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離婚・慰謝料 解決事例、コラム

当事務所で解決した離婚・慰謝料事例の一部のご紹介となります。

男性
性別:
男性
年代:
40代
子ども:
あり

妻が子を連れて家を出たが、協議により男性の親権を獲得できた事例

1 事案の概要

本件の依頼者は、「以前より口論の絶えなかった妻が子ども2人を連れて家を出て行ってしまった、その後子どもたちに会わせてもらえない」という深刻な状況でご相談に来られました。本件のように一方の配偶者がある日突然子どもを連れて家を出るという事例は少なくありませんが、実際自分の身に起こると何をすべきかわからなくなる方が多いかと思います。
特に親権・監護権の争いが見込まれる場合は初動が最重要で、スピーディーな対応が必要となりますのでお早めに弁護士へご相談いただければと思います。

2 親権・監護権について

では、親権・監護権が争いになる場合、どのように決するのでしょうか。
とても大まかに言えば、どちらの当事者が子にとってより良い監護環境を与えられるかという観点から総合的に判断することとなります。判断にあたっては、①子の主たる監護者が今まで誰であったのか、②今後子をどのように監護できるのか、③子がどのように希望しているのか、という要素が特に重視されます。

①子の主たる監護者

夫婦のうち今までどちらが主として子の監護を行ってきたかという考慮要素になります。基本的に子どもにとって監護環境が大きく変わることは適切ではありません。そのため、以前から子を主として監護してきた者が今後も継続して子を監護する方が相応しいだろうと考えるのです(従前の監護環境に大きな問題がないことを前提とします)。
皆様は「親権・監護権争いにおいて男性は不利」という情報を耳にされたことはないでしょうか。確かに、一昔前に比べ男性側に親権が認められるケースも増加傾向にあるようです。とは言え、子が幼いうちは妻が時短勤務で子どもを見るというご家庭が今でも多く、となると必然的に子の主たる監護者は妻となります。
こうした理由から親権・監護権において男性は不利という情報は強ち間違いではないように感じます。男性としては、日頃から育児に積極的に参加し、子の監護を十分に分担していたと主張できる実績を作ることが大切になります。

②今後の監護体制

第2の要素は、当事者それぞれが今後子をどのように監護することができるのかというものになります。夫婦が別居に至る前は、夫婦協力のもと子を監護していると思われますが、別居後は新たな環境での生活が始まります。両者の監護環境を比較してどちらに引き取られる方が適切なのか、詳細に検討することとなります。この際、子の監護をともに行う監護補助者(多くの場合、子の祖父母が該当すると思います)がいる場合は、どのような協力が得られるのか、具体的に説明することが求められます。

※子が既に一方当事者の監護下にある場合※
これから離婚協議・別居を開始する夫婦は既に述べたとおり双方が提示する監護体制を純粋に比較することになろうかと思います。しかし、子が既にどちらか一方の当事者に監護されている場合は事情が大きく異なります。①でも触れましたが、子どもにとって監護環境が度々変動することは望ましいとは言えません。そのため、一方当事者が子どもを連れて出た後、既に別居後の新たな生活を問題なく送っている場合、子が現在置かれている監護体制ないし生活環境をあえて変える必要性があるのかという観点が判断に加わることとなります。
したがって、一方当事者が子を連れて出て行ってしまったという案件は、子が新たな環境に馴染む前に一刻も早く裁判所に申し出る必要があります。

③子の意思

子ども本人の意思も見過ごし難い一つの考慮要素として挙げました。裁判所から最終的に出される結論が、子の意思に反したものとなる場合、身柄の引渡しが現実的に困難になる場合もあります。そのため、子に明確な意思がある場合は耳をかたむける必要があります。ただし、一方の当事者が子を連れて出た場合、子は監護親の意思をくみ取り、ときには非監護親に対して敵対感情を抱くこともありますので、子の年齢や発達の度合いに応じて慎重に判断すべきであると言えます。

3 弁護士の対応と解決

さて、本件について上記①~③の要素に沿って考えた場合、主たる監護者は相手方である妻と言える事案でした。また、依頼者がお子様たちを引き取った場合の監護体勢は十分と言えるものでしたが、既に妻に引き取られている以上、調停・審判を申し立てたとしても裁判上親権・監護権を勝ち取ることはほぼ不可能に近いケースでした。ただ、依頼者から、上の子は部活動の関係から依頼者の実家である自宅からの転居や転校は望まないはずであるとお聞きしたことから良い形で解決できないかと考えました。
当初は子の引き渡しを求め審判を申し立てることも検討しました。しかし、両当事者に緊張の走る別居開始直後に攻撃的な姿勢を示すことは得策でないと考え、協議による解決を試みることとなりました。具体的には、積極的に面会交流を実施しつつ、仮に依頼者が親権者となった場合、お子様を十分に監護できることや自由に行き来できることをご理解いただけるよう示しました。
結果として、生活上の都合も考え、2人のお子様のうち上のお子様について依頼者が親権者となることで協議がまとまりました。

4 最後に

親権を獲得することが非常に困難な状況から上のお子様の親権を獲得することができ、依頼者からは感謝のお言葉をいただきました。本件を振り返ると、相手方を必要以上に攻撃せず、冷静な協議を続けることで信頼を得られた点が良い結果に繋がったと思います。一方で、少しでも早く裁判上の手続を申し立て、しっかり争う必要性のある事案もあります。適切な対処法を事例にごとにご提案させていただくことができるかと思いますので、お困りの際はぜひご相談ください。