施行】民法改正による嫡出否認制度の3つの大きな変更点

【2024年4月1日施行】民法改正による嫡出否認制度の3つの大きな変更点
2024年4月1日に施行された民法の法改正は、嫡出否認制度に大きな変化をもたらしました。
特に「離婚後300日問題」や、それに伴う無戸籍問題の解決を目指すものであり、当事者の負担を軽減するための重要な内容が含まれています。
主な変更点は「訴えを起こせる人の拡大」「提訴期間の延長」「再婚後の出産に関する新ルールの創設」の3つです。

1. 訴えを起こせる人に母と子が追加

これまでの制度では、嫡出否認の訴えを起こせるのは夫のみに限定されていました。
そのため、夫が協力的でない場合や行方不明の場合、母親や子ども自身の意思では法律上の親子関係を解消することができず、大きな課題となっていました。

今回の改正により、夫だけでなく、新たに母と子も訴えを起こすことが可能になりました。
これにより、母親や子どもの側から、主体的に血縁関係に基づいた正しい戸籍を形成する道が開かれました。

2. 訴えを提起できる期間が1年から3年に延長

嫡出否認の訴えを提起できる期間も大幅に延長されました。
改正前は、夫が子の出生を知った時から1年以内と非常に短く、この期間を過ぎると訴えが認められませんでした。
今回の改正では、この出訴期間が原則として「子の出生を知った時から3年」へと延長されています。

提訴権者が拡大されたことに伴い、訴えを起こす人によって期間の起算点が異なります。
母は子の出生から3年、父と子の場合は、子の出生を知った時から3年とされました。
これに加えて、子は、(元)夫と継続して同居した期間が3年を下回る等の要件を満たすときには、21歳に達するまで(出生の時から3年が経過した後も)、申立てができます。
これらの変更により、当事者の事情に配慮した柔軟な対応が可能になりました。

3. 女性が再婚後に出産した場合、再婚相手の子と推定

今回の改正で最も大きな変更点の一つが、女性が離婚後に再婚し、その再婚後に出産した場合のルールです。
これまでは、たとえ再婚後であっても離婚から300日以内に出産した場合は、前夫の子と推定されていました。
しかし新制度では、出産時に女性が再婚していれば、その子どもは現在の夫(再婚相手)の子と推定されることになります。
実態に合わせた当然の結果ですが、やっと適正に変更がされました。

これにより、「離婚後300日問題」の多くのケースが、嫡出否認の訴えという裁判手続きを経ずに解決できるようになりました。

改正後の新制度が適用されるのは子どもの生まれた日から

改正後の新制度が適用されるのは子どもの生まれた日から
改正後の新しい嫡出否認制度が適用されるのは、原則として、改正法の施行日である「2024年4月1日以降に生まれた子」です。
したがって、この日以降に生まれた子については、母や子も訴えを起こすことができ、提訴期間も3年となります。
また、母親が再婚した後に生まれたのであれば、新しい夫の子と推定されるルールも適用されます。

いつ離婚したかではなく、子の出生日が基準となる点に注意が必要です。

「離婚後300日以内に出産=前夫の子」ではなくなる?再婚による嫡出推定の新ルール

「離婚後300日以内に出産=前夫の子」ではなくなる?再婚による嫡出推定の新ルール
今回の民法改正により、いわゆる「離婚後300日問題」の多くが解消されることになりました。
その鍵となるのが、女性が再婚した後に子どもが生まれた場合の新しい嫡出推定ルールです。
この新ルールでは、たとえ元夫との離婚後300日以内であっても、出産時に母親が再婚していれば、その子どもは「現在の夫の子」と推定されます。

これにより、以前のように元夫の子と推定されることがなくなり、煩雑な嫡出否認の訴えを家庭裁判所に起こす必要がなくなりました。
この規定は、子の福祉を第一に考え、速やかに安定した親子関係を築くことを目的としています。

嫡出否認の訴えと親子関係不存在確認の訴えはどう使い分ける?

嫡出否認の訴えと親子関係不存在確認の訴えはどう使い分ける?
嫡出否認の訴えと似た手続きに「親子関係不存在確認の訴え」がありますが、これらは明確に使い分けが必要です。
嫡出否認の訴えは、民法上の「嫡出推定」が働いているものの、実際には血縁関係がない場合に、その推定を覆すための手続きです。
一方、親子関係不存在確認の訴えは、そもそも嫡出推定が及ばない、客観的にみて妻が夫の子を妊娠する可能性がなかった場合に利用します。

例えば、夫が長期間海外に赴任していた、服役中だった、夫婦関係が破綻して長期間別居していたなど、懐胎時期に夫婦間に性的関係がなかったことが明らかなケースがこれにあたります。
どちらの手続きを選択すべきかは法的な判断を要するため、専門家である弁護士に相談することが不可欠です。

嫡出否認の訴えを家庭裁判所で起こす具体的な手続きの流れ

嫡出否認の訴えを家庭裁判所で起こす具体的な手続きの流れ
嫡出否認の訴えは、家庭裁判所を通じた法的な手続きによって進められます。
原則として、いきなり訴訟を起こすことはできず、まずは調停という話し合いの場を設ける必要があります。これを「調停前置主義」と呼びます。

調停で合意に至らない場合に、初めて訴訟へと移行します。
以下で、具体的な手続きの流れを解説します。

ステップ1:家庭裁判所への調停申立て(調停前置主義)

まず、相手方(訴えの対象となる子、またはその親権者)の住所地を管轄する家庭裁判所、もしくは当事者が合意で定めた家庭裁判所に対して「嫡出否認調停」を申し立てます。
調停では、裁判官と民間の有識者から選ばれた調停委員が間に入り、当事者双方の意見を聞きながら、話し合いによる円満な解決を目指します。
申立てには、申立書や当事者の戸籍謄本などの書類が必要となります。

ステップ2:調停で合意できなかった場合は訴訟へ移行

調停での話し合いがまとまらず、合意に至らなかった場合、手続きは訴訟へと移行します。
調停申立人は、家庭裁判所に対して嫡出否認の訴えを提起します。
訴訟では、当事者双方が法的な主張と証拠を提出し、最終的に裁判官が、提出された証拠に基づいて父子関係が存在しないことを認めるかどうかの判決を下します。

調停で当事者間に父子関係がないという合意ができた場合は、裁判所がその合意が正当であると判断すれば「合意に相当する審判」が出され、これは判決と同じ効力を持ちます。

ステップ3:手続きで重要となるDNA鑑定の役割と費用

嫡出否認の調停や訴訟において、DNA鑑定は血縁関係の有無を科学的に証明するための極めて重要な証拠となります。
鑑定の実施は任意ですが、裁判所から鑑定を受けるよう促されることが多く、相手が正当な理由なく鑑定を拒否した場合は、申立人側の主張が有利に働くことがあります。

鑑定費用は鑑定機関によって異なりますが、一般的には10万円前後が目安です。
費用の負担については、当事者間の話し合いで決めるか、最終的に裁判所の判断に委ねられることになります。

自分で手続きを進める際に陥りがちな3つの落とし穴とは?

自分で手続きを進める際に陥りがちな3つの落とし穴とは?
嫡出否認の手続きは、法改正によって利用しやすくなったものの、依然として専門的な知識を要する裁判手続きです。
専門家の助けを借りずにご自身で進めようとすると、思わぬ困難に直面することがあります。
特に、感情的な対立、証拠収集の難しさ、訴訟後の煩雑な手続きは、当事者だけでは乗り越えがたい壁となる可能性があります。

感情的な対立で話し合いが進まない

親子関係という極めてデリケートな問題を扱うため、当事者同士の話し合いは感情的になりがちです。
特に、元配偶者との間に不信感や対立があると、冷静な議論は困難を極め、調停の場でも話が全く進まないケースが少なくありません。

感情的な応酬に終始してしまい、本来の目的である子どものための解決から遠ざかってしまう恐れがあります。

必要な証拠(DNA鑑定など)の収集が難しい

嫡出否認を認めてもらうためには、客観的な証拠、特にDNA鑑定の結果が重要です。
しかし、相手方が鑑定に協力してくれない場合、これを法的に強制することはできません。
鑑定を拒否された場合、他の間接的な証拠(性交渉がなかったことを示す証拠など)を積み上げて主張を立証する必要がありますが、どのような証拠が有効か判断し、それを収集することは個人では非常に困難な作業です。

戸籍訂正など訴えを起こした後の手続きが煩雑

家庭裁判所で嫡出否認が認められ、判決や審判が確定しても、それだけで自動的に戸籍が訂正されるわけではありません。
判決(または審判)が確定した後、1ヶ月以内に、判決書謄本と確定証明書を添付して市区町村役場に戸籍の訂正を届け出る必要があります。
こうした訴えを起こした後の手続きは煩雑で、期限も定められているため、見落としてしまうリスクがあります。

嫡出否認の訴えの改正に関するよくある質問

嫡出否認の訴えの改正に関するよくある質問
2024年4月1日に施行された民法の法改正は、多くの当事者にとって重要な意味を持ちます。
しかし、法律の変更点は複雑で、ご自身の状況にどう影響するのか、具体的な疑問をお持ちの方も多いでしょう。
ここでは、嫡出否認制度の改正に関して、特によく寄せられる質問とその回答をまとめました。

改正によって嫡出否認の訴えを起こせる期間はどのように変わりましたか?

今回の法改正により、嫡出否認の訴えを起こせる期間は、原則として「子の出生を知った時から3年間」に延長されました。
改正前は夫のみが1年以内に訴える必要がありましたが、新法では母と子も訴えを起こせるようになり、それぞれの立場から3年間の期間が与えられます。
子の場合は特例があり、21歳に達するまで訴えの提起が可能です。

離婚後300日以内に生まれた子は、今回の改正で必ず現夫の子として扱われますか?

いいえ、必ずではありません。
今回の法改正で、離婚後に再婚し、その再婚後に出産した場合は、新しい夫の子と推定されるようになりました。
しかし、母親が再婚していない状態で離婚後300日以内に出産した場合は、原則通り前夫の子と推定されます。

この場合、法律上の親子関係を解消するためには、嫡出否認の訴えが必要となります。

改正法施行前に生まれた子が無戸籍なのですが、新しい制度で救済されますか?

はい、救済される可能性があります。
改正前は、離婚後300日以内の出生で前の夫の子どもとして推定されるのを嫌がって出生届を出さないことがありました。
また、提訴期間(1年)が過ぎていたり、母や子に訴えを起こす権利がなかったりしたため、血のつながった父ではない人が父親となっているケースがありました。

今回の法改正では経過措置が設けられ、2024年4月1日から1年間は、改正前に生まれた子についても、いつ生まれたのかに関係なく嫡出否認の訴えを起こすことが認められています。

弁護士法人キャストグローバルが選ばれる理由

弁護士法人キャストグローバルが選ばれる理由
嫡出否認の訴えは、民法改正により大きく変わりましたが、依然として専門的な知識と経験が求められる分野です。
弁護士法人キャストグローバルでは、離婚・男女問題に特化した専門チームが、ご相談者様一人ひとりの状況に合わせた最適な解決策をご提案します。

相談実績6,200件以上!離婚問題に特化した専門部が対応

当事務所には離婚問題のみを専門的に取り扱う「離婚専門部」があり、これまでに6,200件以上の豊富な相談実績を積み重ねてきました。
多くの事案を手掛ける中で蓄積されたノウハウは、担当弁護士個人の経験だけでなく、組織全体の集合知としてデータベース化されています。
これにより、複雑な嫡出否認の問題についても、過去の事例に基づいた的確な見通しと戦略を立てることが可能です。

女性弁護士も多数所属しスピーディーで丁寧な対応

親子関係という非常にデリケートな問題を扱うからこそ、ご相談者様が安心して話せる環境が何よりも重要です。
当事務所には女性弁護士も多数在籍しており、ご希望に応じてご相談いただけます。
また、ご不安な気持ちに寄り添い、お問い合わせやご質問には迅速に回答することを心がけています。

調停や訴訟の経過についても丁寧にご報告し、ご依頼者様との対話を重ねながら、納得のいく方針を決定します。

全国9拠点・弁護士約40名体制による迅速な対応力

当事務所は国内に9つの拠点を持ち、約40名の弁護士が所属しています。
この全国ネットワークにより、相手方が遠方に住んでいる場合でも、迅速かつスムーズに対応することが可能です。
また、組織の規模を活かし、難しい事案については複数の弁護士が知見を持ち寄って方針を協議します。

ご依頼者様の問題解決のために、事務所全体の総合力でサポートする体制が整っています。

まとめ

まとめ
2024年4月1日に施行された民法改正は、嫡出否認制度を大きく変え、これまで救済が難しかった多くの人々にとって新たな道を開きました。
提訴できる人が母と子にまで広がり、期間も3年に延長され、さらに再婚後の出産に関する新ルールによって「離婚後300日問題」の多くが手続き不要で解決できるようになりました。

しかし、ご自身のケースが新制度の対象になるのか、経過措置を利用できるのか、また親子関係不存在確認の訴えとどちらを選択すべきかなど、判断には専門的な知識が不可欠です。

手続きには期限があり、相手方との交渉も伴うため、一人で悩まずに専門家へ相談することが解決への第一歩となります。

嫡出否認の訴えに関するお悩みは弁護士法人キャストグローバルへご相談ください

嫡出否認の訴えに関するお悩みは弁護士法人キャストグローバルへご相談ください
嫡出否認に関する問題は、法律的な知識だけでなく、感情的な負担も大きいものです。
元配偶者との交渉や、家庭裁判所での複雑な手続きをご自身で進めることには、多大な時間と精神的な労力を要します。
弁護士法人キャストグローバルでは、離婚・男女問題に精通した弁護士が、ご相談者様のお気持ちに寄り添いながら、法的な代理人として最適な解決を目指します。

相手方との交渉から、調停・訴訟の対応、判決後の戸籍訂正手続きまで、一貫してサポートいたします。
まずは無料相談をご利用いただき、お悩みをお聞かせください。
詳細は「離婚・慰謝料 解決サポート|弁護士法人キャストグローバル」をご参考ください。

監修者

弁護士法人キャストグローバル 離婚部

離婚に関する記事は、当事務所の弁護士・専門スタッフが監修しています。離婚・男女問題のご相談を中心に、これまで6,200件以上のご相談に対応してきました。

離婚・男女問題で不安や悩みを抱えながら一歩を踏み出そうとしている方へ、法律のことはもちろん、心に寄り添う対応を心がけています。夫婦カウンセラーの資格を持つスタッフも在籍し、傷ついた心にも寄り添ったサポートを提供しています。

相談実績6,200件以上
弁護士紹介
藤井若菜、山本典佳、神田欽司
所属弁護士のプロフィールはこちら ›
所属弁護士会
第一東京弁護士会、大阪弁護士会、神奈川県弁護士会、滋賀弁護士会

関連ページ