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離婚・慰謝料 解決事例、コラム

当事務所で解決した離婚・慰謝料事例の一部のご紹介となります。

男性
性別:
男性
年代:
20代
子ども:
なし

婚約破棄に対して慰謝料請求をしたい

1 事案の概要

Aさんは交際期間約半年で女性と結婚の約束をしました。両親に挨拶し、婚約指輪を購入し、結婚式場を予約し、結婚へ向けて着々と準備を進めていました。ところが、ある日唐突に婚約者から「結婚できない」と言われ、婚約を破棄されてしまいました。また、相手方の婚約者は婚約を破棄するだけにとどまらず、万一身体に何かあれば責任をとってもらいたいといった内容のメッセージをAさんに送信してきました。Aさんは、予想もしない出来事にショックを受けられる中、自身の受けた精神的苦痛の損害を請求したいことはもちろん、何より婚約者であった女性と今後トラブルにならないように問題解決できないかということで弊所を訪ねて来られました。

2 当事務所の対応

“婚約状態を破棄されたから被った損害について慰謝料請求をする”。一見簡単そうに思えますが、必ずしも容易に損害賠償が認められるわけではありません。婚約破棄を理由とする損害賠償が認められるには、以下の点を検討する必要があります。

①そもそも交際中の男女は「婚約」していると言えるのか、
②相手方の婚約破棄に正当な理由がないと言えるのか、
③損害額の金銭的評価をいくらとするか。

①まず、婚約とは「結婚しよう」という合意を意味しますので、口約束でも成立します。ただ、婚約破棄が争いになった場合、裁判上で婚約関係(結婚するという契約が成立した状態)を第三者である裁判官に認定してもらうためには、婚約が成立したことを示す証拠が必要です。結納の実施、式場の予約、両家の顔合わせ、婚約指輪の購入等の事実があれば二人が婚約関係にあったことを客観的に立証し得る方向に働きます。逆に言えば、確かに二人の間で結婚の約束をしていたとしても、相手方から婚約していないと主張された場合にその事実を証明することができなくなってしまうため注意が必要です。

②次に相手方が婚約破棄をしたとしてもやむを得ないと言えるような正当な理由が存在しないことが必要になります。例えば、多額の借金を隠していた場合や暴力を振るった場合、破棄された側が不貞行為を行っていた場合等がこれにあたると考えられています。

③そして、婚約破棄が相手へ与えた損害をいくらとして評価するかという問題になります。一般的に、婚約破棄の慰謝料の相場は50万円から200万円程度とされていますが、事案によってかなりの幅があります。それでは、どのような事案であれば賠償額が高くなるのでしょうか。端的に言えば悪質な婚約破棄であると言えるほど賠償額が高くなります。婚約に至るまでの期間の長短、婚約後における交際期間の長短、妊娠・出産の有無、婚約破棄に至った経緯、当事者の年齢等の事実を総合的に判断して決めることとなります。例えば、高校時代から10年間交際して、結婚を意識する28歳となった女性が男性からプロポーズを受け、婚約を機に家庭を支えるべく仕事を辞め、妊娠までしていたものの結婚間際になって男性側が他の女性に心変わりし愛情が冷めてしまった……というような案件では相手に対して与えた損害が大きいと認められやすいということになります。

とは言え、結婚生活を長年行ってきた夫婦間ですら相手方配偶者に対する不貞慰謝料の相場は100〜200万円程度と言われています。婚約破棄の案件で多額の賠償金が認められるケースはそう多くはないように感じます。ただ、弁護士が介入して交渉を行うことで、相手方が支払いに応じる場合もありますし、Aさんのように今後交際相手から何を求められるか不安だという状況を解消するという点もメリットになります。
Aさんの場合、正当な理由なく婚約破棄がなされたという①②の点では争いにならない案件だと思われたことから、当事務所の弁護士は事件を受任し、婚約者の女性に対する慰謝料請求事件として交渉を行うこととなりました。

3 結果

当事務所の弁護士から相手方の女性に対して通知を送ったところ、相手方にも弁護士が就任し、交渉がスタートしました。交渉開始当初、相手方弁護士は未婚男女間の結婚する・しないという問題は恋愛のもつれの延長であるし、交際期間も短く、本件でも損害賠償責任は発生しない、たとえ裁判で認められたとしても損害額は極めて低いであろうとの主張でした。これに対し、当事務所の弁護士は、Aさんとしては経済的な損害に加え大きな精神的ショックを受けたこと、結婚準備を進めていたにもかかわらず婚姻目前で破談となり今後他の女性と交際する際のトラウマにもなり得ること、上記Aさんの状況を考えると不貞の場合と大きく変わらない損害が裁判上認定される可能性があること等を述べつつ交渉を行いました。
結果として、65万円の金銭の支払いと購入価格が40万円を超える婚約指輪の返還、互いに関係を清算して双方にとって害となる行動を取らないことを約束する形で合意がなされました。

4 感想

交際中の男女の間でゆくゆくは結婚しようと約束をすること、関係の悪化からその約束がなかったことになること、結婚をする・しないという点で口論になることは少なくないのかもしれません。確かに、こうしたトラブルについて全て弁護士を入れて解決することが適切かと言えばそうではありません。もっとも、「婚約」とは単なる約束とは異なり、相手の人生を大きく左右する重要な契約であって、そうした契約を安易に破棄するということには相応のペナルティが伴うべきことと思います。
事件終結後、Aさんには「相手方との関係が解消されたかもわからず今後何を言われるのかと不安でした。合意書という形で取り決めることができてすっきりしました」と感謝の言葉をいただきました。辛い思いをされたものの、ご来所いただいた時よりは晴れやかなご様子であるように感じられました。
金銭的な賠償を相手方から受けるということに加え、依頼者様が前向きなスタートを切るためにも、弁護士が間に入って交渉・和解を行う意味があると実感できた案件でした。男女関係でトラブルとなって悩んでおられる方がおられましたらぜひ一度ご相談いただければと思います。