日常に潜むモラハラ
モラハラとは言葉や態度による精神的虐待のことを言います。実際にこのモラハラが原因で離婚につながることもあります。しかし、往々に、モラハラの被害者は自身がモラハラを受けていることに気が付かないまま日常生活を送っていることがあります。
例えば夫から
- 二人で出かけたとき「もっと早く歩けないのか。遅すぎてイラつくから。」
- 食事中に「お前はもう飯を食うな。それ以上太ってどうする。」
- 二人で夫の実家に帰省した時「お前は全員分の家事をこなせ。居候の身分だろ。」
- 貴重な休みの日、美容院の予約をしていると話すと「自分でハサミを使って切ったらいいだろう。美容院なんか行ったら高くつく。」
- 些細なことから喧嘩をしたとき、はずみで「お前とはもう離婚だ。」
このように日常の様々な場面で心無い言葉を浴びせられ、傷ついた経験はありませんか?
さらに、そのたびにあなたが我慢をし、家庭に不和が生じることを未然に防ごうとしてきたことはないでしょうか?社会生活を送るうえで、家庭とはあなたに安心を与えてくれる居場所であるはずです。それなのに、こうした夫にあなたの自由を制限されていては心が休まることがないと思われます。
「すぐに離婚だ」と怒る夫はモラハラなのか
では、上記で紹介した例の中で、
些細なことから喧嘩をしたとき、はずみで「お前とはもう離婚だ。」というような夫はモラハラに該当するのか、考えていきましょう。
というのも、実はモラハラが原因で離婚に至った夫婦の中には、モラハラ被害者が周りに言われるまで自分がモラハラをうけているという自覚がないまま過ごしていたケースが多く存在するのです。そのため、夫に不快感を与えられるような言動を受けたら、それがモラハラなのか事前にその基準を知っておくことで、いち早く解決につなげることができます。
モラハラ夫はなぜ離婚を切り出すのか
モラハラ夫が妻に対して離婚を切り出すのはたいていの場合、「妻を困らせたい」ことが理由にあります。つまり、離婚を切り出されて動揺し、離婚はしたくないと懇願し、困惑した妻の顔を見ることで、自分の虚栄心を満たしたいがためにそうした行動をとります。そのため「離婚したい」とは本心から言っていない場合がほとんどです。
こうした行動をとるモラハラ夫の特徴の一つにはまず「プライドが高い」ことがあげられます。家庭とはモラハラ夫にとっては自分が優越感に浸れる場所としてとらえられることが多く、そうした気質に起因して、妻に対して高圧的な態度をとることがあります。
そして、もう一つには「嫉妬深く、束縛しがち」であることもモラハラ夫の特徴としてあげられます。自分の妻が家庭以外のコミュニティでどのように過ごしているのか気がかりでならず、自分といるよりも外のコミュニティにいる方が妻は幸せなのではないか、そのように思い詰めることで、妻の人間関係にしつこく口出しをするなど、妻の自由を制限するような行動をとるケースもあります。
そのため、こうした気質に起因する言動はモラハラである場合が多く、すぐに「離婚だ」と怒鳴る夫は典型的なモラハラ夫であるといえるでしょう。
すぐに「離婚だ」と怒鳴るモラハラ夫へどう対処すればいいのか
本来であればこうしたモラハラ夫に対しては、夫婦で話し合いの場を持ち、改善に向かうよう努力することを夫に約束させることが穏便な解決方法であるといえるでしょう。しかし、加害者であるモラハラ夫と対等な立場で話し合うことは非常に困難です。なぜなら、通常、モラハラ夫はプライドが高い場合が多いため、「自分は正しく優れており、妻は間違っていて、劣っている。」という考え方をもっているからです。そのため、話し合いの場においても、妻に対して上から目線で妻の意見を尊重せず、ばかにするような言動をとり、まともな話し合いが成立しません。
普段のモラハラ夫の言動を受け流したり、反抗したりすることにも注意が必要です。「妻は自分の支配下にある」と確信しているモラハラ夫に対して、反抗することはかえってモラハラをエスカレートさせる危険性があるからです。
そのため、モラハラ夫の支配下から抜け出すことが大切です。具体的には、別居をすることが一つの解決策といえるでしょう。たとえ離婚まで考えていなくとも一度モラハラ夫と距離をとることでそれまで抑圧されていた自分らしさを取り戻すことができ、落ち着いた生活を手に入れることができるでしょう。
その後、必要であれば離婚調停という手段をとることができますが、その際、夫が離婚に同意しない場合、離婚裁判を行うことになります。
ここで重要なのはモラハラが民法770条1項5号に定められた「婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」に該当することが重要です。モラハラのように身体的外傷を伴わない被害の場合、当事者以外には「婚姻を継続しがたい」というほどのつらさが他人へ伝わりにくいことが多いのです。
モラハラのこうした性質に鑑みると、モラハラの性質を理解し、確実な証拠を集めることが大切になります。先ほどご紹介した「すぐに離婚だと怒鳴る夫」のように、モラハラ夫の典型的特徴に起因するような言動を受けたら、夫婦間での円満な解決が見込めない場合、離婚調停及び裁判を視野に入れる必要があるでしょう。
当事務所では、モラハラ問題に強い弁護士が在籍しており、あなたの味方となって最善の方向へと導きます。お困りの方は、お気軽に弊所までご相談ください。