• WEB問い合わせ
  • お電話はこちら

離婚・慰謝料 解決事例、コラム

当事務所で解決した離婚・慰謝料事例の一部のご紹介となります。

男性
性別:
男性
年代:
30代
子ども:
あり

再婚相手との子が生まれたことで養育費減額が認められたケース

1 相談内容

 ご依頼者(男性)は、約6年前に元妻と協議離婚をし、その後、元妻に対して養育費を支払っていなかったところ、突然、元妻が弁護士を立てて未払養育費を支払うように請求してきた、ということで、ご相談にこられました。

 ご依頼者は、協議離婚時に公正証書を作成しており、養育費の月額が定められており、強制執行認諾文言(※この公正証書をもとに強制執行をされても異存がない旨の債務者の意思がしめされた文言。公正証書内にこれがあると、裁判を経ずに差押え等が可能となる)、も入っていたため、場合によっては、いきなり元妻側から未払養育費について差押えを受けるおそれがある状況でした。

他方で、養育費(定期給付)の消滅時効は原則5年(※旧民法の場合。なお、2020年4月の民法改正により消滅時効に関する規定が大幅に改正されていますが、結論としては、改正後の事故も同じく原則5年となっています)のところ、すでに消滅時効にかかっている期間の養育費もありました。

 また、本件で、ご依頼者は、離婚後に再婚し、再婚相手の連れ子と養子縁組をし、さらには再婚相手との間に複数の子が生まれていたため、離婚時よりも扶養義務を負う親族が大幅に増えていたため、離婚後に大幅な事情変更がみられ、当初の約定の養育費を維持するのが妥当ではないのではないか、と思われるケースでした。

2 養育費減額調停

 そこで、担当弁護士において、ひとまず消滅時効を援用する旨の内容証明を元妻の代理人の送付したうえで、家庭裁判所に養育費減額調停を申し立てすることになりました。

 養育費の減額が認められるための一般的条件は、①養育費の合意の前提となっていた事情(たとえば、扶養義務者の数や、双方の年収等)に客観的な事情変更が生じたこと、②その事情変更が合意時に予見不能であったこと、③事情変更が当事者の責めに帰すべきでない事由によって生じたこと、④合意通りの履行を強制することが著しく公平に反する場合であること、を満たす必要があるとされています。したがって、仮に①の事情変更があったとしても、多少の収入の増減程度の事情では、もとの合意を変更すべき事情とまでは判断されない場合もありえます。

 今回ご依頼のケースでは、もともと離婚時の条件として、ご依頼者名義の不動産に元妻と子らを一定期間無償で住まわせる(=依頼者が元妻らが無償で住んでいる住居のローンを依頼者が負担する)ことと引き換えに、養育費算定表の基準額よりもかなり低い額で養育費を設定していた、という特殊な事情もありました。このことから、そもそも相場より低額に設定していた養育費を、事情変更によりさらに減額できるのか(④の広平の見地から減額が許容されるか)、という点が問題となり、仮に調停で減額に合意できず、家事審判まで持ち込まれた場合には減額が認められるかどうかが非常に微妙なケースでした。

そこで、審判にまでは至らず、できる限り調停での合意を目指すこととなりました。

3 結果

 調停では、当方からの減額要請に対し、元妻側から、①時効分の養育費を支払ってもらうこと、②将来の養育費については教育資金贈与信託を利用して一括で支払う(信託する)、という二点がクリアできれば、再婚後の事情を考慮して柔軟な減額に応ずることが可能という、という提案がありました。依頼者としても、②は毎月支払う手間が省けるのでこちとしてもかえって便宜であり、①についても、確かに法的には支払い義務がないものの、この先子らが成人するまで長い期間の減額に応じてもらう方がトータルでの減額幅が大きい、ということで、全体で見れば依頼者としてもメリットがあると言える条件でした。

さらに、養育費以外の点として、依頼者としては、現在元妻らが住居としている依頼者の不動産について、約定(子の中学卒業まで)の使用貸借終了の時期が来たら、元妻が素直に自宅を明け渡してもらえるのかの点について長年不安を抱いていたことから、当方から追加条件として、③現在元妻らが居住中の依頼者名義の不動産について、約定期日をもって明け渡し義務を負う(これを「債務名義」といいます)ことを調書に明記してもらうこと、を提案し、元妻側からの了解を得られました。これで、万が一、元妻らが約定期日を過ぎても不動産から退去しなかった場合には、いざとなれば強制執行が可能になる、ということで、ご依頼者の将来の不安が一つなくなります。

本件では、このように、双方の希望条件を上手く組み合わせることで、最終的には双方にとってメリットが感じられる合意内容が形成でき、養育費減額が実現できたという点だけでなく、元妻との間の離婚後の関係性を交通整理できたことについて、ご依頼者からは大変喜んでいただけました。

弁護士法人キャストグローバル
   高槻オフィス 家事担当(離婚)