- 性別:
- 男性
- 年代:
- 50代
- 子ども:
- あり
6年以上離婚を拒否し続けてきた妻を説得し、円満な離婚が成立
1 事情
最初のご相談があったのは、最終解決の6年近く前まで遡ります。
相談者は50代男性の方で、「妻と長年不仲なため離婚を希望しているが、何度となく離婚の話し合いを求めても、妻がまったく話し合ってくれず離婚に応じてくれない」、ということで深く悩んでおり、解決のアドバイスを求めて弊所に連絡をしてきました。
最初の相談段階では、まだ相談者と妻とは同居中であり、離婚の理由についても、いわゆる「性格の不一致」ということで、夫婦一方の意思だけで離婚をするたに必要な「離婚事由(民法770条1項各号)」が存在していない状況でした。ちなみに「離婚事由」とは、典型的には、不貞やDVなどですが、こういった事情が認められる場合には、夫婦の一方が離婚に合意しない場合、裁判によって離婚を成立させることが可能です。
そこで、担当弁護士からは、
①現時点で妻の離婚拒絶の意思が固い場合、妻の意に反する離婚を成立させることは難しい可能性があること、
②まずは別居を先行させて(理由は後述)、別居を継続しながら離婚の話し合いを続けることがベターであること、
また、③当人同士では感情的になり話し合いが難しい場合、間に弁護士が介入することで冷静に話し合うことができ、スムーズに解決できる場合も多いこと、等のアドバイスをしました。
もっとも、最初のご相談時点では、ご本人が自分の手で離婚問題を解決したい、との思いが強く、また、直接話し合うことで妻に離婚に応じてもらえるはずという思いもあり、ご依頼には至らずに相談のみで一旦終了しました。
ところが、最初の法律相談から4年以上を経て、再び、依頼者の方から弊所にご相談の連絡があり、「以前いただいたアドバイス通り別居して、その後、幾度となく離婚の申し入れをしているが、いまだ妻が頑なで離婚の話し合いに一切応じてもらえない」と、ご相談がありました。
当人同士が4年以上も話し合って何の進展も見られない状況からすると、このまま時間をかけて話し合っても望ましい解決に至る可能性は極めて低く、また、再度の相談の時点で既に別居から4年が経過しており裁判による離婚も視野に入れた対応が可能なことから、改めて、弁護士介入による解決をおすすめし、離婚交渉のご依頼をいただくこととなりました。
2 別居が「離婚事由」に該当する期間について
民法770条上、離婚事由として定められている事由は次の通りです。
配偶者に不貞な行為があったとき(1号)
配偶者から悪意で遺棄されたとき(2号)
配偶者の生死が三年以上明らかでないとき(3号)
配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき(4号)
その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(5号)
たとえば不貞やDVといった事情がない場合には、上記離婚事由に該当しないことから夫婦どちらか一方の意思のみで離婚することはできません。ですが、こういった事情がないケースであっても、別居を長期間継続することによって、第5号の「その他婚姻を継続」として、離婚事由が認められる可能性がでてきます。
どの程度別居を継続した場合に離婚事由として認められるかについては、裁判例上、おおむね5年以上というのが、一つの目安となります。もっとも、法律で明確な期間の定めがあるわけではありませんので、5年未満で認められたケースもあります(たとえば、某芸能人の離婚裁判で、別居2年程度の比較的短期間で離婚事由が認められた事例などもあります)。
3 離婚調停
今回の件は、上記の経過を経て、離婚調停の申立てに踏み切ることとなりました。
離婚事件については、「調停前置」といって、いきなり裁判を起こすことはできず、まずは調停での話し合いを試みるように法律で定められています。もし、調停が不調(お互いに離婚の合意に至らなかった場合)となった場合には、その後は離婚裁判を提起して争わざるを得なくなります。
離婚調停は、ちょうど申立てのタイミングで運悪くコロナ禍で家庭裁判所の期日が長期間入らない時期と重なってしまい、調停開始までに思いもよらない時間を要しましたが、その後、期日を重ねるなかで、辛抱強く妻を説得していきました。
これによって、当初は心情的にまったく離婚を受け入れられず頑なな態度であった妻も、徐々に離婚を受け入れていく心境の変化が見られ、離婚条件を具体的に話し合うことができるところまで歩みよりました。
そして、離婚条件については、妻が離婚成立後について懸念していること(離婚後の老後の生活や、子(すでに成人)に対しては変わらず親として双方協力して支援してほしいこと、等)を聞き取って、その懸念をひとつひとつ解消していく方向で当方の条件提示をしていくことで、具体的条件のすりあわせが進み、最終的には、夫婦ともに納得ができる内容での離婚条件にたどり着き、第1回期日から調停成立まで約8ヶ月程度の期間で離婚に合意することができました。
4 終わりに
依頼者の方は、「離婚はしたいけれどもあくまで円満に解決したい」とかねてより強い希望をいただいていましたが、最終的には、弁護士が介入して裁判所の力も借りながら粘り強く交渉することで、双方ともに納得のいく内容での穏便に離婚が成立し、大変喜んでいただけました。また、「最初から弁護士に依頼しておけば、夫婦お互いに余計な時間もかからずにこんなに悩まずに済んだはず、最初のアドバイスをもらったときに素直に依頼しておけば良かった」とのお言葉を頂戴しました。
実際、長年夫婦間で話し合っても進まなかった話し合いが、弁護士が介入した途端に解決に向けて動き出す、ということもよくあります。今回のケースはまさにその典型例で、結果としては夫婦間にしこりが残らず解決ができたケースとなりました。
弁護士法人キャストグローバル
大津オフィス 家事担当(離婚)