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離婚・慰謝料 解決事例、コラム

当事務所で解決した離婚・慰謝料事例の一部のご紹介となります。

男性
性別:
男性
年代:
40代
子ども:
あり
職業:
会社員

婚姻費用の未払いがあるとして給与の差し押さえを受けたケース

1 概要

 とある会社員の方からのご相談でした。突然、裁判所から債権差押命令が届いたとのことです。お話を聞いてみると、元妻と別居しているときに婚姻費用について裁判所の審判が出ていたところ、元妻から、その審判が出て以降、現在に至るまで婚姻費用の未払いがあるとして給与差押えの申立てがなされたようです。しかし、ご相談者さまのご認識としては、審判が出て以降離婚するまでの間に元妻と同居していたこともあるし、別居していたときでさえも元妻や子らにかかる費用については十分負担していたから、未払いはないはずだということでした。
扶養義務等に係る確定債権による差押えの場合、給与の2分の1までが差押えられることになり、ご相談者さまと同居しているお子さまの生活が非常に圧迫される状況でしたので、すぐに対応の必要があると判断し、当事務所にご依頼いただくこととなりました。

2 主張立証の方針について

給与の差押えを止めるには、まず差押えの理由となっている「審判が出て以降の婚姻費用の未払い」がないというこという必要があります。それをいうための手続きとして「請求異議訴訟」があります。請求異議訴訟を提起する際、同時に「強制執行停止決定の申立て」をします。これは、請求異議訴訟の判決が出るまで、一時的に強制執行を停止させる手続きです。
一度出てしまった扶養義務等に係る債権差押え命令を一時的にでも止めるためには、裁判所がある程度納得できるような疎明をしなければなりません。他方で、ご依頼者さまとそのお子さまの生活がかかっている状況でもありますので、時間的な余裕もありません。そこで、請求異議訴訟でどう主張するか、その主張を裏付ける資料として何が必要かを判断するためにご依頼者さまからさらに詳細をお伺いしました。すると、審判では「別居が解消されるまでか離婚成立まで毎月○○円支払え」という内容になっていたものの、ご依頼者さまは毎月○○円を支払うというかたちでは婚姻費用を支払っていなかったという事情、もともとご依頼者さまが自宅を出るかたちで別居していたところ元妻が入院をしたことをきっかけにご依頼者さまが自宅に戻り、審判時には元妻が監護養育していたお子さまを途中からご依頼者さまが監護養育することになったという事情、退院後は元妻が自宅に戻ってきて離婚成立までの間は別居解消されていた事情などが出てきました。
審判に書かれているとおりの支払いをしていれば、その支払の状況がわかる通帳の履歴などで未払いのないことを証明(疎明)することは比較的容易かと思いますが、毎月決まった支払いはしていないとなると、毎月のご依頼者さまの負担している元妻とお子さまの生活にかかる費用の項目とその金額を拾い出して、さらにその負担していることがわかる資料を集めなければいけません。通帳の写しや、領収証の写し、クレジットカードの利用明細などあらゆる資料をご依頼者さまより提供いただき、主張に照らし合わせながら証拠の整理をしました。
審判時には元妻が監護養育していたお子さまをご依頼者さまが監護養育することになったという事情は、本来であれば婚姻費用の減額事由に該当しうるため、その時点で減額請求をすべきでありましたが、当時ご依頼者さまはそういった知識もなく、弁護士に相談をすることもありませんでした。他方、そもそもお子さまが元妻のもとで監護養育されていたときから、毎月のご依頼者さまの負担は審判で決まった月額の婚姻費用よりも高い金額でしたから、お子さまを引き取った事情により婚姻費用の月額が減額されるべきだという主張をするよりも、変わらず多額の生活費を負担していたという主張を推すべきと判断し、引き続きご依頼者さまからご提供いただいた資料を主張に照らし合わせながら整理しました。
次に、元妻が入院しているときの取り扱いをどうしようかと検討しました。ともに生活をしていないという意味では、同居とはいえないものの、いわゆる別居とも少しちがうような気がして、ご依頼者さまとも協議していたのですが、入院の費用のほとんどはご依頼者さまが負担されていたこと、当然入院中にお子さまのことをご依頼者さまが監護養育していたこと、入院先の医師との面談や元妻の面会の際、ご依頼者さまは配偶者として対応されていたことなどを主張し、実態としては同居を変わらないという面と仮に別居だとしても費用負担をしているので未払いはないという主張をすることにしました。
最後、退院後に元妻が自宅に戻ってきたという事情は、住民票の異動があれば証明(疎明)がしやすかったのかなとも思いますが、住民票はずっと自宅に残ったままでしたので、元妻宛に郵便物が届いていたことやご依頼者さまやお子さまの陳述書で退院時にご依頼者さまが元妻を病院へ迎えに行き、その後離婚が成立するまでの間、一緒に生活(食事など)をしていたことを証明(疎明)することにしました。

3 その後の手続きと解決

 請求異議訴訟の提起と強制執行停止決定の申立てをすると、まずは強制執行停止について裁判所から担保金をいくらか立てるように言われ、その担保金を法務局に供託しなければいけません。担保金の供託が完了したら、裁判所から強制執行停止決定が出ました。しかし、請求異議訴訟でこちらの請求が認容されるまでは、給与の2分の1は第三債務者(職場)のもとでプールされたままでご依頼者さまの手元に入るわけではありません。ご依頼者さまの生活が圧迫される状況には変わりないまま、請求異議訴訟は裁判の手続きなので、被告(元妻)からは答弁書が提出されるなどし、最終的に尋問の手続きまでしました。
その結果、なんと請求異議訴訟は全面勝訴となりました。主張の組み立てや証拠の準備が功を奏したものといえます。
その後、勝訴判決をもって、強制執行取消しの手続き、担保取消しの手続きをし、これまで職場にてプールされていた給与、担保金がご依頼者さまの手元に戻りました。また、その後の給与は通常とおり満額支払われることとなりました。
 

4 まとめ

本件は、突然給与の差押えという生活に大きなダメージを与える状況で時間的余裕もないなか、主張や立証が一筋縄ではいかない難しい事案でしたが、ご依頼者さまから聞き取った事情から的確な主張および立証ができたため、全面勝訴というご依頼者さまにもとても満足いただける結果が得られたものと思います。
ご依頼いただく案件は一つとして同じものはありません。弊所にご依頼いただきましたら、ご依頼者さまのご要望やご事情に合わせた主張立証の方法をご提案できることと思います。お困りの際はぜひご相談ください。

弁護士法人キャストグローバル
   大津オフィス 家事担当(離婚)