未払い賃金

UNPAID WAGES

大阪事務所の弁護士が説明する未払い賃金について

残業代や休業手当、割増賃金の不払いといったトラブルは、労働基準監督署へ最も多く申告される事案です。

万が一、従業員や退職者から未払い賃金を請求されたときには、適切な対応をとる必要があります。不用意な対応をとらないためにも、請求がなされた時点で専門家へ相談し、サポートを受けながら対応することが重要です。

未払い賃金が請求された際の立証するポイント

初動が重要なポイント

未払い賃金が請求されたときには、早期に専門家へ相談することが重要です。

未払い賃金は、支払い対応が遅くなると「遅延利息」が発生します。

遅延利息は、改正民法第404条2項により、本来の支払日の翌日から年利3%の利息を上乗せするよう定められています。未払い賃金は会社側の債務不履行によって従業員に発生した損害を賠償するための金銭であるため、残業代を含めた支払期限である給料日から経過した日数分遅延利息が加算されます。

なお、2020年4月の民法改正前に発生した賃金については、商事法定利率の年6%が適用され、公益法人などの場合は、年5%が適用されます。さらに、退職した労働者による未払い請求の場合には、賃金のうちその退職の日(支払日が退職後の場合には、その支払日)までに支払われなかった部分には、年14.6%の利息がつくこととされています。この利息がつく賃金には、退職金は含まれませんが、賞与は含まれます。(賃金の支払の確保等に関する法律第6条)

また、対応が遅くなることや未払い請求をした退職者への対応を間違えると、ほかの従業員が会社への不信感を募らせて、パフォーマンスを下げることにもつながります。企業全体に影響が及べば、従業員の退職が相次ぐ可能性もあるでしょう。

さらに、退職者がSNSやリクルートサイトの口コミへ投稿して拡散されてしまうと、企業イメージの低下にもつながりかねません。

未払い賃金を請求されたときは早い段階で専門家へ相談することで、このようなリスクを最小限に防ぐことができます。

残業が自発的であったと立証する

退職者の主張する残業や休日出勤が自発的な行為、もしくは残業命令がなかったことを立証することができれば、原則として、残業にあたりません。会社にとって有利な交渉を進めることが可能です。

会社が残業を許可していなかったことが立証できれば、さらに有利な交渉を進めることができる可能性もあります。そのためには、業務指示が客観的に分かるようにメールや朝礼記録などをすべて洗い出すことが重要です。

残業代はすでに支払い済みであることを立証する

すでに、固定残業手当の支払いがあったことを証明できれば、賃金支払いの合理性がないと判断されます。

固定残業手当の支払いがあったと認められるためには「就業規則・雇用契約書などで定められていること」「就業規則・雇用契約書内で金額が記載されていること」「差額の精算が記載されていること」などの条件を満たしている必要があります。月80時間を超えての長時間残業を前提としている業務は、たとえ労働者との間に合意があったとしても認められません。

くわえて、原則として年俸制基本給には固定残業手当を含めることができないことに注意しなければなりません。残業代を年俸制に含めている場合は、就業規則や雇用契約書などで残業代が含まれていることを立証する必要があります。

管理監督者として責任に見合った賃金を支払っていたと主張する

地位と責任に見合う賃金を支給していたことが立証できれば、その労働者は管理監督者とみなされ、話し合いを有利に進めることが可能です。

管理監督者(第41条2号)は経営者とある程度同等であると判断され、一般的な従業員と同じ労働時間ルールは適用されません。そのため、残業代および割増賃金を支払う合理性がないと主張できます。

ただし、管理者と管理監督者は定義が異なることに注意しなければなりません。監督管理者の定義は以下です。

  • 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していること
  • 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な責任と権限を有していること
  • 現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであること
  • 賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること

参考:厚生労働省「管理監督者の範囲の適正化

中でも地位と責任に見合った待遇を受けていたか否かは、労働監督者であることを立証するときに重要視される項目です。

退職者に対しても誠実に話し合う

もしも、会社側が対応しなければ労働時間を推計で算出するため、退職者の主張が優先された賃金支払いを命じられる可能性が高まります。
迅速に交渉へ応じ積極的に在職時の資料提出や残業代の再計算をすることで、正確な労働時間を主張できます。

未払い賃金が請求された際に把握すべきリスク

付加金・遅延損害金のリスク

未払い賃金には、本来の支払予定日の翌日から遅延している期間に遅延損害金が発生します。裁判となり敗訴した場合には、訴えを起こした従業員が在職中であれば年利3%(2020年4月以降の発生分)、退職後の支払期限が過ぎている場合は年利14.6%を、未払い賃金に上乗せして支払うことが命じられます。

さらに、裁判によって敗訴した場合は付加金の支払いを命じられる場合があります。付加金は、最大で未払い賃金の2倍を支払わなければなりません。さらに付加金にも判決確定の日の翌日から年利5%の利息が加算されます。

他の従業員からも請求されるリスク

退職者の未払い請求が認められた場合、社内へと噂が広まってしまうと、ほかの社員からも未払い賃金を請求される可能性があります。未払い賃金の請求だけでなく、退職者が相次ぐ可能性もあります。そうなると、会社経営に甚大な被害を及ぼしかねません。

未払い賃金請求をされたときには早期の穏便解決が望まれますが、場合によっては訴訟を起こしてでも徹底抗戦し、退職者が続かないように連鎖を止める必要があります。

風評被害のリスク

退職者が企業の悪評をSNSやリクルートサイトの口コミ評価へ投稿し拡散されてしてしまうと、風評被害を避けることはできません。

インターネットでの風評被害は対処が困難です。悪評が拡散されてしまうと今後の人材入手が難しくなるだけでなく出資者や取引先にも伝わり、資金繰りに影響することも考えられます。

SNSやリクルートサイトを通した風評被害は、最も避けたいリスクです。

未払い賃金トラブルの予防法

賃金等の周知を徹底する

就業規則や雇用契約書で、賃金支払いに関する要項を詳しく記載しておくことが重要です。無許可残業をしている社員を発見した時は、禁止であることを伝え、他の従業員にも周知させることも有効です。残業時間は改ざんができない書面で管理し、労働時間管理義務の有無にとらわれず、徹底して勤怠管理をする必要があります。

管理監督者を明確にする

管理監督者の業務範囲を明確化し、従業員の雇入れや昇格時などに管理監督者としての地位と責任を書面に定めることが大切です。

従業員の労働時間を正確に把握する

未払い賃金を防ぐためには、みなし労働時間制への理解や適正運用をし、従業員の労働時間を正確に把握しなければなりません。
みなし労働時間は必ず就業規則で規定し明確化する必要があります。さらに、外回りや業務スケジュールの報告を義務化して、従業員の労働時間を正確に把握することが大切です。

積極的な勤怠管理をすることで、勤務中に業務とは無関係な作業をする社員や、不要な休憩を多くとる社員への警告にもつながります。

大阪で未払い賃金問題にお困りの企業様はキャストグローバル大阪事務所までお問い合わせください。

残業代や手当などを含めた未払い賃金が請求されたときには、早急に対応することが重要です。不用意に動くことなく、初動で専門家の助言や支援を受けながら適切な対応をとることで、企業への影響を最小限に抑えることが可能です。
キャストグローバル大阪事務所では、労働問題に詳しい弁護士の率いるチームが対応することができます。
大阪で未払い賃金問題にお困りの企業様は、ぜひご相談ください。