解決相談事例
介護作業中に左手を骨折、満額を勝ち取れた例
- 40代
- 男性
ご相談に至った経緯
今回は,介護施設の送迎ドライバーの仕事(アルバイト)をしていた方が,介護施設従業員の指示で,介護施設利用者を移動させる作業を手伝うことになり,当該作業中にケガをされた方からの相談事例についてご紹介します。
⑴ 相談者について
相談者は,介護施設に,送迎ドライバー(アルバイト)として雇用されていました。具体的な業務内容は,施設利用者を自宅に迎えに行き,介護施設に送ります。その後,介護施設での介護が終了したら,介護施設から自宅へ送るという業務になります。
相談者は送迎ドライバーとして採用されており,介護に関する資格は有しておらず,また,介護の仕事の経験もありませんでした。
⑵ 事件の詳細について
相談者は,介護施設の従業員(正社員)(以下,「施設従業員」と言います。)と2人で,相談者が運転する車で施設利用者を自宅まで迎えに行きました。施設利用者は2階にいたのですが,歩くことができないとのことだったため,施設利用者を移動させることになりました。
前述のように相談者は送迎ドライバーとしての採用であったため,施設利用者の移動も含めて介護作業は業務内容になっておりませんでしたが,相談者を含めて2人しかいなかったことと正社員である施設従業員からの指示であったため,指示に従うことにしました。
施設従業員から,施設利用者を車イスに乗せて,施設利用者を車イスに乗せたまま車イスごと1階まで運ぶことを指示されました。
相談者としては,その時に用意してあった車イスはブレーキのついていないものだったこともあり,その運び方は危ないと思い,施設従業員に対して危ないため,別の方法がいいのではないか,と伝えましたが,聞き入れてもらえずやむなく施設利用者を車イスに乗せたまま移動させることとしました。
施設利用者を車イスに乗せて,車イスごと1階に移動させようとした際,相談者と施設従業員が車イスの前と後ろをそれぞれ持ち,一段ずつ下りましたが,息が合わず相談者は階段を滑ってしまい,施設利用者が車イスから落ちそうだったため,それを避けるために相談者が車イスの下に入った結果,左手が車イスと床に挟まれてしまい,左手の小指と左手の甲を骨折してしまいました。
その後,通院し,手術をしましたが,しばらくは握力が低下した状態でした。
治療を終え,労災申請をした結果,14級9号に認定されました。
相談者は,握力が低下した状態であるにもかかわらず職場から職場復帰を求められましたが,会社に不信感を持ったため,復帰することなく退職しました。
なお,施設利用者にケガはありませんでした。
キャストグローバルの対応とその結果
⑶ 弁護士への依頼
相談者は送迎ドライバーとしての採用であり,介護作業は担当業務外であること,施設利用者の運ぶ方法として不適切な方法であったと考えられることなどから勤務先に安全配慮義務違反があり,損害賠償義務があると思われる事案でした。
また,相談者から相談を受けた時点で後遺障害の14級に認定されていました。14級に認定されている場合,弁護士費用を考慮しても依頼する経済的メリットがあることが多いです。
ただ,伺った限りですと相談者にも多少落ち度があったと思われ,訴訟になった場合には過失相殺され,請求額が一定割合減額される可能性があり,弁護士費用を考慮すると費用倒れになるとまでにはならないものの,最終的に相談者の手元に入るお金が思いのほか少ない可能性がありました。
相談者にこれらを全て説明し,勤務先に対して何も請求しないということは考えられないこと,相談者自身では対応できないため,正式にご依頼となりました。
⑷ 解決
労働局から労災に関する資料を取得し,正確な請求額を算出しました。
その後,勤務先である介護施設に対して書面を送ったところ,勤務先は支払いを拒否するような回答ではなく,こちらからの請求額の裏付け資料の確認,労災から支給された金額の確認などをして,最終的にこちらの請求額満額で合意をして,一括で送金されて,解決となりました。
過失相殺を理由として減額される可能性がありましたが,減額されることなく,請求額満額での示談となりました。
- 解決結果
2 弁護士に依頼するメリット 上記⑷解決において,すんなり和解できたように書きましたが,実際は示談までに半年以上かかりました。労働局からの資料の開示に1ヶ月以上かかったこともありますが,勤務先とのやり取りに時間を要しました。 勤務先からすると,普段の業務をやりながら,それに加えてこちらからの損害賠償請求に対して対応しなければならないこと,対応する内容としては勤務先が金銭的な負担をするという勤務先からすると積極的に対応したくない内容であった(対応を遅らせることであわよくば請求が止んでくれればよい内容であった)と思われ,勤務先の対応は非常に消極的でした。具体的には,書面を送るも返信はなく,電話をしても担当者不在との回答で,折り返しの連絡希望であることを伝えても折り返しの連絡がないというのが複数回ありました。 相手から反応がない,あるいは反応が悪い場合,最終的には訴訟等の法的手続を取ることになりますが,交渉段階で法的手続を取る可能性があることを伝えることで半強制的に前に進めることができます。そのためには実際に法的手続が取れる状況が必要となりますので,その観点からすると一般の方のみでの対応は厳しく,弁護士による対応が必要になると思います。 今回の相談者の件では,相談者のみで対応していたのではずるずると引き延ばしをされてしまい,最終的に支払いがなされないという可能性があったと思われます。このため,弁護士を入れて解決すべき事案だったと考えます。 その点以外にも,労災事案において法的に請求が認められるのかという点,妥当な請求額の算出などは比較的専門性が高い内容になりますので,弁護士に相談された方がよいと考えます。 お困りのことがございましたらお気軽にご相談いただければと思います。