外貌醜状の症状と程度について

交通事故に遭うと、顔など目につく部位にケガを負うことがあります。そして、そのケガの程度や状態によっては傷跡が後々まで残ってしまうこともあります。

知っておきたいのは、そのような傷跡(外貌醜状)について、後遺障害等級が認定される場合があるということです。
外貌醜状による後遺障害等級が認められる要件として、痛みやしびれ、運動障害などの症状は必要とされていません。つまり、見た目の醜状だけを理由として認定されるのです。
もちろん、どんな小さな傷跡についても後遺障害等級が認定されるわけではありません。腕・脚については手のひらサイズ以上の大きさ、首・頭部についてはタマゴ以上の大きさ、顔面については10円玉以上の大きさ(線状であれば3cm以上の長さ)の外貌醜状がある場合に、後遺障害等級は認定されます。
後遺障害等級が認められるための条件については、後で詳しく説明します。

※正確には、「外貌醜状」と呼ばれるのは「頭部、顔面部、頸部のごとく、上肢及び下肢以外の日常露出する部分」に負った醜状のことです。すなわち、腕や脚の傷跡は含まないのです。しかし、以下この記事ではわかりやすいように腕脚の傷跡もまとめて「外貌醜状」と呼ぶ事にします。

外貌醜状に男女の差はない

一般的に、男性よりも女性のほうが外貌醜状によって負う経済的・精神的ダメージは大きいかもしれません。実際に7年ほど前までは、同じ程度の外貌醜状であった場合に女性は男性よりも重い後遺障害等級が認定されていました。

しかし、平成23年に改正された後遺障害等級表が施行されてからは、外貌醜状の等級認定基準に性別による違いは設けられていません
現在は被害者が男性であっても女性であっても、同じ程度の傷跡であれば同じ等級が認定されるということです。

手術跡も外貌醜状として認められる

交通事故によって直接負った傷の跡だけではなく、交通事故のせいで手術が必要となり、その手術跡が残った場合は、その手術跡も外貌醜状として認められる可能性があります。
手術跡についても、認定の基準は他の外貌醜状と同様です。手術後に傷跡がくっついて炎症が治まり、「もうこれ以上は治らない」という状態になったときの傷跡の大きさ・見た目で後遺障害等級が認定されるかどうかが判断されることになります。

外貌醜状で逸失利益は認められるのか

では、外貌醜状による逸失利益は認められるのでしょうか。
「逸失利益」とは損害賠償の項目の一つで、もし交通事故に遭っていなければ得られるはずであった利益(事故に遭ってしまったために得られなくなった利益)のことです。

この逸失利益は以下の式によって計算されます。

被害者の事故直前の収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応する中間利息控除係数

この「労働能力喪失率」は後遺障害等級ごとに定められて一覧表になっていますが、外貌醜状の場合はこの表のとおりの喪失率が認められることは少ないです。喪失率は0%である(つまり逸失利益なし)と認定されることもありますし、外貌醜状の程度がひどい場合でも、大きくて20%ほどの喪失率が認められるにすぎません。
また、見た目が労働能力に及ぼす影響の程度は職業や性別によって異なるため、被害者が営業職や女性である場合のほうが喪失率は大きく認定される可能性が高くなります。

つまり、逸失利益が認められるかどうかは職業や性別など個々の状況によりますが、認められたとしても、表の労働能力喪失率より小さい値が計算に用いられることが多いということです。

外貌醜状の後遺障害等級

外貌醜状によって認められうる後遺障害等級とその基準は、以下のとおりです。

14級

上肢の露出面または下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すものは14級に認定されます。
「上肢の露出面」というのは肘の関節から指先まで、「下肢の露出面」というのは膝の関節から足の甲までです。この範囲に手のひらサイズ以上の大きさの醜い跡が残った場合に認定されます。

12級

「外貌に醜状を残すもの」、つまり、以下のうち人目につく程度以上のものが12級に認定されます。

  • 頭部にある、タマゴ以上の大きさの皮膚が変性した傷跡、または頭蓋骨のタマゴ以上の大きさの欠損
  • 顔にある、10円玉以上の大きさの皮膚が変性した傷跡、または3cm以上の線上の痕
  • 首にある、タマゴ以上の大きさの皮膚が変性した傷跡

ただし、皮膚が変性した傷跡、線状の痕及び凹みであって、眉毛や髪の毛で隠れている部分は対象外となります。
つまり、顔に5cmの線状の傷跡があるものの、そのうち2.5cmが眉毛で隠れている場合は、眉毛から出ている部分が2.5cmとなり3cm未満であるため後遺障害等級は認定されません。

9級

「外貌に相当程度の醜状を残すもの」がある場合に9級が認定されます。
具体的には、顔にある長さ5cm以上の線状の痕で、人目につく程度以上のものが認められます。

7級

「外貌に著しい醜状を残すもの」、つまり、以下のいずれかに当たる場合には外貌醜状で認められる等級のうち一番高い7級が認定されます。

  • 頭部にある、てのひら(指は含みません)以上の大きさの皮膚が変性した傷跡、または頭蓋骨の手のひら大以上の欠損
  • 顔にある、タマゴ以上の大きさの皮膚が変性した傷跡、または10円玉以上のサイズの凹み
  • 首にある、手のひら大以上の皮膚が変性した傷跡

このような基準が定められているものの、傷跡が「人目につく程度以上」に当たるかどうかは個人の主観によるところが大きいものです。

また、他の後遺障害については等級認定の審査は書面で行われますが、外貌醜状の場合に限っては損害保険料算出機構による面接が行われます。傷の大きさや状態を担当者が直接確認するためです。
こうした特別な手続があるため、戸惑ってしまう被害者の方も多いです。担当者に傷の大きさを正確に測ってもらい、傷跡が「人目に着く程度以上」であることを上手くアピールするためには、まずは専門家である弁護士に相談することが重要となります。お悩みの方はぜひ一度、当事務所にご相談ください。

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