離婚問題は離婚の成立により一段落します。しかし、それで全て終わりというわけにはいきません。離婚による婚姻生活の解消は、新たな人生のスタートですから、それに伴い、様々な手続をしなければならないのです。やっと離婚成立したのに、まだやることがあるのか…と気が滅入りそうですが、あと少しですから、辛抱しましょう。今回は、そうした離婚後に必要となる諸手続の概要や注意点について解説します。
離婚後の諸手続一覧
手続の種類 | 手続先 | 期限 | 備考 |
---|---|---|---|
離婚届の提出 | 役所 | 離婚成立日から10日 | – |
婚氏続称届の提出 | 役所 | 離婚成立日から3ヶ月 | – |
子の戸籍の変更 | 役所 | – | 事前に家裁の子の氏の変更許可必要 |
年金分割 | 年金事務所・共済組合 | 離婚成立日から2年 | – |
健康保険の切替 | 勤務先・役所 | ||
年金の切替 | 役所 |
離婚届の提出
協議離婚の場合には、お互いに離婚届の必要事項を記載した上、署名・捺印すれば、随時提出することになりますから特に問題はありません。
他方、調停離婚や裁判離婚の場合には、離婚成立後、別途、離婚届を届出人の本籍地または住居地を管轄する役所に提出しなければなりません。この場合の離婚届の提出期限は、調停・裁判による離婚成立日から10日以内ですから、遅れることなく提出しましょう。
婚氏続称届の提出
離婚の成立により、原則として、婚姻により姓を改めた者は、婚姻前の姓に戻り、従前の戸籍から抜けます。
他方、離婚後、なお婚姻中の姓を続けて使用したい場合には、届出人の本籍地または居住地を管轄する役所に婚氏続称届を提出することにより、従前の姓のまま新たな戸籍を作ることができます。この届出は離婚成立日から3ヶ月以内に行わなければなりません。
なお、もしも婚氏続称届の提出が期間制限を守れなかった場合には、家裁の許可を得て氏を変更することになります。この場合には、法律上は、氏を変更することにつき、やむを得ない事情を必要としていますが、婚姻時の氏を名乗る場合は、比較的容易に認められるようです。
子の戸籍の変更
未成年の子にとって、両親の離婚は、親権者の変更を伴うものの、当然に、姓、戸籍の変更を伴うものではありません。そのため、離婚に伴い、戸籍から抜けた親の戸籍に子を入れたい場合には、まずは、子の氏の変更をしなければなりません。
これは、家庭裁判所に対する子の氏の変更許可を求める手続により可能です。ちなみに、仮に、離婚後、婚氏続称した場合でも、法律上は別の氏として扱われるため、やはり、子の氏の変更許可の手続は必要になるので注意しましょう。
家庭裁判所の許可により子の氏を変更できれば、あとは、届出人の本籍地または居住地を管轄する役所に入籍届を提出することにより、子の戸籍の変更は完了します。
年金分割
年金分割とは、婚姻中の年金保険料の納付実績につき、離婚に際して分割する制度です。年金分割は、名目上の一方配偶者の年金保険料納付実績を清算して、将来の財産分与のような制度です。
但し、これは当然に分割されるものではなく、離婚成立日より2年以内に所定の手続を経なければなりません。手続先は、管轄の年金事務所・共済組合です。
健康保険の切替手続
婚姻中、相手方配偶者の扶養家族になっていた者は、離婚により、扶養家族ではなくなりますから、離婚後、健康保険の切替を行う必要があります。
この手続は、離婚後の就業状況に応じて若干異なる点に注意しましょう。すなわち、離婚後無職の場合には、離婚後に加入するのは(新たな)国民健康保険であり手続先は役所になり、就業している場合には、離婚後に加入するのは(新たな)健康保険であり手続先は自分の勤務先になります。
たとえば、婚姻中、夫はサラリーマン、妻は専業主婦であり、離婚後、妻は就業しないケースにおいて、妻は、夫の健康保険から離脱して、国民健康保険に加入する必要があり、そのためには、まず夫から勤務先を通じて被扶養者の資格の喪失証明書を取得してもらい、次に、役所に自身を世帯主とする国民健康保険の加入手続を行うことになります。
なお、離婚成立後、健康保険の変更手続完了までの間に病気やケガのために病院を受診したような場合には、基本的に無保険として治療費を全額負担することにはならないので安心してください。
年金の切替手続
婚姻中、夫の被扶養者として、年金制度における3号被保険者の資格を有していた者は、離婚により、この3号被保険者の資格を喪失しますから、新たに1号被保険者に変更する手続をしなければなりません。なお、この手続における夫の被扶養者ではなくなったことの届出については既に健康保険の変更手続において同内容の届出を流用できますから、原則、必要ありません。
その他
その他、離婚に伴い変更手続を要するものは、結構たくさんあります。たとえば、運転免許証の氏名・住所変更、印鑑登録の変更、銀行の口座名義人・住所の変更などです。
また、離婚に伴い夫名義の財産の名義を変更する場合には、やはり財産ごとに定められた所定の変更手続を行う必要があります。この種の変更手続のうち、意外に面倒なのは、自動車の名義変更です。自動車の名義変更の管轄は、自動車の使用地の運輸支局となり、譲渡証明書、委任状、印鑑証明書等の書類を必要とします。
わからないことやトラブルが発生しそうな場合は相談を
以上のとおり、離婚問題は離婚の成立により全て終わりではなく、離婚後にいくつかの必要となる諸手続を行う必要があるのです。また、各手続には、それぞれ期間制限の設けられているものもありますから注意する必要があります。
こうした離婚後の手続について、悩んでいる方は、一度当事務所の弁護士までご相談ください。必要な諸手続についてのアドバイスにより、やるべきことが明確になり離婚後の諸手続もスムーズに行えるでしょう。