解決事例 解決事例

解決事例

遺産分割・生前の使い込み事案

  • 【亡くなられた方】母親
  • 【  相続人  】相手方(長男)・依頼者(次男)

ご相談内容

ご相談者様は、お母様の生前に、遺産総額が数千万円あると聞いており、お母様からは、長男が家を継ぐから、遺産の半分ではないけれど次男には900万円を分けるようにと伝えていると聞かされていました。
お母様が亡くなった後、相手方から100万円を遺産分割として渡されましたが、ご相談者様が、聞いていた話と違うからおかしい・せめて母が約束していた900万円をきちんと分けて欲しいと伝えたところ、100万円を取り上げられた上で、それならお前が家を継げと迫られ、遺産分割の冷静な話し合いが出来ないとのことで、困られてご相談に来られました。

解決方法

遺産分割調停後、交渉にて解決

解決までの経緯

解決までの経緯

(1)遺産の調査   まずは、遺産総額が本当に数千万円あったのかどうか、遺産調査から着手しました。   そうすると、亡くなられた時点での相続財産は数万円しかなく、ほとんどの預金は、お母様が亡くなられる前に解約されたり引き出されたりしていました。   生前に解約されたり引き出されたりした金額を合計すると、ご依頼者様がお母様の生前に聞かされていた遺産総額とほぼ同程度の金額になります。   多額の預金が、お母様の亡くなられる前わずか数カ月以内で引き出され・解約されて現金化されていました。   それまでの生活状況からすると、お母様のお金の管理は相手方の長男がやっており、ご依頼者様は、お母様がご自宅で生活されている際には叔母と交代で泊まりに行ったり、病院でも泊まり込みで看護されたりと身の回りの世話をしておりました。   ですので、お母様の生活費や入院などの費用でそんなに多額の金銭が数カ月で必要になるはずがありませんでした。 (2)交渉   そこで、生前引出分については相手方が管理しているはずでしたので、それも含めてこちらの遺産調査の結果を添えて、生前引出分も併せて遺産分割するように協議を求めました。   しかし、相手方は、遺産なんて何にも残っていないと主張したり、家を継ぐなら(何も残っていないから)全部渡す等と主張したり、お父様が亡くなった時にご依頼者様に分割したので十分だと主張する等、なかなか法的な基準でのお話合いが進まず、事実確認すら難航していました。   更に、相手方は、お母様の生前に一部預金を解約したり引き出したりした事実は認めつつ、引き出した現金はお母様が生前暮らしていた実家(空き家)に保管していたが、盗まれた等の主張もするようになりました。   交渉は難航していましたが、こちらから相手方の主張が法的には認められないことを一つずつ根気よく再反論を行ったところ、相手方は納得はしていないものの、面倒になった のか、細かい事実確認をされることを嫌ったのか、「いくらで解決するのか」というとこ ろまではたどり着きました。   ご依頼者様も、出来るだけ調停は訴訟などにはしたくないというご意向があったため、法定相続分よりは下回る金額ではあるけれど、お母様が生前に約束してくれていた金額の遺産分割で合意出来るのであれば、これ以上争いたくないということになりました。   そこで、当方としては早期解決のためのギリギリの譲歩案であることを説明の上で、ご依頼者様の上記意向を相手方に伝えましたが、結局、そんなお金は出せないとの一点張りであったため、やむなく一旦調停申立てを行いました。 (3)調停   訴訟提起も検討しましたが、相手方が弁護士をつけていないために客観的に法的な水準での話し合いが難しかったという事情があったことや、依頼者様の意向も踏まえ、一旦遺産分割調停という形で調停申立てを行いました。   第三者である調停委員からの法的基準の説明があれば、もう少しお話合いが進むのではないかと考えましたが、結論から申し上げますと、結局のところ調停委員との間でもなかなか客観的なお話合いが進まず、遺産のほとんどが生前引出金が問題となっていたことから、調停をいったん取り下げて訴訟提起に進むことになりました。 (4)再度の交渉   相手方が一切譲歩しないという結論が変わらないことを確認し、やむなく調停を取り下げて、訴訟提起の準備をしていたところ、相手方から再度話し合いたいとの連絡がありました。   最終的には、生前引出金のうち相手方が保管していた現金の中から、当方の当初和解提案額の900万円(依頼者様がお母様から約束してもらっていた額)を遺産分割として受領するという内容で和解をすることが出来ました。

争点等—生前引出しの場合の手続選択

遺産相続の問題で、よく争点になるのが、生前の引出しです。   もちろん、被相続人が生前に引き出して使うのは自由なので、原則的には被相続人が亡くなった時点での財産が「遺産の範囲」ということになります。   しかしながら、例えば、被相続人が入院中で自分で引き出す必要もなければ、自分で引き出す機会もないような期間に不自然な引出し(例えばATMで毎日上限額引き出されている等)があれば、当該期間に通帳やカードを保管していた相続人が引き出した可能性が高いというようなケースがあります。   また、亡くなる直前に本件のように数千万円のお金が引き出されていたり、相続人の一人が代理人として定期の解約をしているようなケースでも問題になりやすいです。   そして、他方の相続人が事情を全く知らない場合には、引き出した相続人の言い分が、「生前贈与」なのか「預り金」なのか、引き出した事情や使途の主張に応じて、対応を検討する必要があります。   通常は遺産分割調停が和解でまとまらない場合には、審判移行という形で裁判所に決めてもらうことになるのですが、本件のような生前引出しについて話し合いでまとまらない場合には、ケースによっては別途「不当利得返還請求」という形で、訴訟で「遺産の範囲」を確定させる必要があるケースもあります。   今回は、一旦調停申立てを行ったことは、いきなり訴訟提起するよりも遠回りにも思えますが、相手方の訴訟提起を避けたいという意向から和解に至ったことからすると、結果的には早期解決につながったことになります(当方としては、調停内でまとめたかったところではありますが)。   仮に、訴訟での解決になる場合でも、調停内である程度の言い分や資料が得られているということが有利に働くケースもありますので、手続選択は理屈だけではなくケースバイケースで、悩ましいこともあります。

コメント

金額的には、生前引出し額の1/2を下回る金額での和解ではありますが、一部は被相続人の必要な費用に充てられていた可能性があったこと、争う余地はあったものの被相続人が相手方から借用した金員を返済するとの書面が提出されていたこと、何よりご依頼者様としては、「お母様のご遺志を尊重したい」という意向や、紛争が長期に及ぶことは避けたいという意向があったことから、最終的に和解に至ることとなりました。  お母様の生前のご遺志通りには解決できたことから、ご依頼者様にもご満足いただくことが出来ました。  調停後の和解交渉の際にも紆余曲折があり、交渉事件としては短期間とは言えませんが、調停・訴訟に至る遺産分割の事件としては、比較的短期での解決が出来ました。  親族間の紛争は、どうしても当事者同士だけでは心労も大きくなってしまうことや、直接は遺産分割に関係がないような過去にさかのぼっての種々の事情や、言葉の行き違いや誤解などから拗れてしまうケースもあります。直接のやり取りをしなくて良いという点でも弁護士が入ることでお気持ちが楽になられる方もいらっしゃいます。お気持ちがしんどくなる前に一度ご相談頂ければと思います。 以上