従業員の不正・横領

EMBEZZLEMENT

大阪事務所の弁護士が説明する従業員の不正・横領について

従業員が会社に対して不正行為を行ったり会社の財産を横領したりした場合、どのように対応すればよいのでしょうか。対応を誤ると金銭的なダメージに繋がりかねないほか、社会的信用が失墜し、他の従業員のモラル低下を招く恐れもあります。正しい対処法とともに、再び不正行為が行われないための対策をご説明します。

従業員による横領の手口

経費の着服

従業員による横領として、経費の着服が挙げられます。例えば、実際には接待を行っていないにもかかわらず、取引先に対する接待費の名目で経費を申請し、受け取る手口があります。また、帳簿を偽造して現金を着服するケースもあります。現金を手にする販売の担当者、経費を管理する経理担当者が、横領に手を染めるケースも決して珍しくはありません。

横流し・不正転売

商品の横流しや不正転売も手口のひとつです。典型例は、不正に入手した会社の商品をこっそりオークションサイトなどで販売し、売れた分の金銭を自分のものにしてしまうケースです。また、会社の切手や金券を勝手に換金し、着服するケースも存在します。

キックバック

キックバックとは、特定の会社に仕事を発注する見返りとして、発注担当者が金銭等の利益を得ることです。例えば、発注元の担当者と受注先の担当者が共謀して、実際より高額の請求書を出し、本来の額との差額を自分たちのものにしてしまう手口が考えられます。

従業員の不正・横領発生時の対応

速やかに証拠保全を行う

従業員が不正・横領を行っている疑いがある場合、大切なことは証拠の保全です。不正をしている従業員に証拠保全を察知されると、証拠を隠滅・逃亡するおそれがあります。そのため、証拠保全は最小限の人数で速やかに行うことが大切です。

メールや領収書などの書面のほか、防犯カメラの映像なども分析して証拠を確保します。対策チームに弁護士がいれば、その後の法的措置を視野に入れつつサポートが可能です。

事態の全容を把握し事実を確認する

従業員が不正を行った証拠を確保したら、事態の全容を把握しなければなりません。最初に発見された不正だけでなく、別の不正に手を染めていることも考えられます。また、キックバックのケースでは自社の従業員に加えて取引先の担当者が関与していることや、取引先以外の外部の人間が共犯になっていることもあります。

従業員本人への聴取の前に全容を解明していなければ、証拠を隠滅されてしまうリスクがあるため、早急に全容を解明し対応することが大切です。

本人へ聴取する

不正の全容を把握し、証拠隠滅ができないよう証拠を確保した段階で本人への聴取を行います。ただし、本人が嘘をついたり、言い逃れしたりする可能性があるため、聴取は必ず録音するとともに、証拠と本人の言い分を照応できるように準備しなければなりません。弁護士はあらゆる裁判を通じて聴取のノウハウを確立しているため、スムーズな聴取が可能です。

処分を決定し損害賠償請求する

不正の事実が確定したら、具体的な処分と損害賠償請求に進みます。社内で行う処分としては以下のものがあり、行う場合はあらかじめ就業規則で定めていなければなりません。

  1. 戒告・けん責
    口頭の改善指導や、始末書を提出させて反省させます。
  2. 減給
    給料から一定額を差し引く処分です。ただし、減給は労働基準法第91条により最大額が定められています。
  3. 出勤停止
    雇用関係を維持したまま出勤を禁止し、その間の給与を無給とする処分です。
  4. 降格
    役職を解いたり、社内での地位を引き下げたりする処分です。
  5. 懲戒解雇
    会社が解雇を行う場合、原則として30日以上前に解雇を予告するか、解雇予告手当を支給しなければなりません。しかし本人の責めに帰すべき理由により解雇する際は労働基準監督署から解雇予告除外の認定を受ければ解雇予告手当の支給なしに即時解雇できます。

裁判で損害賠償を請求することも可能ですが、従業員が任意に返還に応じるか、返還できる財産があるかなどのように状況を踏まえて判断することが大切です。弁護士にご相談いただければ、請求だけでなく回収の段階まで考慮した対応が可能です。

刑事告訴も検討する

被害額が大きかったり、従業員が被害回復を拒絶したりする場合は刑事告訴の検討も必要です。従業員が会社から管理を任されていた財産を横領した場合は「業務上横領罪」、従業員に管理の権限がなかった場合は「窃盗罪」が成立する可能性があります。ただし、刑事告訴はあくまで犯罪行為を処罰する手続きの一つであり、刑事告訴しても盗まれたお金が戻ってくる訳ではありませんので、告訴を行うかどうかの判断は難しい部分もあります。

従業員の不正・横領を発生させない再発防止策

入出金の管理徹底

従業員の不正を防止するために最も大切なことは、入出金管理を徹底することです。管理方法としては、次のようなものがあります。

  • 入出金の際は必ず出金伝票(申請)を作り、事前・事後に上司がチェックする
  • 在庫管理・入出金は必ず複数の従業員が関与できる体制を作り、誰かが一人で業務を完結させないようにする
  • 小口現金と帳簿の照合、在庫チェックを1人でさせない

上記の対策をとることで「入出金が適切に管理されており、不正ができない」との意識を従業員に持たせることができ、不正・横領を防止できます。

身元保証書の作成

従業員が不正を働いた際、返金するだけの財産がない場合に備えて、代わりに返金する身元保証人を定めておくこともひとつの手です。また、身元保証書には従業員・身元保証人の署名押印をもらい、身元保証人の住所と勤務先も書いてもらうと、いざというときに回収がスムーズになります。

なお、身元保証法に基づく通知義務など、単に身元保証書を作成・取得するだけではなく、その後の管理も大切です。

就業規則や雇用契約書に不正行為や横領によって懲戒解雇できると明記する

従業員に対する懲戒を定める場合、①懲戒対象となる事由、②懲戒の種類及び程度、③手続き就業規則に記載する必要があります。また、雇用契約書に「不正行為・横領を行った場合は懲戒解雇できる」旨を明記しておくことも重要です。懲戒解雇は従業員の生活に直結する重大な判断のため、解雇の無効について裁判で争わなければならない事態も考えられます。法律上必要な手続きをきちんと踏んでおくことで、解雇が無効とされるリスクを回避できます。

不正通報窓口の設置

管理職である従業員が不正行為をしている場合、部下が不正を知っていることも少なくありません。しかし、部下は上司の不正を会社に告発したために、自分に不利益が生じるのではないかと恐れ、告発をためらうこともあります。このような場合、弁護士事務所などの外部機関を不正通報窓口としておくことで、通報者の秘密を守りつつ、不正を告発できるようになります。また、通報制度が置かれていれば「悪いことをすれば告発される」という警告効果が働くため、不正を未然に防ぐこともできます。

キャストグローバル大阪事務所の内部通報窓口サポート

キャストグローバル大阪事務所は、内部通報窓口の設置・運営サポートを行っています。内部通報窓口といっても、ただ漠然と設置しただけでは効果がありません。キャストグローバル大阪事務所の内部通報窓口サポートでは、就業規則の整備・社内研修・通報があった場合の聞き取り・事実関係の確認までトータルサポートできる点が強みです。法律の正確な知識と豊富な経験、不正発生時の迅速な対応は、弁護士のプロ集団ならではです。ぜひご活用ください。

従業員の横領・不正対策はキャストグローバル大阪事務所までお問い合わせください。

従業員の不正行為はどのような企業でもゼロにはできないリスクです。対応を誤ると横領分の損害だけでなく、企業イメージの低下などダメージが拡大する恐れもあります。
経験豊富な弁護士のサポートで正しく対策すれば、リスクを最低限に抑えられます。キャストグローバルでは、従業員の不正対策に確かな実績を重ね、多くの企業様からの信頼に応え続けています。ぜひお気軽にご相談ください。