葬儀費用はどこまでを含むのか

交通事故で被害者が死亡してしまった場合、被害者の葬儀にかかった費用も損害賠償として、加害者や保険会社に請求することができます。
では、どこまでが「葬儀費用」に含まれるのでしょうか。

この記事では、裁判所基準(裁判になった場合に請求が認められる金額の基準)が採用された場合の、葬儀費用の範囲請求方法についてご紹介します。

葬儀費用に含まれる費用

葬儀費用に含まれるのは、以下の費用です。

  1. 火葬・埋葬料
  2. 読経・法名料
  3. 布施・供物料
  4. 花代
  5. 通信費
  6. 広告費
  7. その他葬儀社に支払う費用
  8. 仏壇・仏具購入費
  9. 墓碑購入費
  10. 遺族の交通費(外国からの帰国も含む)
  11. 四十九日忌までの法要費

ただし、どの項目についても実費が全て請求できるとは限りません。
支出したことが相当であると認められるものに限って、損害賠償請求は認められるのです。

例えば、遺族が飛行機で帰国する際にファーストクラスに座っても、エコノミー分の料金しか請求できないといった具合です。

どの費用が請求できる費用なのか、判断するのが難しい場合もあるため、葬儀に関連する支出の領収書は全て保存しておきましょう。できれば、具体的な用途もメモしておきたいものです。

香典返しは費用として認められるのか

上述のような項目が葬儀費用に含まれる一方で、香典返しは葬儀費用とは認められていません
これは、香典が損益相殺の対象にならないことの裏返しです。

つまり、被害者側は香典という形で事故から利益を得ることになりますが、その分が損害賠償額から減額されることはなく、その代わりに、香典返しの費用を損害賠償に含めて請求することはできなくなるということです。

その他、葬儀費用として認められない費用としては、遺族以外の関係者が葬儀参列のために要した交通費、引き出物にかかった費用、四十九日忌より先の法要費、弔問客の接待費などがあります。

ちなみに、遺体運送料も葬儀費用には含まれません。しかし、これは葬儀費用とは別立てで実費を請求することができるのです。

葬儀費用として認められる額には上限がある

葬儀費用として請求できるのは、原則として定額150万円です。
実際の葬儀費用が150万円を超えたとしても、請求が認められるのは150万円とされています。

一方で、実際に葬儀費用として支出した金額が150万円より少ない場合は150万円も請求することはできず、支出した金額分の請求しか認められません。

また、被害者側に過失があった場合は、葬儀費用の損害賠償も過失相殺によって減額されますので、気をつけましょう。

ちなみに、自賠責保険からは原則60万円(立証によって100万円まで増額可能)が葬儀費用として支払われます。
裁判になり、150万円の葬儀費用の請求が認められた場合、60万円が自賠責から、残りが任意保険会社または加害者から支払われることになるのです。

150万円を超える葬儀費用が認められた例もある

ただし、ごく稀に、150万円を超える葬儀費用の請求が裁判で認められることもあります
これは、被害者の年齢や、社会的地位、実際に支出した葬儀費用の金額、事故の態様などが判断の際に状況に応じて考慮されるためです。

例えば、以下のような裁判例があります。

  • 49歳の銀行支店長(男性)が被害者であった事故について200万円の葬儀費用が認められた裁判例(札幌地裁平成13年7月11日)
  • 24歳のプリント会社の社員(女性)が被害者であった事故について170万円余の葬儀費用が認められた裁判例(大阪地裁判決平成14年3月7日)

こうした例はごく稀であることは確かですが、150万円以上の葬儀費用が認められる可能性も0ではないのです。

150万円以上の葬儀費用が請求できる可能性がどのくらいあるか知りたいという方は、当事務所でもお客様の状況をお伺いした上でご案内が可能ですのでお気軽にご相談ください。

葬儀費用はどこに請求したらいいのか

被害者が死亡した場合、損害賠償請求を行うのは被害者の遺族(相続人)になります。もちろん、葬儀費用も遺族が請求することになります。
では、その請求相手は誰になるのでしょうか?

請求相手も、他の損害賠償請求と同様です。
加害者本人またはその加入する保険会社に対して請求することになります。

加害者が任意保険に加入している場合は、その任意保険会社に対して損害賠償を請求します。
葬儀費用も他の損害賠償もまとめて、まずは示談という形で損害賠償額を話合うのですが、多くの場合において任意保険会社から提示される葬儀費用は100万円くらいの金額になります。

全体の損害賠償額について双方が合意すれば示談成立となりますが、不満がある場合は調停や訴訟といった制度を利用することになります。
訴訟になると、原則として150万円の葬儀費用が認められることは先ほど述べた通りです。

一方、加害者が任意保険に加入していない場合は、加害者の自賠責保険会社に対して葬儀費用を請求します
自賠責保険の葬儀費用の上限金額は100万円と定められていますので、葬儀費用がこれを超えた場合は加害者本人にその超過分を請求することになります。
しかし、加害者本人に資力がないことも多いため、葬儀費用も含めて損害賠償を全額回収するのは難しいというのが現状です。

請求相手が任意保険会社であれ、加害者本人であれ、葬儀費用を少しでも多く回収するための一番の近道は、法律のプロの力を借りることです。
葬儀費用を支払ってもらえない場合や、示談で提示された金額に納得がいかない場合にはまず弁護士に相談してみましょう。

当事務所では無料相談も行っております。
お客様の状況や、どうしたいかをしっかりとお伺いした上で、最適なサポートをご提案させていただきます。
まずはお気軽にご相談ください。

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