民事信託とは 民事信託とは

民事信託とは

信託とは?

一般的に「信託」と言われると、信託銀行などの「遺言信託」や投資商品としての「投資信託」を想像される方が多いと思いますが、「民事信託・家族信託」は全く違ったものとなります。

信託とは、財産の所有者(委託者)が信頼のおける人・法人(受託者)に金や不動産、株式等有価証券などの財産(信託財産)を託し、信託行為(遺言・信託契約など)によって、定められた目的(信託目的)にしたがって受取人(受益者)のためにその財産(信託財産)を管理・処分する仕組みです。

家族信託、民事信託、商事信託など〇〇信託といった言葉がいろいろあります。受託者が家族であれば家族信託、受託者が私人であれば民事信託、受託者が信託会社であれば商事信託といいます。
しかし、これらは、受託者が誰かというだけに差に過ぎません。実質的に、区別する実益は、業として受託者になろうとしている人(会社)以外、気にする必要はありません。信託法に基づく契約をするのみで、別の法律が存在するものでもないです。

信託とは?

民事信託(家族信託)について

民事信託は、遺言や成年後見制度などの代用、もしくは併用することができます。
これにより、相続や成年後見制度のデメリットなどを解消することができ、より自由度の高い財産管理・処分・承継の仕組みを構築ができます。

民事信託のうち、委託者の家族や親族が、受託者となって管理・処理を行うことを、家族信託と呼ぶこともあります。
近年、高齢化や核家族化が増加し、何十年先のことを考えた資産管理をする必要が出てきたため、家族信託が注目されるようになってきました。
なぜならば、信託した後は、たとえ認知症やなんらかの障害を負ったことで判断能力が低下した場合でも、大切な家族のために財産を守ることができるからです。

信託によって託すことができる財産は、どんな財産でも可能です。不動産(土地及び建物)、金銭、債権、有価証券、仮想通貨などさまざまです。

信託とは?

民事信託のメリット

  • 委託者の意思を亡くなった後でも引き継ぐことができる

    もっとも大きなメリットであるのが、委託者の判断能力が低下したとき、委託者が亡くなったときでも、組成した信託財産は、定めた契約内容に従って、管理・処分、承継できる点がです。これは、遺言、任意(成年)後見でも、一部可能ではありますが、かなり限定されるため、民事信託の大きなメリットとなります。
    自身が認知症などの判断力低下等のもしもの事態に備えて、財産管理・処分、財産の承継をどのようにするかを予め決めておくことができます。信頼できる家族が委託者となって財産の管理処分をしてくれるため、安心することができます。

    万が一の事態に備え、事前に信託契約を結ぶことで、判断能力が低下による資産の凍結を防止し、これまでとおり財産を有効に活用することができるので、家族の生活を守ってあげることができます。

  • 倒産隔離機能が働く

    信託財産は、委託者から受託者に移転します。不動産の登記名義も変わります。しかし、所有権が移転するわけではありません。受託者は、契約に基づいて管理処分することができますが、自己名義の財産ではありません。したがって、受託者が、債務超過になったり、破産した場合でも、受託者の固有財産として、受託者の債権者が差し押さえることは出来ません。したがって、受託者の資力に問題が生じても、信託財産に影響はありません。ただし、信託財産を分別管理する必要があり、平成30年現在では、大半の金融機関が信託財産の分別管理に対応できていないため、注意が必要です。
    また、逆に委託者が財産を信託した後に破産しても、託した財産は信託財産となっていますから、委託者の債権者が差し押さえ等することはできません。ただし、強制執行逃れをするために、信託を組成したと認められる場合を除きます。

    倒産隔離機能が働く

    つまり、委託者または受託者が、信託設定後に破産・倒産したとしても、原則として、信託財産は影響を受けず、強制執行などされることはありません。

  • 将来の財産管理・処分、承継先の指定ができる

    信託の設定により、受益者が死亡した場合、次の受益者を指定することが出来ます。信託法上、期限の定めがある条文が整備されていますが、死亡という概念がない法人が引き受けることで理論的には永続することが出来ます。また、次の受益者だけでなく、その次、さらに次を指定することも可能です。もっとも、あまりに先のことまでを契約で縛ることは、意味をなさないでしょう。
    例えば、自身の妻が1次の受益者となり、もし亡くなった場合、息子へ、その次は孫へと次世代からそのまた次世代へと言った形で、信託財産から利益を得る人を決めておくことができます。

    将来の財産管理・処分、承継先の指定ができる

    遺言で財産を相続する人を決めることは出来ます。しかし、その財産は相続人の所有となり、その財産をどうするかは、その相続人が決めることになります。遺言で、次の相続のことを決めることは出来ませんし、記載していたとしても、その部分に関しては無効となります。