下肢機能障害はどんな症状があるか

交通事故で下肢に障害を負うこともありますが、もちろん、この下肢に負った障害も後遺障害等級認定の対象となりえます。

「下肢」とは、股関節から足の指先までのことです。
また、「下肢三大関節」とは、股関節、膝関節、そして足首の関節を指します。
ただし、足指も一応「下肢」には含まれるため、この記事では、足指の機能障害等についても一緒にまとめています。

「下肢機能障害」とは、下肢の関節の1つまたはいくつかについて、関節の自由が利かなくなることを指します。
この自由が利かなくなる程度は、後遺障害等級を認定するにあたって「下肢の用を全廃したもの」、「用を廃したもの」、「機能に著しい障害を残すもの」、そして「機能に障害を残すもの」の4つのどれに当てはまるかが重要となります。それぞれ、具体的には以下のような状態を指します。

「下肢の用を全廃したもの」

下肢三大関節の全てが強直(関節の可動域が障害のない脚と比べて10%以下)したもの

「関節の用を廃したもの」

以下のいずれかに当たるものを指します。

  • 関節が強直(関節の可動域が障害のない脚と比べて10%以下)したもの
  • 関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態(外からの力では動くが、自分では障害のない方に比べて10%の範囲しか動かせない)にあるもの
  • 人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その動かせる範囲が障害のない方に比べて1/2以下になったもの

「機能に著しい障害を残すもの」

以下のいずれかに当たるものを指します。

  • 関節の動かせる範囲が、障害がない方に比べて1/2以下になったもの
  • 人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その動かせる範囲が障害のない方に比べて1/2以下になったもの

「機能に障害を残すもの」

関節の動かせる範囲が障害のない方に比べて3/4以下になったもの
また、足指の機能障害とは、以下のような状態になることです。

「用を廃したもの」

以下のいずれかに当たるものを指します。

  • (親指について)一番指先にある骨の長さの1/2以上を失ったもの
  • (親指について)一番指先に近い関節又はその次に指先に近い関節の可動域が1/2以下に制限されるもの
  • (親指以外の足指について)指先から2番目にある骨又は3番目にある骨で切断したもの
  • (親指以外の足指について)一番指先に近い関節又は2番目に指先に近い関節で切断されたもの
  • (親指以外の足指について)2番目に指先に近い関節又は3番目に指先に近い関節の可動域が1/2以下に制限されるもの

上記のとおり、足指の部分的な欠損は機能障害として扱われています。ただし、足指が根元から完全に失われた場合は、以下で出てくる「欠損障害」として扱われます。

可動域の測定方法について

関節の動かせる範囲、つまり可動域が障害等級を決めるのに重要になることがよくわかったかと思います。
では、この可動域はどのようにして測るのでしょうか。

まずここでいう「可動」とは、原則として、自分で動かせることではなく、医師が手を添えて動かせる他動値ことを指します。「可動域」は、自分で動かせる範囲、自動値よりも少し大きくなるということです。

そして、関節によっては動く方向が一つではなく、いろいろな動きをすることがありますが(例えば股関節の曲げ伸ばし、外転・内転、外旋・内旋)、原則として可動域の測定対象になるのはそれぞれの関節の「主要運動」だけです。
主要運動とは、日常生活において最も重要であると考えられる運動のことで、多くの場合は1関節につき1つが定められています。(ただし、股関節は例外)

それぞれの関節の主要運動は以下のとおりです。

股関節 曲げ伸ばし、外転・内転
膝関節 曲げ伸ばし
足関節 曲げ伸ばし
足指の関節 曲げ伸ばし

これらの関節運動が、後遺障害のない側に比べてどのくらい制限されたかを、整形外科医が角度計を使って測ることになります。

下肢の欠損障害など

下肢機能障害と同じくらい重大な後遺症として、下肢の欠損障害があります。
欠損の後遺障害の程度は、どの位置から欠けているか(どの関節より上から欠けているか)によって判断されます。
機能障害に比べてわかりやすく、また、認められる後遺障害等級も高めになっています。

また、下肢の後遺障害としては他にも、変形障害(骨が曲がった状態でくっついてしまったり、偽関節が残ってしまったりすること)や、醜状障害(膝関節より先の部分に、てのひらサイズ以上の大きさで人目につくような傷跡・手術跡が残ること)などが挙げられます。

後遺障害として認定される条件とは

下肢に関する後遺障害等級の基準は、以下のとおりです。

1級 両下肢を膝関節以上で失ったもの、両下肢の用を全廃したもの
2級 両下肢を足関節以上で失ったもの
4級 一下肢を膝関節以上で失ったもの、両足を足の甲の中心の関節以上で失ったもの
5級 一下肢を足関節以上で失ったもの、一下肢の用を全廃したもの、両足の足指の全部を失ったもの
6級 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
7級 一足を足の甲の中心の関節以上で失ったもの、一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの、両足の足指の全部の用を廃したもの
8級 一下肢を5cm以上短縮したもの、一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの、一下肢に偽関節を残すもの、一足の足指の全部を失ったもの
9級 一足の第一の足指を含み二以上の足指を失ったもの、一足の足指の全部の用を廃したもの、
10級 一下肢を3cm以上短縮したもの、一足の第一の足指又は他の四の足指を失ったもの、一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
11級 一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの
12級 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの、長管骨に変形を残すもの、一足の第二の足指を失ったもの、第二の足指を含み二の足指を失ったもの又は第三の足指以下の三の足指を失ったもの、一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの
13級 一下肢を1cm以上短縮したもの、一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失ったもの、一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの
14級 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの、一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの

後遺障害等級が認定されるためには、これらの基準を満たした上で交通事故との因果関係が認められる必要があります。
少しでも高い後遺障害等級認定の可能性を高めたい、適切な後遺障害等級を認定されたい場合は、できるだけ早めに当事務所までご相談ください。

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