労災問題

弁護士コラム

2019/02/06(水)

労働者による労災の申請方法と申請が拒否・棄却された場合の対処法

業務中に事故にあった場合や、パワハラなど心理的なストレスで、精神疾患にかかった場合は、労働者災害補償保険(「労災保険」)が頼りになりますが、その申請方法がよく分からないといったことがあるかと思います。また、申請を行った場合であっても、拒否・棄却された場合には、一体どうしたらよいのでしょうか。簡単に説明していきます。

労災の申請方法

労災とは、業務上の事由または通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等が生じた場合を言います(労働者災害補償保険法1条参照)。労災には肉体上の障害のほか、精神上の障害として、うつ病などの精神的な疾患も含まれます。このような労働上の災害に遭遇した場合には、労働者は労災の申請を行い、法律上、補償を受けることができます。

通常は、雇用主である会社が、労働者のために労災申請を行いますが、協力を得られないといった場合もありますので、その場合は労働者自身により、労災の申請を行うことができます。

労災の場合は保険(「労災保険」と言います。)の支払を請求できますが、その請求は、労基署に対して行います。請求書の書式は各労基署で入手可能ですし、厚生労働省のウェブサイトよりダウンロードにて入手することもできます。

なお、労災保険には1)療養補償給付、2)休業補償給付、3)その他の保険給付があります。労災保険は強制加入なので、仮に会社が手続をしていない場合であっても、労働者は補償を受けられます。ただし、労災保険の補償を受ける前提として、医療機関での診療の受診が必要となり、また、労災申請用に医師による診断書が必要となる点にご注意ください。診断書は、医師に労災申請で使用する旨を伝えればもらうことができます。

会社に労災申請が拒否されたときの対処法とは

労災に遭遇してしまった場合であっても、会社がなんらかの理由によって、労災申請を拒否するといった場合があります。このように会社が労災申請に協力しない場合であっても、前述の労災保険給付に関する請求書を、労働者自らが労基署に提出することができます。この場合には、「会社から協力が得られない」などの振り合いで請求書に記載し、医師の診断書を添付します。

労基署に労災申請を棄却されたときの対処法とは

労災保険の請求をした場合であっても、労基署がその請求を棄却する場合があります。この場合には、不服申し立ての方法として、審査請求を行い、それでも請求を棄却された場合には、再審査請求を行うことができます。また訴訟を提起するといった方法もありますが、法律上、審査請求の後(正確には、「審査請求に対する労働者災害補償保険審査官の決定を経た後」:労働者災害補償保険法38条)でなければ、訴えを提起する事はできません。なお、審査請求は文書でも口頭でも可能ですが、一般的には文書によって請求を行います。

弁護士による労災申請とは

労災に遭遇した場合は、通常、会社が申請を行いますが、何等かの事情により申請しない場合や、申請に協力しないといったことがあります。こうした場合、原因の一部としては、会社がその受傷や精神疾患を、労災だと認めていないといった場合があり、こうした場合、弁護士が介入することにより、請求することができます。

また、弁護士が介入する場合には、労災に関して、因果関係を証明するための資料の収集や、労災認定に必要な資料の収集を行うなど、労働者自身で行うことが難しいことを代行してくれるといったメリットがあります。この他にも、会社や労基署と代わりに交渉を行うなどをしてくれます。労働者の障害が、労災との因果関係を否定される場合などに、弁護士が介入する利益があります。

まとめ

労災申請は通常は会社が行ってくれますが、会社がブラック企業であったり、労災そのものを否定するなどしている場合には、申請そのものを行わない場合があります。こうした場合は、労働者自身が労基署に労災保険の請求を行うことができますが、手続が複雑であるなど、困難な場合があります。こうした場合には、弁護士などに相談するといった方策により、十分な補償を受けられる可能性が高まります。

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